火葬のように

真花

プロローグ

 踏み出してしまったから、もう引き返すことは出来ない。

 空港を出て、もうずいぶん時間が経っている。車は長い道を迷いなく進んでいる。後部座席の私と、ママ。これからどこに連れて行かれるのかは分からないが、何をされるのかは知っている。さっきまで目隠しをされていた。外したら、田園風景ばかりになっていた。

 運転席に一人、助手席に一人、男性が座っている。運転手は初対面だが、助手席の小谷こたには何度か会っている。エージェントだ。小谷が来なければ私はこうやって自分を売るために遠出をすることもなかった。いや、自分の一部か。ママが最低限の音量で小谷に声をかける。ひどく硬い。

「まだかかりますか?」

「あと三十分くらいです」

 小谷は穏やかだ。努めてそうしているのだろうか。それとも業務の内だから胸が揺れないのだろうか。

「ずいぶん遠い所にあるんですね」

 小谷は少し間を開ける。

「施設の特性上、そうじゃなきゃいけないんです。もう少し、我慢して下さい」

 それ切り二人は黙る。私も運転手も何も言わない。

 車は進む。同じような景色が続く。私は目を閉じた。

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