〜ひと夏の思い出〜ゲーマーの俺のスキルは異世界で通用するのか……

国語力 漫点

第1話 夏休み

ミィ〜ミィンミィンミィ〜ン……


 茹だるような暑さの中、体育館で長い校長先生の話を聞く生徒達……


「中学生活とは……………………………………………………………………………人生において、とても重要な時期で……………………………………………………………………………………………………………………………………であるからして……………………………………………………………………………………………ですので……………」




「あちぃ〜……話なげ〜よ」


「確かに……でも、明日から夏休みだし。今日だけ我慢するれば、明日から自由だ!」


 小さな声で、そんな事を話す後方の生徒……


「そんなこと言ったって、ゲーム三昧の引き篭もり生活だろ!」


「確かに、そうだけど……お前だって、そうだろ! パズル。

 なんて言っても、お前は中学生にして——音ゲーから格ゲー多種多彩なゲームの世界ランカーだからな! 俺なんかよりよっぽどゲーム三昧だろ!」



 そう、俺の名前は【佐藤 パズル】中学3年生にして色んなゲームの世界ランカー!

 これと言って一番好きなゲームは無い為に一位にはなった事が無いが……ゲームと言う物が好きで色んなゲームで上位に君臨している。

 そして、友達からは尊敬される。そんな自分が自分でも、わりかし嫌いでは無かった。



「パズルは、本当に凄いよな……どんなゲームも出来るし。

 なんて言ったて、世界ランカーだもんな!俺も一つくらいランキング上位に上がってみたい物だよ」


「まあ、俺の取り柄なんてそんなもんだけだよ! 一位にはなった事ないし……」


「そんなことないだろ! それに、世界ランク一位になるには、そのゲーム会社とスポンサー契約をしてないと無理らしいぞ!」


「それが本当なら、普通の高校生には無理か……」


 そんな嘘が本当かも分からない話をしながら……


「でも、お前なら今流行ってる異世界転生アニメやMMO RPGの世界だったら間違いなく主人公だよ!

 お前のその能力が有れば神様からチート能力貰わなくても余裕で異世界で無双出来るんじゃねーのか?」


「まぁ、異世界ならそうかもな! 空想の話だけどな。アハハハハッ!」


「そこ! 五月蝿い!!!」


「「すいません……」」



そんなこんなで終業式も終わり帰りの教室では……


「明日からどうする? タカシの家にでも集まるか?」


「家からネット通信で、良いんじゃねーのか?」


「確かに……」


「俺は明日から、お婆ちゃんの家に行くからそこから参加するよ!」


「えっ!? ああ……パズルは、お婆ちゃんの家に行くのか。遠いのか?」


「結構田舎の方とは聞いている」


「それ、行かなきゃダメなのか? どう考えても田舎なんかより。こっちにいた方が楽しいだろ!」


「まぁ……でも、お母さんには俺しか居なから着いて行ってあげないと……」


「……わり……そうだったな……」


「そうだよ! 今は、通信すれば何処でも関係ないし。別に問題ないだろ」


 と、言う訳で! 集まれる奴は、集まって——その他は通信で遊ぶと言う事で決定した。



 そう、実は——俺の家族は一年前に離婚した。


 原因は、3年前に家族でキャンプをしている時に亡くなった妹の事が理由である。


 妹の死からバラバラになった家族は別々の道を進む事になり。俺は母親に引き取られる事になった。

 そして、今年の夏は母の実家に遊びに行く事になった。



 そして、次の日。


 母の実家に行った俺は、あまりなもど田舎でビックリした。


 山を越えて秘境と言われるほどの田舎、村と言うより集落と言う方が正しいと思えるほど小さな村……俺は、初日から不安になった。



 そして、次の日……


 お母さんとお婆ちゃんは、園側で涼みながらスイカを食べていた。


「相変わらずのどかで良いところね〜……」


「なぁ〜んも無いだけだよ」


 そんな二人を見ながら俺は、いつも通りゲームをやろうと


「お婆ちゃん……この家、Wi-Fiないの?」


「ワイフィ……?」


「Wi-Fi……ケータイ電話の電波も全く入らないし」


「電話なら、あそこにあるぞ……」


 お婆ちゃんの指さす方を見ると、真っ黒でダイヤルの着いた、テレビでしか見た事のない電話が置かれていた。


「あ……ごめん。多分、違う……」


 すると、母親が


「たまには、良いじゃない。いつも、ゲームばかりしているのだから外で遊んで来たらどう?」


「友達と約束もあるし……外で遊ぶって言っても、何もないじゃないかッ!?」


「あるじゃない! 森とか川とか……」


「今の中学生は、森や川では遊ばないよ」


「お母さんが中学生の頃は、よく遊んでだわよ。あんたもたまには、外に出なさい!」


 俺は、母親に怒られて外に追い出された。





「あちぃ〜……お婆ちゃんの家クーラー無いし何処に居ても暑いけど……」


 そんな文句を言いながら涼める場所を探していると、大きめの洞窟を見つける。


「何だ? ここ……

 とりあえず、暑くて死ぬ……」


俺は、急いで洞窟に避難すると中はヒンヤリとしていて涼しかった。


「……なんか奥から風が吹いてくる。

 外に繋がっているのかな?」


 いつもの俺ならそんな事を気にならないが、今は暇な為に俺の冒険心に火がついた。

 そして、俺は洞窟を進む事にした!


「薄暗いが……何となく見える。

 頼むから、虫は出て来ないでくれよ!」


 そんな事を思っていると、奥に光が見えた。俺は、やっぱり外に繋がっていたのかと思い。その光の外へと出ると……


「うわ〜〜〜!!!」


 外へ出た途端、少し下の芝生へと落っこちた。


「いってぇ〜……芝だから怪我は無いけど、暗い所からいきなり明るいところに出ると目が眩んで——あんなに見えなくなるとは……」


 そんな事を思いながら、草原を歩いていると……


「あの村に、こんな草原あったんだ……良いところだな」


 すると、パズルの前に——一匹の猿が現れた!


