026

「あの面々では決まりそうもないわね」


「カイトさんがあってこそのあのメンツだからにゃ」


 ひと段落して休憩をしていたシャーロットが呟いて、それに相槌を返すルル。一応凱斗が帰って来るまでは留まると言う事だ。


「何なら私と一緒にメイドやろうよ?」


「メイド長様のお眼鏡に叶う仕事ができる自信にゃいから」


「そんな事ないでしょう?あなたも仕事で給仕とかお掃除とかした事があるでしょう?」


「お城で私みたいにガサツ者ができるお仕事はにゃいよ」


 やる気全く無しで断った。お茶を飲むのに忙しいから構うなとのオーラを出して。シャーロットは溜息をついた。


「……カイト様が帰って来た後はどうするの?」


「うん?放浪するにゃ」


「……自殺する場所を探すの?」


 カップを持つ手が止まった。そしてシャーロットを見る。


「……にゃんでそう思うのかにゃ?」


「あなた、死にたがっていたもの。心が死んでいるからもういいやって。だけどカイト様に救われたよね?それでも死ぬつもり?」


「…カイトさんには感謝してもしきれにゃいけど、ロッティも言ったようにもういいのにゃ。疲れたのにゃ、生きるのに」


 そう言って笑った。乾いたような、疲れたような笑顔で。


「お嬢様は許さない筈よ?」


「そうかもにゃ」


「カイト様も」


「そうだったらいいにゃー」


 あるいは凱斗の方が許さないだろう。だが、そうだったらいいなと本心で思った。凱斗の存在はルルの中で大きい。優先順位では凱斗の命令が一番だ。


 だから凱斗が死ぬなと言えば死なないつもりではいた。だが、果たしてそう言ってくれるのか?肉体も魂も汚れた自分に?


 そんな事を考えていると、下が騒がしい事に気付いた。警備兵が必死に止めている感じだった。不法侵入か?それならば追い払えなければ殺せばいい。


 何となくそう思っていた所――


「カイト様!!お早いお帰りですが、なんでそんなに怒っているんですか!?後ろの死神は客人ですか!?」


「うるせー!!退け!!セレス!セレス!どこだセレス!!」


 顔を見合わせるルルとシャーロット。凱斗が本当に帰って来た!?早くても明日の予定だった筈なのに!?


「……今カイト様、と…?」


「……うん、はっきりそう聞こえたにゃ。死神がどうのとか……」


「い、行ってみましょうか?」


「そ、その方がいいかもにゃ。お嬢様も呼んでいたようだし、多分直ぐ駆け付けると思うし……ほ、ほら、出迎えは大勢の方がいいのにゃ」


「そ、そうよね?ね、ねえ、さっき仕事して身体動かしたんだけど、汗臭くないかな?」


「あ、ちょっと髪跳ねているかもしれにゃいけど、ど、どうかにゃ?」


 何となくそわそわして、何となく気にして、それでも声の方向に足を向けた。


 臭い?髪が跳ねている?そんなもの――


「「あの人が気にする筈が無い」のにゃ!」


 実際気にしないだろう。相沢 凱斗が優先すべきは、セレス・ユピテエル。


 に、アイアンクローを本気でぶちかまし、頭蓋を割って火事の責任を取らせる事なのだから!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る