ベルソフの歩行補助機(仮題)
藤田桜
1
旅人の無事を祈る灯台のようだった。
──幻想機械都市ベスノセリア。外壁には等間隔に
アシャリは朦朧とした意識の中、ずっとそれを見つめている。もう歩く気力もない。それなのに。ずり、ずり、と足が勝手に引きずられていく。
「放っておいて、くれ」
腰に接続された
「もう、生きていたって、何にも、ないんだから、さ」
ぜえぜえと音を立てる肺で必死に抗議するが、歩行補助機が聞き分ける様子はない。もうアシャリが歩いているのか、機械が歩いているのか、判別が付かなかった。
「なあ、──おい」
──ベルソフ、と呼び掛けようとして、躊躇った。違う。これはただの機械だ。彼女はもう死んだのだから。真っ黒な
左の拳を力なく歩行補助機に叩きつける。それでも機械は停止しようとしない。目が眩んでいく。意識が沈んでいく。
倒れ伏す最中、アシャリは頭上に、知らない少女の声を聞いた。
「そこのひと、大丈夫ですか! 大丈夫ですか──」
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