「うわッ! 猿だ……初めて見た。

 にしても変な色の猿だな……野生の猿って、緑色なのか?」


 そんな事を思っていると、その緑色の猿が火を吹いて来た……。


「ゔわぁ、アチィ〜!!! 火を吹く猿……? って何???」


 俺は、考えるより! 走り出した。


 すると、猿は追いかけて来た! しかも、数を増やして……


「増えてる増えてる!!! 田舎コワッ!!!」


 逃げる俺……追いかける猿……そして、俺は囲まれた。


「ヤバッ!!! 誰かぁーーー!!! 助けてーーー!!!」


 すると、囲んでいた猿の一部が爆破する。


「今だ! 走れ!!!」


 俺は声のする方へと走り出す!


「ありがとうございます、ありがとうございます……いきなり猿に襲われて、助かりました!」


 俺がお礼を言った。その人は、同い年くらいの剣を持った女の子……


「剣……女の子……!?」


「君、何その格好? それに火猿にも勝てないの? 弱いね。君……」


「いや……普通に猿なんかと戦わないし……」


「とりあえず、倒しちゃうから下がってて! 邪魔だから……」


 そう言われて、大人しく下がると——女の子は、剣で猿達を次々に切り刻んで行った……。


 そして、その猿を解体すると焼きだし食べだした。


「君も食べる……?」


「えい、お腹が空いてないので……」


 そして、女の子と話すと——ここが日本で無い事だけは、分かった。

 だから、俺は元の世界に戻る為に急いで洞窟に戻ると……洞窟の穴は塞がっていた。


「な……なんで……!?」


 膝から崩れ落ちる俺に、追いかけて来た女の子が話しかけて来た。


「どうしたの? 何を落ち込んでいるの?」


「帰り道の穴が無くなった……」


「へぇ〜何処ら辺に空いていたの?」


 俺が女の子に穴の空いていた辺りを説明すると、女の子は手から光の玉を放ち! 岩肌を砕いた。


岩肌は大きな崩れていたが、そこに穴があった形跡などは無かった。


「本当に、ここに穴が空いていたの?」


「そんな事より……君、今なにしたの?」


「魔法を放っただけだよ」


「魔法を……この世界には、魔法があるの?」


「当たり前じゃん! 魔法を知らないとは、君! 相当の田舎出身だね!?」


「いや、わりと都会育ちです!」


「そうなの……確かに、身なりはキチンとしているし。あながち嘘では無いのかも……て、事は!? もしかして、貴族……? それとも、王族……!?」


「そんなんじゃ無いよ!」


「王族がお忍びで来ていれば、嘘くらいつくだろうし……転移魔法で、ここまで来たのであれば——穴があったと言うのも説明がつく……」


 彼女は、一人でブツブツと何かを納得すると……


「そう言うことね。分かったわ! 私が貴方の護衛をしてあげる」


 俺は、彼女が辺な誤解をしている事は分かったが……こんな全く知らない土地で、辺な猿が出る。

 護衛を引き受けてくれる彼女を逃す訳にはいかなかった……ので


「お願いするよ! 後で、お礼はするから……」


 嘘では無い! 本当に後で、お礼はしようと思っている。今は、出来ないけど……


「じゃー私について来て、王都まで案内するから!」


 そうして、俺は訳の分からないまま……とりあえず、元の世界に戻る為の情報収集の為に王都に向かう事になった。


(俺は、元の世界に戻れるのだろうか……)





「私の名前は、カルディナ! 貴方の名前は……? てか、君……大丈夫?」


「……はぁ……ハァ……なにが……? てか、何か言った……?」


「ええ、名前を聞いたのよ」


「名前……名前かぁ……名前は、パズル……佐藤パズル……君の名前は……?」


「佐藤パズル? どっかで聞いた名前ね。

私の名前はカルディナよ!」


「……ぁぁ……カルディナな……覚えておく…………佐藤なんて、珍しくない名前だから聞いた事あるんだろ……」


「いや、珍しい名前だけど……」


「そうなのか……? 結構、多いと思うけど……ごめん……話すの後でいい……? 普段あまり動かないから、しんどい……」


「あ、ごめん……」


 そうして、二人は無言で王都を目指す!


(誰だ! 異世界で俺なら無双出来るなんて、ほざいた奴……無双どころか、歩いてるだけで瀕死状態だよ!!!)


 そして、王都に着いた二人は急いで飯屋に入ると飲み物を注文した。


「水だ……水……水をくれ!!!」


 俺は、用意された水を一気に飲み干すと……


「ぬるッ!!! 冷たい水は無いのか……?」


「冷たい水? 十分冷たいでしょ」


 異世界の飲み物の温度は、俺には合わなかった。

 そして、用意された食事も俺の口には合わなかった……。


「早く帰りたい……」


「すぐに連れて行ってあげるわよ! 褒美も早く貰いたいしね」


 そうして、食事が終わるとお城へと向かったが——入り口で兵士に止められると、カルディナが俺の事を王族の元に届ける依頼だと伝えると、この世界に無い身なりと言う事もあり。すんなりと通してくれた!


 そして、王様の前に辿り着いた俺は……王様に質問をした。


「王様、俺は——この世界とは別の世界から来ました。戻る方法を知りませんか!?」


 すると、王様は


「別の世界からと……お主、名を何と申す?」


「俺は、佐藤パズルと言います!」


「これは、なんと!!!」


 その場に居た王族、貴族達のざわつきだした……


「昔、この世界を救った勇者が佐藤と言った。

 お主は、その者の子孫であると言うことか!?」


(…………佐藤だからなぁ……分からない。けど……)


「多分……? 

