龍の泉が輝く時

わたくし

入店

 冬のボーナスが思ったよりも多く出たので、自分へのご褒美に『美味しい料理』と『ムフフなお店』を探しに夜の街へ繰り出す。

「『腹が減っては…』と言うからまずは食事からだな」

「その後はムフフ……」

 独り考えると口角が上がってゆく。


 フラフラと夜の街を彷徨い歩くうちに、街外れまで来てしまった。

 引き返そうと思った時にある建物が目に入った。

 その建物は三階建てのビルディングで中華風の意匠で飾り付けがしてあり、入口の看板には『本格幻想コース料理 龍泉』の文字が光っていた。

「『幻想』とは、創作料理の事かな?」

「何だか高級そうな料理が出そうだな」

「ヨシ! 入ってみよう!」

 興味本位で玄関に入る。


「いらっしゃいませ! 『りゅうせん』にようこそ!」

 チャイナドレスに身を包んだ二人の美しい女性が出迎えてくれた。

「予約無しの飛び込みですが、コースで食べられますか?」

「当店は『本格幻想コース料理』ですので、コースが始まるまでには少々のお時間がかかります」

「また、沢山のオーダー注文があり少し戸惑う事もあると思いますが、大丈夫でこざいますか?」

 なるほど、最初にコースのオーダー注文を聞いてから準備をするから時間がかかるのだな。

 ある程度オーダー注文が選べて、自分好みのコース料理を仕立ててくれる仕組みだな。

「あの~、予算はどの位かかりますか?」

「当店のコースはどれを選んでも、料金は同じでございます」

 そう言って、分厚いメニューを差し出す。メニューの1ページ目には6桁の料金が書いてあった。

 懐には今回のボーナスの7桁のお金が入っている。

「大丈夫です! お願いします!」


 二人のうち背の高いスレンダーな美女が言った。

「ありがとうございます。 本日の『本格幻想コース料理』のお手伝いをわたくし『良良リョウリョウ』と…」

「わたくし『好好ハオハオ』が務めさせていただきます」

 小柄でグラマーな美女が言った。


「それでは、こちらへ……」

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