アリスティア興亡史（仮題）

DAY0 プロローグ

笹原悠斗（ささはら　ゆうと）は、貧乏だった。

幼い頃に父親を亡くし、社会状況の大変動もあって、ありていに言って、食い詰めていた。

職も貯金も無く、たまたま見かけた、世界で初めて開発されたフルダイブ型VRゲームのαテスターの被験者に応募した。

全身の感覚を遮断して、ゲーム機器側に流し込んで、人間の心身にどのような影響が出るのか出ないのか。

率直に言って、人体実験の被験者募集だった。

それでも、いわば住み込みで三食付きというだけで、このご時世では、魅力的過ぎた。さらに、連続ダイブ期間に応じて報酬額が上乗せされて、１ヶ月で１００万円単位と十分過ぎた。

これは、人間としては（身長以外は）平凡なスペックの一男性が、人類史を変えるかも知れないフルダイブ型VRゲームの世界に移住、いや謂わば異世界転移して、奮闘する物語である。