 てか、昔の勇者は、どうなったのですか?」


「勇者は、龍神を倒して元の世界に戻りおった。

 龍神を倒すと、どんな願いも一つだけ叶うようになるのじゃ」


「どんな願いも!!!」


 それに俺より先に食い付いたのは、カルディナであった。


「さよう……この世界に勇者が召喚されたと言う事は、必ずや龍神も復活しているはずじゃ! 勇者、佐藤パズルよ。龍神を倒してくれ!!!」


「分かりました!!!」


 俺が無理と言う前に、カルディナが元気よく答えてしまった。


 すると、王様は——以前の勇者が使ったと言われている武器みたいな物を持って来てくれた。


 それは、鉄の塊で……大きなハサミと盾とかが複雑にくっ付いた変な形の物であった。


「これは、何ですか?」


「これは、以前の勇者が使ったとされる武器で……我が国で、レプリカを作ろうと職人が触ると変な形から戻らなくなってしまったらしい……」


「えっ!? では、この塊は今は、武器の機能を発揮してないのでは?」


「今は、そうじゃが……勇者が使えば、その形は元に戻るはずじゃ!!!」


「そんな人任せな……」


 そうして、俺は——その変な塊を渡され! 龍神を倒す命が下された。


 どちらにしろ、龍神を倒さなくては元の世界に戻れないし……カルディナもやる気だ!  とりあえず、俺達の方向性は決まった。



 お城を出ると俺達は、冒険心登録をする為にギルドへと向かった。

 カルディナが登録をしている為、別に必要では無かったが一応! 記念に登録する事にした。


 そして、登録をする際に魔力測定を行うと——俺は、とてつもない魔力を持っている事が発覚した。が……

 俺がいくら魔法を発動しようと思っても、魔法を放つ事は出来なかった。

 その為に、俺の魔力は宝の持ち腐れとなってしまった。

 それから、俺はギルドでカルディナにいくつか質問をした。

 この世界の事、龍神の事、魔法の事、勇者について、勇者の武器の事……

 そして、分かった事は——俺が魔法を使えない事と共の勇者が佐藤と言う名字だった事、それだけであった。


 基本的に、新たな情報は無いまま……俺は、勇者が使ったとされる訳の分からない鉄の塊を触ってみると、ある法則性がある事を突き止めた。

 いわゆるこの武器は、ルービックキューブの武器版みたいな物であった。

 そして、それをいじくり回して俺は盾の姿に変える事に成功した。


「凄い! 本当に、勇者子孫だったのね。弱いけど……」


(弱いは、要らないし。子孫ともまだ決まってはない……)

 だって、元の世界にいた者なら誰でも、この武器が形を変える事に気づけるとそう思ったからである。


 しかし、それを知らないカルディナは龍神退治に俄然やる気を出してしまった。


 そして、俺の実力を測るためにクエストを受ける事にした。


 初めてのクエストは、ゴブリン退治——ザ、定番のクエストである。


 それから二人で、ゴブリン退治に向かうと……


 カルディナは、ゴブリンをバッタバッタ倒して行く……


「パズル! あんたも早く戦いなさいよ!!!」


「そんな事を言われても、盾にしかならない武器じゃ戦うのは無理だろ!!!」


「そんな事は無いわよ! 盾だって、ぶん殴ればゴブリンくらい殺せるわよ」


 それは、分かっているが……今までゲームでしか殺生をしたことがない俺は、ゴブリンを殺す事に抵抗があった。


 しかし、そんな俺の気持ちとは裏腹に身を守る為に振り回していた盾は、双剣へと姿を変えた。


「やったわね! これで戦えるじゃない」


 そうカルディナは、喜んだが……俺は内心、勘弁してくれ! そう心で叫んでいた。


 そして、自分の身を守る為に振り上げた双剣の片方にゴブリンが接触すると、真っ二つに切り裂かれた。

 

 飛び散る鮮血が自分に掛かると、俺は悲鳴を上げて剣を捨て逃亡した。



 その後、ゴブリンを殲滅したカルディナが俺の剣を持って探しに来てくれた。


「あんた、何してんの? 自分の大事な武器まで捨てちゃて……」


「俺は、今まで生き物を殺した事が無いんだ……」


「生き物と言っても、相手はゴブリンでしょが!」


「……カタチが人に似ているし……生ぬるい血の感触……鉄臭い匂い……どれをとっても吐き気がする……」


誰だ! 俺が異世界で無双出来るなんて言った奴は……ゴブリン一匹に、この様じゃ無双なんて無理無理無理!!!


「何言ってんの? やらなきゃ自分が死ぬだけよ。あんた死にたいの?」


 その言葉に、俺は——ハッ! とした。


 龍神を倒せば、妹を生き返らせられると……

 それに気がついた瞬間から俺と手の震えは消えて、覚悟が決まった。


「情けない所を見せて、ごめん……カルディナ。俺決めた! 龍神を倒す!!!」


「私は、最初からそのつもりよ! それよりパズルこれ……」


 そう言って、渡された俺の武器は——また変な形になっていた。

 なので、それを直そうと俺は色々といじくると……一瞬ハサミのような形状に変わった後に、二丁の拳銃へと姿を変えた。


「何それ!?」


「拳銃……でも、玉を詰めるところが無い」


 俺は、その拳銃を触っていると片方の色が赤く変わった。


「何だ……!? なんか、ダイヤルみたいな物があるぞ……」


 しかし、色を変える事が出来ても玉を入れる事が出来ないのであれば、何の意味もない。

 そして、その後……何度も、カチャ……カチャと虚しい音だけを響かせる拳銃から炎の球が発射された!!!


