第184話謎の少年

 今日はぽかぽかで本当に暖かい。部屋にいるのも、もったいないので、さっき散歩してきた。

 太陽がさんさんと照る中をテクテク歩く。足元にはアリンコも歩いている。踏まないように気をつけつつ、ゆっくりと歩く。

 小さなかわいらしい白い花がたくさん、道のわきに咲いている。名も知らない可憐な花、ああ、春だなぁ。

 住宅街なので、どこからか子供の声がする。しかし姿は見えない。家でゲームでもやっているのかな。楽し気な声が響く。

 トコトコ、トコトコ、ゆったり歩く。シャツ一枚でも、もう十分な暖かさだ。ちょっと汗が出るほどに、暖まってきた。

 どれくらい歩いただろうか?体も温まったので、そろそろ帰ろうと思った時、後ろから「おに~さ~ん~」と子供の声が聞こえた。

 まさか私が呼ばれているとは思わなかったので、その声に反応しなかったのだが、ぷくぷく太った子供が自転車で、急に私の目の前に現れ、止まった。

 「おにいさん~、聞いて~聞いて~」という。

 私はちょっとびっくりしつつも、「えっ、なに?」と聞くと、その少年、「おに~さん、友達が下水道に入ってます」という。

 私はそれを聞くと、固まったが、もしや、子供がマンホールを開けて、下水道に降りたのかと思い、少年にそれを聞くと、少年、にっこりと笑い「おにいさん~、じゃ~ね~」と言って、全速力で自転車を飛ばし、去っていった。

 えっ、なんだったのか?周りを見回しても、マンホールが開けられた形跡はなく、少年の他には誰もいない。そして、少年、笑顔で去っていった。

 う~ん、いまどきの子供のジョーク、シュールすぎてオジサンにはついていけない。

 全速力で走り去る少年をぽかーんと見つめながら、心が無になったのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る