第228話「成瀬は天下を取りにいく」読了
今年の本屋大賞受賞作「成瀬は天下を取りにいく」を読み終えた。これ続編があるのだが、とりあえず、第一巻目の最終話「ときめき江洲音頭」がすごくよかったので、ネタバレありで語りたい。
天才肌の成瀬、M-1に挑戦したり、カルタ大会に出たり、けん玉を極めたりと多芸だ。しかし、高校生活も終盤になってきて、親友の島崎さんがなんと引っ越して東京に行くと言い出した。
あまりのショックに成瀬、自分のペースを乱し、勉強もはかどらないし、なにをやってもうまくいかなくなる。
そんな中、夏祭りで、成瀬と島崎さんのコンビ「ゼゼカラ」で漫才をすることになる。成瀬はこれが最後の漫才だと思い、精一杯やる。
しかし、漫才を終えた後、島崎が「東京に行くけど「ゼゼカラ」を解散するつもりはない」という。夏祭りの頃に戻ってきて、また漫才をしようと成瀬に言う。
それを聞いて成瀬、嬉しくなるというお話。
これ、意外にも、天才肌の成瀬がひっぱっていた感じの島崎さんを失うということが、どんなに大きなダメージかと成瀬が気づくというもの。
関係性というものをよく感じさせるお話だ。それまで主導権を握っていたと思っていた、相手の存在なくして、自分は成り立っていなかったのだと気づくとき、人は謙虚になれる。成瀬が傲慢だったとは言わないが、成瀬にとって、いかに島崎さんが大切な存在だったかということに気づくというのが、ほほえましかった。
ゴーイングマイウェイに見える成瀬、とはいえ、彼女も普通の人間の如く、依存し、依存される関係性の中で生きているのだなぁと再確認した。
最終話を読み終えて、感無量、ああ、いい読書時間だったなぁ。
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