「パズル! 今、何をやったの?」


「分からない……ただ、引き金を引いていただけだ……」


「何だか、小ちゃなファイヤーボールみたいね」


 その言葉で、俺は魔力を込める事に気がついた。


「カルディナ!!!」


「なに!? ビックリしたぁ〜……」


「魔法って、どうやって放つんだっけ!?」


「魔法……? あんた使えないでしょうが……」


「いいから教えてくれ!!!」


「手のひらに、こう力を溜めるのよ! 簡単なイメージは血が手に溜まる感じね」


 それを銃を握りながら試してみる……すると、銃に魔力が溜まるのを感じる。


 そして、二丁の拳銃の引き金を引くと……片方からは、光の玉が——もう片方からは、炎の玉が放たれた。


「何何!?」


「これは、玉の代わりに魔力を込めて打ち出す拳銃みたいだ!」


 それから俺は、色々試してみると……色が変化すると出てくる魔法も変わるみたいだった。


 ノーマルが魔力弾! 赤が火炎弾! 青が水弾! 白が冷凍弾! 黄色は電気でプラズマが発射された。


 そして、この武器は俺にとって最高の武器となった。

 まだまだ生き物を殺すのに抵抗がある俺にとって、感触の残る剣より。

 遠目から殺す事の出来る拳銃は、本当に有り難かった。


「なんか……異世界生活が何とかなりそうな気がして来た。

 ところでカルディナ、ゴブリンの血で全身汚れたんだけど……何処かでお風呂って入れない?」


 そうカルディナに聞くと、お風呂なんて王族が貴族しか入れない事を聞かされ! 俺は異世界で、やって行けない気がして来た……


 それからカルディナは、近くの川に俺を案内してくれると俺は川で水浴びをする事になった。


「水は冷たいが……贅沢は言ってられない」


 そう我慢して水浴びをしていると、全裸のカルディナが現れて一緒に水浴びをする事になった。


「ちょっと、待って……中学生の俺には、刺激が強過ぎる!!! 嬉しいけど……」


 ついつい本音が漏れてしまったが……それでも、カルディナには恥じらいと言うものをもっと感じて欲しかった。


「冒険者なんて、こんなもんよ! 水浴び、なんて出来る時しか出来ないし。

 食べたい時に食べて、寝たい時に寝るのが冒険者よ!」


 冒険者の極意をカルディナに教わった俺は、他にも色々と教えてもらう事にした。



 それから何日も何日も俺とカルディナは、モンスターと戦った。

 自分自身の弱い心、精神を鍛える為に……


 そして、ある日。


 俺はカルディナに質問をした。


「カルディナ……この世界には、レベルという物は存在しないのか?」


「レベル……? レベルって、何?」


「レベル上がると、力が上がったり。魔力が上がったりする物だけど……知らないのか?」


「知らないわ。力をなんて戦っていれば、そのうち強くなるし……魔力は、生まれつき決まっているでしょ? 普通……」


「そうか……無いなら良いんだ……」


「ねえ、パズル……あんたも少しは強くなったんだから、そろそろ龍神を探しに行かない?」


「まだ、龍神と戦うのは早い気はするが……情報集めは、しておいても損はないだろう」


 と、いう訳で二人は龍神の情報を集める為に旅に出る事にした。


 そして、旅に出た俺達は初めての村に到着すると……その村は鳥のモンスターの襲撃を受けていた。

 その為、到着してすぐに俺達は鳥のモンスターと戦闘になった。


 俺は、二丁の拳銃をぶっ放しまくる……カルディナは、落ちて来た鳥のモンスターにトドメをさす役割。

 しかし、鳥のモンスターの数が多すぎて俺達が苦戦をしていると……


 いきなり巨大な竜巻が発生して鳥のモンスターを一掃した。


「何が起きた!? カルディナ、お前か?」


「私じゃない……」


「じゃー誰が……!?」


 すると、空から一人の魔法使いが降りて来た。


「お前は!?」


「お前達そこ、なんだ!? 中途半端に鳥のモンスターを散らしやがって、人の邪魔をするな!!!」


 そう怒っている少年は、どこか日本人みたいな見た目をしていた。


「俺は、佐藤パズル……君は?」


「佐藤……お前、どこから来た!?」


「日本から……君は?」


「…………そういう事か……俺は、鈴木 遊戯ゆうぎ! ユウギだ!

 お前も、願いを叶える為に——こちらの世界に来たと言う事か……」


「願い……って事は、お前も龍神を……」


「龍神を倒すのは、俺だ!!!

 俺は、龍神を倒し失った家族……過去を取り戻す」


 その言葉を聞いた瞬間に理解した。彼もまた大事な人を失い助けたいと願う者……

 しかし、俺だって譲る事なんて出来ない。


「まて、俺だって同じだ!!!」


「お前なんかに、俺の気持ちが分かる訳ないだろ!!!」


 そう言うと、鳥のモンスターから出た玉を掴むと飛んで消えて行った。


「何なんだ!? アイツは……それに、アイツが持って行った玉は何だ?」


 すると、村人達が集まって来ると……


「ありがとうございます! 勇者様……さっき飛んで行った。彼の方も、お知り合い? お仲間ですか?」


「仲間では無いですが、同郷ではありますね」


「そうでしたか……では、感謝を含めて今晩は村で、一休みして行ってください。おもてなしをします」


「それは、ありがとうございます!」


 カルディナがすぐさま受け入れた! その為に俺達は村に一泊する事になった。


 そして、その晩! 村長にユウギが持って行った玉の事を聞くと……


「あの玉は、龍神と戦う為に必要な物と言い伝えで聞いております」


 それを知らなかった俺は、唖然とした。


「な……そうなのですね……」


 そして、カルディナと話し合い。次の日からは、モンスターが落とす玉を探す事にした。


 一応、村長より。近くの森に住む大蛇が玉を持つと聞いたので二人でそこに向かうと……


「山のてっぺんに来たけど……大蛇は、何処に居るんだ? 洞窟で冬眠でもしてるのか?」


「あの村長、嘘ついたんじゃないわよね」


「そんな嘘をつく意味は、ないだろ!」


 すると、地面が動き出し! 二人は、その場から転がり落ちた。


「いってぇ〜『いったぁ〜ぃ……』」


 そして、二人の前には山みたいに大きな大蛇が現れた!!!


