第6話 飛花

咲夜はその日、ある私立学校の前に立っていた。ここに、「あいつ」の大切な、大切な「あの子」が通ってる。

千春が出てくる。呼び止める咲夜。そこに運転手陽向の運転する車が止まった。


「咲夜、なんでここに」

陽向が唖然としている。

「このこ、借りてく」

咲夜は千春の首根っこをつかみながら颯爽と歩いて行く。

「は?」

咲夜に引きずられていく千春。

喫茶店に入った。

「パフェでも食べる?若いからこんなところじゃなくて肉でも食べたかったかな」

咲夜がメニュー表を見ながら言うと、

「甘いのは食べれない。アイスのパフェがいい。すっぱいの」

千春は、子供みたいに自分の要望を伝えた。


パフェがきて、つつきながら千春は疑問を口にした。

「で、なんで俺はここにつれてこられたわけ」

自分が拉致された理由を知りたかった。


「実は、陽向とお付き合いさせてもらってる」

咲夜が言った。千春はあんまり信じてないようだった。

「陽向と知り合いなんだ」

パフェについている、フルーツを頬張りながら、千春が言う。酸っぱい味がした。

「いつ知り合ったの」

「大学生の頃だよ」

咲夜は懐かしそうに、千春の目を擬っと見ながら話し出した。


こんな春の日だった。陽だまりが自分の中に溶け込むような暖かい日だった。大学の校舎で友達と歩いていた。不意に声をかけられた。

「すいません。白い羽がついてますよ」

「はい?」大学生の咲夜が振り返る。

咲夜の寝ていた布団は、安っぽい羽毛布団で、縫い目が浅いのか、その間から羽毛の羽が出てくるのだ。部屋は、羽毛だらけになっていたのだが、それが衣服にもついていたらしい。

「すいません」咲夜が言うと、

「白い羽つけて、天使にあったかと思いました」

それが陽向との出会いだったーーーーーー


「陽向って、冗談言ってるのか、本気なのかわかんないよな」

黙って聞いていた千春が口を挟んだ。

それから咲夜と陽向は大学内で会うようになった。 陽向は、一つ上の学年で、同じ心理学の学科を取っていた。陽向に言わせると、お世話になってるバイト先の息子が心病んでいることがきっかけらしい。


「ずっと君に会ってみたかったんだよ」

咲夜はにこにこしながら、千春に伝えた。

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