[完結保証]素人集団!!国家連邦政府宇宙軍第6艦隊奮闘記

ココチュ

第1話 生贄にされた第6艦隊

 国家連邦政府宇宙軍第6艦隊。まあそう言えば聞こえは良いのだろう。しかしその内容はたった6カ月緩い軍事演習を経験した民間人に、三カ月宇宙駆逐艦の船団長を経験した元建設会社の役員が提督と言う構成なのだから何ともザマ無い話だ。

 様になってないのは副提督兼参謀長である笹本健二の境遇も一緒だ。元ドラッグストアの店長で、6カ月の研修が終わった後、何故か参謀長にして副提督なのだそうだ。


 研修の終了と共に竜骨座の主星である「インドネシア領カノープス」という恒星に留めおかれたまま3日。教官達から連絡があり、急遽独立を宣言し、時代に合わない人種差別を国是とした、実力主義の公国が南十字星εイプシロン第4惑星に置かれたコロニー郡を領土として世界に対し、独立及び有色人種の殲滅を掲げて戦争を開始したのだそうだ。

 その宇宙艦隊が、カノープスめがけて3個艦隊がやって来るので、この宙域を7日間死守して欲しいと連絡してきたのだ。


 死守するにも迎え撃つにもまずはプランが無ければやり様がない。以前から何故か教官達から準備しておくように言われていた参謀本部の役員を招集しなければならないだろう。

 笹本は提督以下艦隊運営に必要な参謀各員と参謀本部を呼び出した。主だったメンバーは提督以下が共に乗艦している第一戦艦船団の船団長他の皆さんだ。

 これは主立っては笹本自身が機密が漏れた先に蓋をする為に巻き込んだ皆さんである。

 もう一つの要員は笹本が研修の間に友人になった中でAIが誘った方が良いという人物達だ。


「ふ。僕たちにとって一番不味いのはこうして宇宙軍を編成した理由が『有害な宇宙外来生命体の根絶』なのに、いきなり人間と戦えっていう内容の事だ。それが本物の人間との決戦と知れた時点で士気崩壊しかねないぞ」

 笹本が最大の懸念を言ってみれば、横から意外な答えが帰ってきた。

「案外平気なんじゃないかと思うよ笹本君。皆の会話をピックアップした結果、その92%は『そういう最終試験のシミュレーションなんだろう』だってさ」

 そう言ってきたのはポーランド出身で女性ながらに機械とプログラムのメンテナンスを担う事になる笹本と同い年の26歳、ウルシュラ・キタさんだ。

 メンテナンス要員なのだが、早くも通訳・翻訳ナノテクマシンのバージョンアップや、各個のSNSの会話やチャットを拾いまくっている辺り、本当は酷いコンピューターハッカーなのではと笹本は恐れている。


「ハハ。済まないのだがさっき迄私もその92%だったんだがな。本当の話だったのか。ハハ。あれだな。人類の敵はやっぱり人類でしたって奴かい?ハハ」

 そんなこと言いながら嫌な顔をしているのは有限会社オーストラリア国のナオミ・フィッシュバーン第一戦艦船団長だ。

 普段は笹本より10歳年上の36歳の大人な女性、ナオミは、何故か笹本に対し先輩風せんぱいかぜを吹かすのだが、今日のナオミの顔は引きつり気味だ。


「人類の敵はやっぱり人類だった。ですか。本次戦闘最大の名言ですねナオミ姉さん。ですが何も心配する事なんか有りません。コレらは道具として艦隊を操り、人間とそっくりな形をした、国家連邦政府こくれん宇宙軍が認定した『宇宙有害外来生命体』ですね。嫌ですねぇ。ニンゲン扱いだなんて」

 全員の中で一番過激な意見を言って寄越してきたのが、笹本がかつて通っていた高校のうんと後輩である叢雲むらくも早苗18歳。笹本の直属の部下で参謀である。

 この意見にばかりは否定的な反論が多かったが、これが本来の軍人の見解であるべきだ。

 会議がここでこの差別的で排他的な意見に紛糾しかけた所に、他の艦船に乗っている招集されたゲストが到着した。

「笹本さんこんにちは。来てはみたけど私なんかが参加して良いのかなって思うんだよ?」

「やあケンジ。カナメの意見は私の方が強く抱いてるんだぞ。だって私はかなりの劣等生なんだから」

 最初に声を掛けたのが小島かなめ18歳。おかっぱともボブとも付かないヘアスタイルとスレンダーな体格がモデルみたいな女の子だ。

 船団長という肩書は社会人だった人や大卒者に優先して割り当てられていったが、その様な人物にすら事欠いた国家連邦政府宇宙軍第6艦隊は、高校卒業者の船団長への起用にも踏み切った。彼女はそんな、高卒したての船団長の一人である。

 笹本とは早いうちから体力造りトレーニングの自主練から仲良くなり、研修期間には夜まで艦隊運用シミュレーターで突撃の研究を続けた女の子で、彼女が任された第7宇宙揚陸艦船団という、速度だけが取り柄の艦船なところがその精神に活かされた感じな子だ。


 次に声を掛けてきたのが、そんな小島が思い切って声を掛けて友人になったのだというドイツから研修に来ていた女の子でアリーナ・ガイスト。軍人になっても平気なのかと聞きたいのだが15歳の女の子である。この二人はAIが参謀本部に是非招けと奨めた二人である。

 正直な話を言えばアリーナを誘えとAIが言ってきた気持ちは良く分かる。この女の子は若さと元気の良さを武器に艦隊内部で次々と仲良しを作っているからだ。この子にやってやれと言わせることは、今や艦隊の33%を掌握していると言えるくらいなのだ。この子のJaはいは艦隊運用に必要なのだ。

 小島の必要性はこのアリーナをやる気にさせる為のカンフル剤だと笹本は当初思っていた。

 

「うん。凄く必要だ。よく来てくれたね」頭や成績ではなく、心理や心情の為に必要な二人を笹本はニッコリ笑顔で迎え入れる。

 ちなみに参謀長笹本と参謀叢雲を擁している高校は千葉市の中で決して頭のいい学校ではない。「学年で中程の成績なら受かる公立高校」とか言われる讀端こてはし高校。自慢できるのはトルメニクスタン眞理子というトランスタレント位しか無いダメ学校だ。

 好成績とか優秀なんて言葉が似合わない学校出身者が参謀長と参謀で、各発言者は大した天才でも秀才でもない。最後に発言したアリーナに至っては高校中退の上、バイク泥棒として逮捕歴もある人物だ。偉そうに参謀本部とか言ってはいるが、内情はかなりな物なのだ。

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