「り……龍神……!!!」


「違うわよ! ただの大蛇よ!!!」


「これで蛇……俺からすると、コイツはもう竜だぞ!!!」


「うだうだ言ってないで、行くわよ!!!」


 そして、カルディナが大蛇に斬り掛かると——俺は、魔力弾を撃ちまくる。


 しかし、大蛇の硬い鱗に阻まれてダメージが通らない。


「くそッ……次は、火炎弾だ!!!」


 その後、火炎弾も氷結弾もプラズマも試すが……これと言ってダメージを与えられる物は無かった。


「きゃぁーーー!!!」


 すると、一人で突っ込んでいたカルディナが大蛇に吹き飛ばされる。


「マズイ! レベルが違う……」


 しかし、カルディナは立ち上がると——また大蛇に立ち向かって行った。


「カルディナ——無理だ!!! レベルが違い過ぎる……」


「何言ってんの!? パズル——こんな奴、倒せないようじゃ龍神には、絶対に勝てないわよ!」


「それは、そうなんだけど……」


「あんたの願いって、その程度なの!?」


(…………違う! 俺は、絶対に妹を生き返らせる。そう誓ったはずなのに)


「……ごめん」


「誰に謝ってるのよ!」


「分かってる……」


 そして、大蛇に向かうカルディナを見ながら……俺は二丁の拳銃を合わせて、組み替える。


「くそッ……ここを——こうして……これで、これが、こうで……

 焦るな! 俺……俺はパズル……どんな物も組み立てる……」


 そして、カルディナがまた吹き飛ばされると、それを追って大蛇がカルディナを仕留めにかかる。


シャーーー!!!


 そこに、大蛇を襲う一撃が……


ドォーーーーン!!!


シャーーーーーーーーーー!!!


「なになに、パズルなの?」


「カルディナ、待たせた!!!」


 パズルは、二つの拳銃を組み合わせて一本の大砲へと変えた。


「これなら、大蛇の鱗も破壊出来る!!!

 俺が削るからカルディナは、一度離れてくれ!」


「分かった!!!」


 そして、パズルは大砲をぶっ放す!!!


 しかし、攻撃は当たるが……致命傷となる頭への攻撃は、避けられ当たらない……


「ならば、玉砕覚悟だ!!! 来いよ! 

 大蛇……お前が俺を食うのが先か、俺がお前の頭を吹き飛ばすのが先か勝負だ!!!」


 パズルが大蛇の正面に立つと……大蛇はとぐろを巻き力を溜める。


 大蛇はバネの様に、溜めた力を解放してパズルに飛び掛かる。

 パズルは、大蛇が迫るが——まだ待つ……カルディナが叫ぶ!!!


「パズルーーー!!!」


 そして、パズルは大蛇に食われる瞬間に口の中に大砲を放つ!!!

 パズルの姿が一瞬消えるが……大蛇の頭が吹き飛ぶと中から血だらけのパズルが現れる。


「カルディナーーー……宝玉、あったぞ!」


「バカぁ!!! 心配させるなぁーー!!!」


 そして、手に入れた宝玉は勇者の武器に吸収された……


「あれ……!? 無くなったけど、これで良いのか?」


「知らないけど、別に良いんじゃない」


 すると、突然……大砲が大剣に姿を変えた。


「これは……!?」


「振ってみたら!?」


 パズルは、大剣を振ってみると……大蛇の様に刀身が伸びた。


「これなら、巨大なモンスターでも一刀両断出来る!」


「宝玉は、勇者の武器を強化させる効果があるのね」


「て、事は——宝玉を集める事で武器のレベルが上がり龍神を倒す事が出来る様になる。という事か……」


「なら、沢山集めて! もっと強くならないとね」


 その後、俺達は引き続き龍神の情報と宝玉を探す旅……



「カルディナ! グリフィンが行ったぞ!!!」


「分かってる……!!!」


「爪に気をつけろ!!!」


「飛ばれると攻撃が当たらない……翼をどうにか出来ない!?」


 その後、冷凍弾で翼を凍らせると——二人で、落ちて来たグリフィンを滅多刺しにした。


「パズル、宝玉あったわよ!」


「よっしゃー!!!」


 そして、宝玉を武器に吸収させると……


「おおーーー!!! 剣のツカの装飾の部分がライオンと翼に変わった!」


「それって……なんか意味あるの?」


「見た目がカッコよくなった!!!」


 しかし、本当は——それだけでは無かった。


 実は、剣には風の力が宿り振ると真空の刃が飛び出すのは、後日知る事になる。



 それから二人は、神獣である麒麟と対峙する事になった。


 二人の周りには、落雷が落ち……それを避けながら戦う二人は——麒麟に近づく事すらままならなかった。


「神とつくだけあって、めちゃくちゃだな!」


「でも、龍神は——きっと、これ以上よ……」


「でも、麒麟を倒して——この凄まじい力が手に入れば……龍神に対しても決定打になるやもしれない」


「なら、迷ってないで本気で行きなさい!」


 そうパズルは、麒麟に対して他のモンスターとは違う感情が湧いていた。


 麒麟は、他のモンスターと違い人を襲わない。山の守り神として君臨している……

しかし、龍神を倒す為には麒麟の力は必要となるはず……パズルは、そこに迷いがあった。


「分かってる……」


 そして、パズルは麒麟に向かう。麒麟はパズルに対して落雷と、その角からレーザーを出して来るが……実はパズルには、そんなに問題ではなかった。

 リズムゲーで、鍛えた反射神経は麒麟の攻撃を軽く凌駕した。

 麒麟の攻撃を躱し近づくとパズルの風を纏った攻撃は、普通なら傷つく事すら出来ない鱗を切り刻んだ。


 それを見たカルディナは、驚いていた。


「パズル……いつのまに、そんなに強くなったの……!?」



 そして、激闘の末——麒麟を圧倒したパズルは麒麟にトドメを刺す瞬間に悩んでいた……


「やっぱり……ダメだ……。

 俺には、麒麟は殺せない……」


 すると、麒麟が語りかけて来る。


「我を倒し強き者よ! 我を殺し我の力を受け取れ……」


「でも、お前は——普通のモンスターとは違う。人を守ってれているのに……そんな奴を私情で殺すのは間違ってると思う」


「龍神を倒すには、我と朱雀の力が必要だ!

