第10話
「まさか地下駐車にあるっていうの?」
食堂の職員ドアを出ると廊下を挟んで向かい側のドアに地下駐車場の文字が刻んであった。
「まあ観とけよ。完璧な隠蔽だから」
そういうと階段を下りて職員用駐車場に到着する。
「それで調整室はどこ?」
「ふふふあれだよ」
そう言いながら奥の食糧トラックを指差す。
「まさか擬装車に調整室が?いやいや装備の調整や生体チップの埋め込みには結構な部品と電力が必要なんじゃなかったか?確かにあのトラックは大きいけど設備が全部入るとは思わないな」
私が困惑のコメントを漏らすと巫月は自信満々に解説を始めた。
「技術の進歩って凄いだろ?部品の殆どが造形装置で生産可能になった上に、電力は神建儀、物理学、呪術の融合で掌サイズの液体発電機で一年は風呂を沸かせられるようになったんだ」
「微妙に伝わりづらい例えだな」
私のツッコミを無視して巫月は話を続ける。
「さらに化学装甲に電流擬装装甲に隠蔽術式が装備されているたからたとえ上級魔術師でも容易に発見することは出来ない」
「はいはい、わかたったわかったかよ。それじゃあ中身の紹介よろしく」
そう言うと巫月は「了解ー」とトラックの後ろ扉を開ける。
中は意外と明るく、黒と灰を基調とした色で塗られており、奥に目立つ固そうな容器寝台、右側には家の比にならない程大きい入力容器と造形装置が一つ置かれてある。左側は
「四○式無動力型身体機能増幅装甲服?私が居た時は一二式じゃなかったっけ?」
服の首元に兵器名が書かれてある。
私が居た時とは比べ物にならない程に薄くなった水着みたいなピッチリとした装甲服と、大小様々な形状をしたプラスチックのような薄い板が透明なロッカーに吊るされている。
「本体の装甲服は足の付け根から首まで、衝撃吸収、温度調整、防爆防刃、身体機能増幅などの機能しかない。それ以外の欲しい機能は下に置いてある追加装甲で補う形だ」
「昔とは大違いで時代に置いていかれてる気分だよ……」
「これはあたしら排撃部隊みたいな特殊部隊だけの話だから安心しな」
と満面の笑みでフォローしてくる。
「それで?私の調整役を担当する人は?」
「ああ入ってきな」
巫月がそう声を掛けると奥の重厚な扉から三つのカメラが付いたゴーグルとガスマスクが一体化した奇抜な装備をつけた人が一人入ってきた。
「彼女が調整役?」
「ああそうだ秘匿名は鈴だ。本名は知らん」
「へー鈴さん?よろしく」
巫月が紹介した鈴に挨拶をすると高い機械音声で
「よろしくお願いいたします」と返してきた。
「ふふふ、面白い人だね。その仮面は?」
「任務時につける装備の一つです」
「あーそうじゃ無くて、何で着けてるのかなーて」
「お気に触りましたか?」
「いやーそういうわけでは……」
私が言葉に詰まっているのをみても何も感じないのか巫月は「あたしはやることが残ってるからまた夜にな」と出ていってしまった。
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