第2話

 分厚く茶色い封筒から本国からの物だと判断して二階の寝室に置いておくことにした。


 階段を降りるとリビングの無駄に大きい本棚の前で資料片手に本を探すエミリーが居た。


「翻訳された本は窓際にあるよ」

「ありがとうございます。ですが翻訳されていない本はイサネ様が解説して下さるので大丈夫です」

「またですか……あれって結構頭使うんですよ」

「頑張って下さい」

「そんな~」




 あれから結局解説することになってしまった。エミリー嬢さんは帰ったが結構遅い時間になってしまったな。


 寝室に置いておいた封筒を思い出し、直ぐに寝室向かった。封筒を開けると手紙の束をくくりつけるてある紐の表に零、裏に壱の文字が入った封蝋が付いてある。


 このタイプの手紙は大体面倒くさい内容だ。

封蝋を視て機関の人間以外が中身を触っていないかを確認した後、封蝋を外して紐をほどく。


 一番上の手紙を開くと小さな単行本が出てきた。

本のカバーを外し、光源版の上に乗せると干渉グローブの設計図が出てきた。


 この設計図は寝台の下に設置されている造形装置に読み込ませといて、封筒を一つ一つ確かめて紙型素材の入った封筒は素材を封筒から取り出して造形装置の横にある入力容器に入れておく。私が頼んでいた装備がやっと届いた事実に、子供のように胸を踊らせる。


 ほとんどが素材だったようで一番後の手紙まですぐに到達した。


 手紙を開けると三枚の紙が出てきた。一枚目は真っ直ぐと目の前を捉える白い眼光に、ブロンド色のロングヘアに白を基調としたデザインの単調なドレスを着ている十代後半の女性の写真。二枚目は褐色肌と黒を基調とした礼服、黒く鋭い眼に黒髪短髪の女性の写真。最後にハガキが出てきた。

 今日の朝に送られてきた暗号電報で解読をする。


 どうやらロングヘアの女性はイリュア王国の王女で短髪の女性は王女の専属近衛騎士らしい。


 ハガキには今後二人がこの王立大学に通うことと、それに関する指令が書かれていた。




「はあー」

 とても目覚めの悪い朝になってしまった。

「イサネ様どうされました?」

「ああ居たのかエミリー嬢さん、あと研究室以外の場所では宇治教授でしょ?」

「そうでしたね。宇治教授ため息をつかれてどうなさったのですか?」

「まあ仕事のことで色々ね」

「大学のことですか?」

「あーうん、そうだね」

「歯切れが悪いですね」

「それより講義を受けに行かなくて良いのか?」

「ああ!そうでした!それではまた研究室で!」

 私が指摘すると慌てた様子で廊下を小走りに走って行った。


 本当に神州機関の奴らめ、私の胃に穴を空けたいのか。昨日与えられた任務を実行するため夜から朝まで頭を回転させているが現実的な案が全く思い浮かばない。


 いや、そもそも零機関が協力を申し出ているのだ。零機関の部隊と装備を使えば何とかなるかも知れない。


 私にしては素晴らしい名案を思い付いたぞ。現実的かどうかは置いといて。

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