 もう一人の勇者は、朱雀の力を手に入れている。お前は、我の力が必要なはずだ……」


「しかし……」


「なら、俺が麒麟の力も貰ってやる!!!

 麒麟を焼き尽くせ! 朱雀……」


 そこに現れたのは、ユウギ。


「やめろーーー!!! ユウギーーー!!!」


ギギャーーァァーーーー!!!


 ユウギは麒麟を焼き尽くした!


「何で……何で……!!!」


「お前は、間違っている。自分の欲しい物の為なら情けなど、あってはいけない。

 それがモンスターなら尚更だ!」


「でも、麒麟は人々を守る守り神だ!!! そんな奴を自分の私情で殺すのは、間違っている!!!」


「所詮は、お前の望みとは——その程度の物だって事だ!!!」


「違う! 俺だって、妹を取り戻したい……だけど、その為に犠牲になる者が居るのは間違っている」


「モンスターは、人では無い!!! 情など必要ない。ごたくはもういい……これで全ての宝玉が揃った。

 あとは龍神を倒すだけだ! 麒麟の宝玉は貰っていく……」


 そして、ユウギは麒麟の宝玉を手に取ったが……麒麟の宝玉はパズルの元に飛んで来るとパズルか持つ武器に吸い込まれて行った。


「何故だ!? 麒麟を倒したのは、俺のはずなのに……」


「違うわ! パズルは麒麟を殺せたけど、殺さなかっただけよ。

 だから、麒麟の宝玉は貴方ではなく——パズルを選んだの」


「うるさい! 黙れ!!! 俺に偉そうに指図するなぁーーー!!!」


 そして、ユウギはカルディナに朱雀を放つ。

 それに反応すら出来ないカルディナ……


「えっ……」

 

バチッーーーン!!!


 雷を纏い瞬時に移動したパズルは、ユウギの朱雀を切り裂く……


「ユウギ、やめろ……お前の覚悟は分かっている。

 でも、カルディナを攻撃するなら俺が相手になる……」


「ああ、邪魔されない様に——ここで殺しておくのも良いかも知れないな……」


「本気で、言っているなら相手になってやる」


「やめなさい! 二人とも……龍神を倒すには、二人の力が必要になるはず。

 こんな所で殺し合っても、何の徳もないわ!!!」


「チッ……まぁ、いい。龍神を倒すのは俺だ!」


 その言葉を残して、ユウギは去って行った。


「カルディナ、ありがとう。君が止めてくれなかったら……」


「良いのよ……貴方達の願いは、両方とも同じ物。だけど、やり方が違う……お互い協力出来れば良いのに……」


「ぁぁ……でも、望みを叶えられるのは一人だけだ。それを知らなくても、アイツは協力なんてしなかったと思うが……」


「そうかも知れないけど……」


「カルディナ、君にだって悪いとは思っている。

 ずっと、助けて貰っているのに俺の願いを優先してくれるなんて……」


「私の願いなんて、有名になって私の名前を世界に轟かす事だし……

 それはもう、あんたとの旅で叶った様な物だから……パズルの願いの方が大事よ!」


「ありがとう……」


「感謝をしているのは、私の方よ!

 そんな事より、アイツに先を越される前に龍神の元に急ぎましょう」


「それは、大丈夫だ……アイツもそんなに浅はかでは無いと思うし。

 しっかりと準備をしてから龍神に挑もう」


 それから、俺達は近くの村で準備を整える事にした。




 そして、龍神の谷に向かう。




 龍神の谷に着くと、ユウギが待っていた。


「やっと、来たのか……」


 ユウギの顔は、思い詰め少し疲れている様子だった。


「大丈夫か? ユウギ……」


「人の心配なんてしてる暇はないだろ。お前は、自分の事だけ考えてれば良いんだよ!」


「何で、お前は……」


 俺は、そう思ったが……俺ももしかしたらユウギみたいになっていたかも知れない。

 ユウギと俺の違いは何かと考えると……そうならなかったのはカルディナの存在が大きかった。


 俺にはカルディナが居たからユウギみたいに思い詰めなかったんだ。

 状況が違えば逆になっていたかも知れないユウギを俺は、やっぱり心配した。


 しかし、それと同時くらいに谷の湖に渦巻きが発生して竜巻が起こると、そこから龍神が現れた。


 そして、龍神が現れると——天候は荒れだし……雨や雷も降り出した。


「これが、龍神の力……」


「どんな力を持っていようとも殺すだけだ……」


「油断したらダメよ! パズル……相手は、世界を終わらす力を持つと言われているのだから……」


 すると、龍神が話し出す。


「我の元に、辿りし勇者よ! 我を楽しませて見せよ……」


 その言葉が終わると同時に、天から三人に向けて衝撃が襲う!


「ゔぅ……」


「何だ!? この威圧感は……」


「ただの威圧だけで震えが止まらない……」


「行くぞ……勇者よ!」


「カルディナ! ごめん……ここまで一緒に戦って来たけど、今回は手を出さないでくれ!」


「はっきり言え! パズル——足手まといだと!」


「言われなくても、私が一番分かってるわよ!

