龍の泉を輝かせろ

宿木 柊花

第1話

 六班の四人は頭を合わせて一つの小さな紙を覗き込んでいた。


「これって暗号か?」

 と言うのは、動けるデブを自称するシン。ストレッチをしていつでも走れる準備をしている。

 だが、確かに太い。隣の女子二人分はありそうだ。


流行はやりの謎解き系じゃない?」

 体育の時だけ束ねる髪を邪魔そうに払ってミャーコは目を輝かせる。

 さっきまでの疲れを感じさせない気迫きはくで真剣に覗き込んでいる。謎解き、パズル、クイズなど体を動かすよりも頭を動かす方が得意なだけある。


「一気に難易度上がりすぎ」

 と中性的なマコトは思案顔。

 出発前に配られた旅のしおりには本日の予定はレクリエーションとだけ書かれていた。ヒントにはなっていない。


「なんでこれだけ手書きじゃないんだろうな」

 生徒会長も勤めるレオは変なところを気にする。


 四人はそれぞれに辺りを見回す。

 背面の湖には『龍』との関係性は見られない。

 チェックポイントとして設置された机。

 その近くの紙を拾った場所。

 周辺地図の看板。

 何かの石碑。

 お地蔵様。

 道祖神。


「『龍の泉』ってどこ?」


「どこにも書いてないね」


「なら、どこかにヒントが隠されているのでは?」


「一週回ってきたけど龍らしきモノはなかった」


「宿は?」


「「「「それだ!」」」」


「旅館ならこういう名前の部屋があってもおかしくないよね」


「確かに。龍の湯という名前の温泉はけっこうあるみたいだ」


「一旦、旅館を調べてみるか」


 謎のメモを解くため、泊まっている温泉宿へ向かうことにした。


「……ねえ、でもこの『輝かせる』ってどういう意味だろう?」

 レオは一人、首をかしげた。

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