第1話 親友の義妹
カノジョ――
幼馴染で親友の苑田
衝撃的だった。
いつものように喜一の家でぐうたらと怠惰の限りを尽くしていたら、「あ、そうだ。昨日から妹できたから」と喜一がポテトチップスと一緒に小織ちゃんを連れてきた。
おいーーー!? と思ったものだ。
なに、その片手間な感じ? そんなふうに新しい家族紹介する人いる? しかも、超可愛いじゃん!? なんでいきなりそんな可愛い妹できてんの!? 俺の年子の妹なんて「は? 死ねよ」しか言わない呪われたインコと化してんのよ!?
――とまあ、思春期真っ盛りだった俺の繊細な心は、この世の不条理にかき乱されたわけだが。
もちろん、義理とはいえ親友の妹。しかも、二つ年下で当時はまだ中一だった小織ちゃんに不埒な想いなど抱くわけもない。そのときは「
それが功を奏した、と言うと腹黒い感じに聞こえるが。
とりあえず、第一印象とは侮れないものである。そして、なかなか信用できないものだ、と経験から言わせてもらう。
学校では女子の視界に入ることもないであろう俺。教室の隅で粛々と学校生活を送っているような地縛霊的存在だった。
たまに女子が話しかけてくるとしたら喜一に用があるとき、と相場が決まっていた。
バレンタインなんて、俺の机はもはや受付代わり。
中学時代なんてスポーツ万能(主に球技)の長身脚長ボーイが覇権を争う時代である。そんな中、サッカー部で目立っていた喜一はそりゃあ、おモテあそばされたわけだ。
だからこそ、小織ちゃんが転校してきたときはちょっとした騒ぎになった。
スラリと長い手足に、お人形のような白い肌。頬はふっくらとして、雪に朱をポトリと落としたように色づき、肩より少し長い髪は歩くたびにサラサラと心地よい音でも奏でるように靡いて輝いていた。
まさに天使というにふさわしい可憐な容姿。彼女が微笑むたび、遥か彼方のツンドラ地帯で一輪の花が咲き誇る奇跡が起きているのではないか、とすら思わせた。
そんな小織ちゃんが喜一の
美男美女の義兄妹である。様々な良からぬ邪推が飛び交い、瞬く間に学校中の妄想の種となった。
喜一はそうなることを分かっていたんだろう。
学校では小織ちゃんに全く関わろうとはしなかった。その名を口にするのも俺は聞いたことがない。
根っからのスポーツマンとでもいえばいいのか。ストイックな奴は、学校でボロを出すまい、と家でも同じような態度を取っていたようだ。本当は小織ちゃんを(もちろん妹として)可愛く思っていたくせに、そっけない態度を取って……おかげで小織ちゃんはすっかり不安になってしまっていた。
お兄ちゃんに嫌われている、と思い込んでしまった小織ちゃん。
そんな小織ちゃんが頼った先は――。
「遠間先輩……相談があるんですけど」
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