第49話 準備と怒りのような妬み
キラさん達が帰って行った後、家に入る。
「ただいまー」
「お帰り。遅かったけど、戦いにとか行ってないよな?」
ママが座ってた。
外でのやりとりには気づかなかったようだ。
結構騒いどった気もするけど……。魔法か!? 魔法やろうな……。それかスキル。
「行ってないよ。街ん中でちょっと変な人たちに追いかけまわされて、凄い疲れた」
「大丈夫!?」
ガタッと倒れそうになって椅子を置いて、私の方へ駆け寄ってくる。
「怪我ない?」
「あー、別で転んで怪我した」
「『ヒール』……気をつけや」
「えへへ……」
痛みがなくなった。魔法ってすごいなぁ。
留美はトイレへ進む。
「お風呂もう冷えてるかな?」
「冷めてるやろうな。温めたるわ」
「頼んだ」
「いいよ」
トイレー。
お風呂。
はぁ…………温まる—。汚れも落ちるー。………………それにしてももう会いたくないな。特にキラさん。ムカつくっ!
他の雑貨屋さん探さなな。
あー。頼むからこれフラグにならんといてくれ。
あー、やっぱり会いたくないって言ったん、一旦撤回。いつか負かしたる。そん時は会いたい。会いにいく。それまでは会いたくない。
留美はその辺をぼーっと見上げる。
力を得るにはどうすれば良い? とりあえず、スキルの数を増やしたいかも。シャドウワープなるものもあるみたいやし、空間とか、まだまだ覚えてないスキルめっちゃありそう。
どれが覚えられるものなんかはわからんけど、お金ができたら習いに行こう。出来るかどうかはその時にわかることや。
広間。
十三時超えてる……。
結構長い時間走っとったんやな。ママに疑われるのもわかる。異世界補正ないと思ってたけど、あるよな。
これだから迷い人はって。もしかして気づかんうちにチート能力得てた!? 気づかん程度のものがチートと呼べるのか。否! どうでもいいからポーション作ろ。
ミシッと音のした階段を登っていく。
留美の部屋。
ガリガリ、ゴリゴリ。
そんな音だけが響いていた。
ゴンと石を床に置くと、コップいっぱいまで水を入れて、薬草三つをすり潰した粉を入れる。
なな、なんと! 欠損ポーションの完成や。
『鑑定』
『欠損ポーション』
欠損してる所があっても治る。
一口で良いっぽい。
うん。ちゃんとなってるな。
出来た液体をを買ってきた瓶(大)に入れる。
もう一つの瓶(大)にはヒールポーションを入れていく。
キュポンと筆箱から出したマーカーで、『欠』『ヒ』と書いておいた。間違えたら大変だからね。
コップ一杯、薬草三本で十回。欠損ポーションに三十本使った。
コップ一杯、薬草一本で九回。ヒールポーションに九本使った。これで薬草は全部使い切ったな。
量は欠損が瓶(大)の半分くらい。ヒールが半分より少し下くらい。
意外とあるな……。
一口サイズの瓶(小)に入れていく。
欠損四個と、ヒール六個。をポーチに入れる。
一口で回復すればいいねんけど。こればっかりは誰かで試すしかないな。
売れればお金儲けられるっ! 望み薄やけどな……。行動せんよりはする方がいいに決まってる。
世の中、行動した者勝ちやねん。……わかってても出来ん。とほほ。
「お腹すいた」
広間。
時刻は二十一時を回っていた。
ポーション作りに集中しすぎてヤバい件。マジか。全然気づかへんかったわ。
うわぁ、なんか頭痛い。ガンガンする。うぅ、頭痛やめれ〜。今すぐストップするんや。頭痛いぞって知らされても、こっちはなんもできん。
あれ? 留美今日、ご飯食べてなくない? ……まぁいいや。面倒臭い。お腹空いたから寝よう。
「ふぁ〜あ。寝よー」
ベットに入ると、スッと寝れた。
朝。
「太陽しゃん、今日もおはようござぁます……」
徐々に開いていく目で外の太陽の光を見る。物に反射して入ってくる光が、私の脳を覚醒させていく。
ゆっくりと日課の柔軟をして、広間へ降りていく。
時計を見れば八時だ。
「おはよー」
「おはよう。昨日は凄い集中してたな」
掃除しているママがいた。
朝早く起きんのが習慣化してるんやきっと。
「全然気づかんくてさぁ。気づいたら外暗いし、めっちゃびっくりしたわ」
「程々にしいや」
水を飲んで空腹を紛らわせようと、井戸の方へ行こうとして足を止めた。
「あ。そうそう、昨日ポーション作ったよ。もしママのヒールが使えへんようになったら言って。四個くらいあるから」
「昨日置いてた瓶はどこから持って来たん?」
「どっかから持ってきた。でも、盗んだわけじゃないから」
「あっそ。もともと疑ってないわ」
盗みは犯罪。悪いことで、悪党や。
やりたいって思ったことはあるけど、ダメだからやらない。ルールを破ると、自分と家族に不利益被るからなぁ。
…………でも暴力がありで、生物殺すのがありなら、人間を殺すのもありだったり……? よくないよくない。考えちゃダメだ。スマイルスマイルにっこにこ!
ヤバい。殺したい。……ゴブリンな。
「今日はゴブリン行く〜?」
「そのつもり。顔洗っといで」
井戸。
髪を括って、顔に水を当てる。パチャパチャ。
冷たーいっ。
『音聞き』
周りには誰もいない。
そうやんな。護衛っぽい人たちが、ずっと留美なんかに構ってるわけないし。そもそも居ても見つけられないっていう可能性もある。
あの時見つけられたのは相手が動いていたからだ。今いたとしてもきっと止まってる。
でもああいうのも繋がりっていうんやろうな。縁は奇なり。我が魂との波長があってしまったのだな。
たまたま入ったお店がそんなヤバげな人が運営してるとか、知らないよ。偶然ってこわーい。
昨日はほんまに焦った。
もっと強くならないと、押さえつけられないように、見下されないように、軽く扱われないように、殺されないように、脅されないように、殴られないように、見返せるように、やり返せるように、怖がらないために、怯えないために、いじめられないために……強くならなないと。
留美は苛立つように井戸を殴りつけた。
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