第27話 閑話③(別視点)

 黄金の巨木の前に立つファナードの女神は、その場に崩れ落ちるように倒れた。

 水面に大きな波紋が生まれ、広がり、消えていく。


「……あなたはいつもそう。真実を知っても、決して諦めることはない。いつも……いつも、同じ言葉を私に返すのね……」


 彼女は巨木を見上げた。不自然に広がるたくさんの枝の中に、先端が黒くなっている物が何本かある。


 布で覆われた瞳が映す何かに向かって、手を伸ばし――ギュッと強く握った。


「どうか辿り着いて……今度こそ」


 祈るような声が僅かに空気を震わせ、消えていった。

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