家族と共に。
第1話 家族いるやん
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目を開くと、知らない場所にいた。
どこ?
何があったのか、どうしてここにいるのか、分からないことだらけで頭が混乱する。
他人のことを構ってる暇などない、自分のことだけで精一杯だ。
最後の記憶は…………よく思い出せない。記憶が混乱している。
何も分らないなら、知らなければならない。
得体の知れない恐怖で身がすくむ。暑くなっていく頭に、冷や汗で冷たくなった手を当てて、なんとか冷静を保とうとする。
う、うわぁー、無理無理。なにをどうすればええねん。お、落ち着け自分。ここは深呼吸、そんでもって周囲の確認や。
私はやっと、状況把握につとめはじめた。
石で出来たの建物の中だろうか。四角く切り揃えられているのを見ると、人工物であるのは確かである。
家族以外には誰もいない。狭い通路のような空間だ。後ろは行き止まり、前へ進むしかない。
「えっと。ここ、どこ?」
私は掠れた声を出す。
家族が三人いるけれど、誰も動かないし、誰も声を出さない。実は幽霊、なんてことはないと信じたい。
大丈夫。彼らから緊張が伝わってくる。無論、私の緊張も伝わっているだろう。
不安と恐怖で足がすくむ。足だけではない、全身が強張っているのを感じる。怖くてパニックになってしまいそうだ。
「いや、分らんけど……」
やっと私の声に反応したのは、隣にいた弟だった。
冷や汗を垂らしながら、家族の存在に、少しだけ安心したかのような表情をしている。
弟は壁をすりすりと触れて、感触を確かめだした。私も同じようにする。
硬い、冷たい。
ドンッ!
殴った正面にある石壁が、鈍い音を立てた。
夢…………ではなさそう。ジンジンと痛む自分の拳を優しく包み込む。
「何やってんの?」
「いや、明晰夢かなって」
弟のほっぺたを摘んでやると、叩き落とされた。
「なぁもしかして、これって。これってさ! 異世界転移ってやつ!?」
弟のテンションが徐々に上がっていくのがわかる。
誰もが一度は憧れた事があるであろう異世界。私もそうであることを、心のどこかで望んでいる。どこでもいい、ここじゃないどこかに行きたい。そんな思いで日々を過ごしていたから。
でも仮に異世界だとして、楽観視できるのは物語の主人公だけだ。
「異世界……」
テンションが上がらないわけではないが、それより怖かった。これからのことが不安でたまらない。
鳥肌が立つ。
何系の転移なのか。もしかしたら、ただの拉致の可能性もある。
戦争の道具。何かの実験のために。ただの遊びのために。欲を満たすために、人を閉じ込めて観察する系。ただの事故。デスゲームだったらどうしよう。
ネガティブなことばかりが頭によぎっていく。
どう言う世界なのかで、過酷さが変わってくる。私たちの常識が通じるのかすら怪しい。
現実の主人公なんて、問題のオンパレード。問題を引き寄せる呪いの子だ。解決するだけの力があればいいけど。出来なかったら? 気力とか関係なしにやってくる問題とか、絶対嫌や。
慎重にいかなければ。
斜め後ろにいる父を振り返る。
少しばかり、いや、写真で見たことがある程度の、かなり若い頃の姿だ。
なんか、ずるいな。
これまで築いてきた会社の地位がなくなり、落胆しているのだろうか。それとも、青年にかえって冒険が出来る、と喜んでいるのだろうか。
じっと見ていると、いきなり母がそっと私を抱き寄せた。
いま、何を思ってんのやろう。
パパ同様、写真で見たことある若かりし頃の姿をしている。彼女は私を包みながら、震えていた。
不安な時にぬいぐるみを抱えるとちょっと安心するって聞いたことある。あれの代わりかな?
やーば。こんな状況、どうしたらいいのか分らんよな。
――――――
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