 さっきら怖くて、体の震えが止まらないもの……パズル分かったゎ。今回は、見守るわ……だけど、あんたも死んだらダメよ!」


「分かってる……」


 そして、カルディナが離れると——雷が二人を襲う……ユウギは魔法を使い飛んで避ける。

 パズルは、風を剣に纏わせると体を浮かした。


「雷は、俺には効かない……麒麟が守ってくれているから!」


 そして、龍神に向かうパズル……近づくと龍神の周りには強い風が吹き荒れている。

 それを切り裂く様に、真空の刃を放つと……龍神も真空の刃を爪から三本放つ!


 それを盾に変形させてガードすると、双剣に持ち替えて斬りかかる。


 そこをユウギの氷魔法が襲うと、龍神の体は凍りつく……

 一瞬、時が止まるのを感じるが……すぐさま氷が砕けると、龍神の青い炎のブレスが二人を襲った。


「朱雀! 奴の炎を喰らい尽くせ……」


 ユウギによって放たれた朱雀は、青い炎とぶつかると……青と赤の火の鳥となると龍神に襲いかかる。


 龍神は、その攻撃を喰らうと全身から湯気を出し……動きが止まる。


 そこへ上空に巨大な岩を作り出すと、龍神に叩きつける。

 龍神は岩と共に湖に沈むと……ブクブクと泡を立て上がって来ない。


「やったのか……!?」


 すると、湖から竜巻が起こり俺とユウギを必要に追いかける。


「くそッ……ユウギ! お前の魔法で相殺出来ないのか!?」


「うるさい! 黙れ……今から、やる所だ!」


 水の竜巻と風の竜巻は、互いにぶつかり合い……相殺して行くが、龍神の作る竜巻の数が多すぎる。

 俺は、剣を巨大化させて龍神に斬りかかる。


 これ以上、龍神の好きにはさせない為に……


 俺は、その後——二丁の拳銃を撃ちまくる。

 火炎、冷凍、プラズマ……色々試すが麒麟の力が乗るプラズマが一番、威力がある為プラズマを撃ち続ける。

 決定打には、ならないが少しずつと龍神の体力を削り鱗を剥がして行く……


 そして、ユウギもストーンバレットならぬストーンガトリングを撃ちまくる。


 二人は、ここまでの凄まじ戦闘でボロボロになっていた。


「ユウギ……このままでは龍神は倒せない。

 頼む力を貸してくれ……」


「力を貸すと言っても、どうするんだ……!?」


「俺が大砲を作り出す。お前は、大砲の中に朱雀を込めてくれ! そしたら俺がそれを麒麟の力で押し出す。

 麒麟が言っていたんだ、龍神を倒すには朱雀の力と麒麟の力が必要になる。」


「分かった……それでも、きっと龍神は倒れないだろう。しかし、必ず弱るはずだ……」


 そして、俺とユウギは力を合わせて大技を繰り出す!

 俺の大砲にユウギの朱雀を込めて……麒麟の力で押し出す!!!


「「行くぞー!!! 龍神——!!!」」


 二人の技は、炎のペガサスとなり龍神に襲いかかる。

 そして、龍神にぶつかると凄まじ爆撃が巻き起こる!

 俺達は、爆風に耐えられず吹き飛ばされる……


「ゔぅ……ゔゎぁぁぁーわー!!!」


 そして、爆撃による光が収まるとボロボロの龍神が唸り声を上げながら突進してくる。

 ボロボロの龍神の捨て身の攻撃である……それを盾でガードするが、龍神の捨て身の攻撃で弾き飛ばされると岸壁に叩きつけられた。


「ぐはぁッ……」


 そして、ユウギは龍神に噛みちぎられ上半身と下半身が二つに分かれていた。


「ユウギ……!!!」


 俺は、ユウギに駆け寄ると……


「カルディナ、カルディナ!!! ユウギを助けてくれ!!!」


 そこへ飛んできたカルディナは……


「もう無理よ……パズル……」


「ここは、魔法が存在する異世界だろ! このぐらいの怪我、治せよ!!!」


「魔法は、万能じゃないの……出来ない事の方が多いくらいよ」


 その間も龍神のブレスが三人を襲う……しかし、上半身だけのユウギが——防御結界で、それを防いだ。


「ぐはッ……」


 口から吐血をするユウギ……


「ユウギ……何で俺を庇った!!!」


「体が……勝手に……動いていた……」


「お前の覚悟は、そんなもんだったのかよ! 俺を助けるより大事な事があるんだろ!!!」


「うるさい……傷に響く……もう、感覚すらないが……」


「バカやろう……」


「パズル……願いを叶えられるのは、お前だけだ……しっかりやれ……

 ぁぁ……あの日、3年前の夏休み初日に家族で出かけなければ……高速であんな事故に合わなかったのに……」

 

 ユウギは、目が虚になり……過去の事を思い出しているみたいだった。

 俺は、そんなユウギの話を聞きながら……ある事を思い出した。


 それは、妹が死んだ。あの日……キャンプ場に向かう高速で事故をしていた車の事……煽り運転の車に止められたワゴン車に、後ろから大型トラックが突っ込んだ! 

