第5話 花の便り
千春は翌日、学校のさくらの教室の前にきていた。 昨日泣かせたことを謝りたかった。 さくらは千春と同学年で、隣の教室だった。 さくらを見つける千春。 しかし、隣に男がいる。男が何か言ってさくらは笑っている。
(昨日泣いてたのに、もう笑ってるんだな…)
千春は、怒ったような苦しい気持ちになった。
(俺、嫉妬してる…?) いたたまれなくなり、廊下に出た。
廊下に出た千春を、桜と話してた男が追いかけていく。
「(さっきの…)なに」
「さくらちゃん、泣いてたよ。ずっと」
「泣かすなら、もらっちゃうよ?」
男は道化のようにおどけた。 カッとなって、千春は男の喉元をつかんだ。
男の胸ぐらをつかんだ千春を男はくんくんと嗅ぎ、
「きみは俺とおなじにおいがする…」
「はぁ?」
「シャンプー一緒とかか」 千春が冗談を言うと、男は爆笑した。
「違うよ、人間性が、ってこと」
千春はどっきりした。
「千春君だよね」
「なんで俺の名前知ってるんだ」
「女子の間で君はすごく人気だよ。有名な製薬会社の御曹司でかっこいい、って」
「そんなの知らない」
「俺の事は知らない?」
「全然、知らない」
「俺も結構女の子の間で人気なんだけどな。俺の名前は暁」
「春眠、暁を覚えず、春は暁を知らない…千春君は俺の事知らないんだね」
謎めいたことを言う。
「知らなければ、知ればいい。俺たちは今日から親友だ!!」
「はぁぁ?」
なぜか勝手に親友宣言を受ける千春。
「千春」
「よびすてにするな」
その日の体育の授業で、おれのクラスと暁のクラスは合同で野球の授業していた。なるほど、暁は女子だけではなく、男子とも仲がいい。そのすべてを見通すような透き通った瞳で千春の方を見ていた。 女子の方を見ると、女子はソフトボールをしている。さくらの姿があった。
さくらと千春、シンクロするように、バッターに立つ。
(あ、さくらバットを振った。)
バットは球に当たり、さくらは一塁に走っていく。
(走り方、かわいいな) フフ、と笑う千春。
「はい、バッターアウト!!」
「あ」
千春はさくらにみとれて、アウトになってしまう。
そんな千春を見て暁が
「すきだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」 叫ぶ。
「暁、うるさい」 クラスメイトから言われる暁。
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