第41話芥川賞受賞作(ネタバレあり)
前回のちょっとした意見とは打って変わって、「東京都同情塔」(九段理江著)を読了した印象は、とてもよかった。
冒頭部分での性的な言及以外は、ほとんど不快な表現はなく、すんなり読むことができた。
あらすじを書くと、主人公は女性建築家で「シンパシータワートウキョー」という名の刑務所の塔を都心に設計することになった。
主人公、他人が付けた「シンパシータワートウキョー」という名前が嫌いでボーイフレンドが付けた「東京都同情塔」という名称が気に入って、以降、その名を使う。
主人公とボーイフレンドとの対話、とてもリズミカルに人生観、建築に対する思いなどを語り合う。この二人の会話、とても深く心地よい。
ところで、この主人公が設計した刑務所、ある意味、受刑者にとっては理想郷で、優雅に読書などをして幸せに生活できる。
この刑務所を作るプロジェクトを立ち上げた人によると、犯罪者はもともと、とても不幸な環境で生活した人が大半だ。なので、生きやすく心地よい環境に身を置くことで、罪を反省し、新たな幸福な生活を送ることができるという。
もちろん、贖罪の意味をかねて、この塔の中で社会貢献などもしていく。刑務所の概念を覆すものだ。
この作品では、この刑務所がいいとも悪いとも判断していない。あくまでそれを決めるのは読者だ。
罪を犯した者のユートピア、さてさて、皆さんはこれをよしとするのであろうか?
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