 ニュースでそんな事をやっていた気もするが、自分達の事で精一杯で気付きもしなかったが……あの車には、間違いなくユウギが——ユウギの家族が乗っていた……。


 そして、ユウギは最後に——俺に杖を渡すと……息を引き取った。


「ユウギーーー!!!」


 ユウギの杖の玉の部分が俺の武器に取り込まれて行く……


 そして、俺の武器は光り輝き出すと……それに気づいた龍神がブレスを吐き! 俺達を襲ったが、ユウギの防御結界でガードする。

 ブレスが無くなると俺の全身は、鎧で包まれていた。


「その姿は……」


「ユウギが俺に力を貸してくれている……」


 すると、背中から翼が生えてくる。手足はヒヅメの様に鋭く……額のツノを引き抜くと光り輝く剣と変わった。


「カルディナ、ユウギを頼む……」


「ええ……」


 そして、龍神へと向かって行った。


 龍神は、それに気づくとブレスを吐く! 俺は、それを結界で防ぐ……


「これは、ユウギの力だ……

 麒麟、俺に力を貸してくれ!」


 剣の輝きが増すと、龍神を切り裂く。唸り声を上げる龍神が竜巻を起こすが俺はそれをヒヅメの刃で相殺する。


「龍神……終わりだ!」


 俺は、剣に炎を纏わせると龍神に突っ込む! 俺の体は炎に包まれ……火の鳥となり龍神にぶつかる。

 龍神に剣か突き刺さると溜めていた力を解放する——龍神は、中から雷と炎と風の力により。ズタズタになる……


 そして、龍神は灰となり消えて行くと……代わりに現れた光る玉を掴むと俺は、カルディナの元に戻る。


「やったのね。パズル……これで、お別れね」


「そうだな。カルディナ、今まで——ありがとう……俺は、これから妹を救うよ」


「それが良いわ。ユウギもそれを望んでいると思うゎ……」


 寂しくないと言ったら嘘になるが、俺の覚悟は決まっていた。


 そして、カルディナは最後になる俺の手を握ると……熱いものが伝わってくる。


「何だ!?」


「ただの、おまじないよ! あなたを守ってくれる様に願ったの……」


「そうか、ありがとう。

 じゃー……行ってくる」


「うん……」


 そして、俺は願う……





「お兄ちゃん……早く起きて!!!」


 懐かしい声で、俺は目を覚ました。


「ミサ! 今何時だ!?」


「まだ6時だけど……お母さんが起こして来いって言ったから」


「いや、ありがとう!」


 今なら、まだ間に合う。


 俺は、急いで支度を整えるとお父さんに早めに出る事を提案する。


 いつも、一番準備が遅い俺が言ったので父は笑いながら了承してくれた。


 そして、あの日より一時間以上も早く出た俺達は……


「お父さん! あそこのパーキングエリアに寄って!!!」


「何だ!? トイレか……?」


 あの日、煽り運転を受けたユウギの家族はパーキングエリアで揉めた後に、あの事件は起きた。


 そして、パーキングに着くと——あの日のあの車を見つける。


 しかし、もう揉めた後なのか……2台の車は、走り出そうとしていた。


 俺は、走って追いかけると……


「待ってッ!!! 待ってくれ!!!」


 そして、手を伸ばすと衝撃波が出て犯人の車のタイヤを吹き飛ばす……


「この技は、カルディナの……」


 運転手は、車から出て来ると!


「クソッ!!! バーストかよ!!!」


 そして、ユウギの乗る車は走り去って行った。


「よしッ!」


 俺はガッツポーズを取ると、家族の待つ車へと戻った。





 それから、三年の月日が流れると……俺は中3になり。

 夏休みの最初の日に母に頼んで、母の実家に連れて来てもらった。


「あんな何もない所に、あんたが行きたい何て言うと思わなかったゎ……」


「どうしても確かめたい事があるんだ!」


 そして、俺は——あの日の、あの場所に……洞窟を通り異世界に



 俺の前には、一匹の猿が現れる。


「火猿だ……俺は、本当に来れたのか!」


 そして、火猿に囲まれた俺は……火猿を素手で倒すと……


「あんた素手で火猿を倒すなんて強いわね。助けて恩でも売ろうと思ったんだけど、失敗だわ!」


「そんな事もなさい……カルディナ」


「えっ!? 何で私の名前を知ってるの?

 貴方は、何者……?」


「俺は、佐藤……佐藤パズル!」


「佐藤……何処かで聞いた名前ね……」


「まぁ、佐藤なんて珍しくもない名前だし」


「いや、珍しいわよ!」


「そうか!? 日本では一番多い名前だと思うけど……」


 すると、一人の男が現れると


「バカか——お前は、鈴木の方が多いだろ!」


「ユウギ……」


「久しぶり……実際には3年ぶりか!? そんな事より。あの時は、ありがとう……」


「お前が、素直にお礼を言うとは気持ち悪いな……」


「うるさい!!!」


「でも、記憶があったんだな……」


「いや、あの時は無かった。

 でも、お前を見た途端に思い出した!」


「そうか、なら良かった……」


「お前は、妹を助けられたのか?」


「当たり前だろ! その為に戻ったんだ」


「それは、良かった……」


「ねぇ、貴方達——仲間なの?」


「仲間じゃないよ! ただの同郷ってだけ。

 俺の仲間は君だよ! カルディナ」


「言ってる意味が、よく分からないけど……貴方達、貴族?」


「まぁ、そん所だ! それで君に依頼があるんだけど、カルディナ! 俺達を王都まで護衛して貰えないか!?」


「えっ!? あんた強いじゃない……」


「強さは、関係ない。

 俺には、君が必要なんだ……」


「まぁ、良いけど……報酬は、たんまりと貰うわよ!」


「任せろ! 俺とユウギで、お前の願いを何でも叶えてやる」


「言ったわね! じゃー私を世界一有名な冒険者にしてもらおうじゃない!!!」


「お安い御用だ。じゃー行くか!!!」


「ああ、今回は楽しんで行こうぜ!」


「お前もついて来るのか!? ユウギ」


「当たり前だろ!!! それとも、また勝負するか!?」


「冗談だ! 協力しようぜ——ユウギ」


「あんた達、仲良いのか悪いのか!? 分からないわね……」


 そして、今回はユウギとカルディナと三人で行く異世界が始まった。

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〜ひと夏の思い出〜ゲーマーの俺のスキルは異世界で通用するのか…… 国語力 漫点 @kokugo0

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