第83話 謎の美少女パーティ爆誕(実際住所不定)
新たな仲間と装備を迎え、私達のパーティのパーティは増強された。
……いやホントに増えなた。
これまでリューリと二人きりだったのが、騎士のフレイさんと魔法使いのエーネシウさん、そして精霊使い?のアートさんに最後に思い出し、仲間になったクンタマと一気に三人と一匹増員ですよ!
「という訳で、メンバーが一気に増えたので、得意分野の確認の為にダンジョンにやってきました」
「アユミ様、どなたに話していますの?」
気にしないでください、ただの独り言なので。
「という訳で皆、アユミ様パーティの冒険はっじっまっるよー!」
あっ、またアートさんが見えない精霊とお話してる。
いつか私にも見えるようになるのかなぁ。
「といっても私とアート殿は既に戦いを交えてお互いの力を知った。残るはエーネシウとクンタマだな」
「ですわね」
「キュイ!」
名前を呼ばれたクンタマが、呼んだ? と言いたげに首を傾げる。
うーんあざとさを感じるほどに可愛い。
ちなみにクンタマの家である眷属の笛は出しっぱなしになっている。
というのも、魔法の袋に入れておくとまたクンタマの事を忘れてしまいかねないからだ。
とりあえずナイフを収納する皮の鞘をクンタマの笛ホルダーとして代用。
「あっ、魔物がいましたよ!」
「それではわたくしの力を見せて差し上げますわ!」
「キュイ!」
さっそくアートさんが魔物を発見すると、エーネシウさんとクンタマが前に出る。
「ぷめー」
現れたのはお久しぶりのぬいぐるみの魔物ポップシープだった。
「ななななななんですのコレェェェェッ!?」
しかしポップシープを見たエーネシウさんが突然奇声を上げる。
え? 何でポップシープにそんなに驚いてるの!?
「なんですのなんですのなんですのこの愛らしい生き物は!?」
「え……と、ポップシープです」
エーネシウさんのあまりの剣幕にアートさんが気圧されながら答えると、エーネシウさんはフラフラと夢遊病患者のような足取りでポップシープに近づいてゆく。
「ポップシープ、名前までなんて愛らしい……」
「ちょっ!? エーネシウさん!?」
いくら一層最弱の魔物でも無防備に近づくのは危ないよ!?
「キュイ!」
けれどそんなえーネシウさんの真横を、茶色い一条の矢が走る。
クンタマだ。
「キュィィ!!」
「ぷめっ!?」
クンタマは無防備に近づいてくるエーネシウさんに注意を引かれていたポップシープに対し、不意打ち気味に突っ込むと、その体を弾き飛ばす。
「って、クンタマ強っ!」
まさかクンタマがあの小ささでポップシープを吹き飛ばせるなんて!?
「キュイィィ!」
「ぷめー!」
そして弾き飛ばされたポップシープが起き上がる隙も与えず追撃するクンタマ。
ドカンドカンと弾丸のように突っ込む勢いはすさまじく、あっという間にポップシープは倒されてしまった。
「キュイ!」
そして誇らしげに倒れたポップシープの上で勝利の雄叫びを上げるクンタマ。
「おー。凄い凄い」
私達がパチパチと手を叩くと、クンタマは更に誇らしげな顔になる。
「あ、ああ……、ポップシープちゃんが……」
対してエーネシウさんはそんなポップシープの無残な姿に愕然となっていた。
「こんな、こんなに可愛い生き物が……」
すいません、それ魔物なんですよ。
「いやしかし驚いたな。こんな恐ろしさの欠片も無い魔物が存在するとは」
そしてフレイさんもポップシープに対し、驚きの表情を浮かべていた。
「普通魔物と言えば、もっと恐ろしい姿をしているものなんだが」
あー、そういう事ね。言われてみればエーフェアースの魔物は一層の魔物でもちゃんとモンスターって造形をしていた。
というかこのダンジョンの魔物が可愛すぎるんだよね。ただし攻撃した感触は綿でもスポンジでもなく、ガッツリとお肉の感触なんだけど。
「はっ!? まさか間抜けな見た目なのは相手の油断を誘う為か!?」
い、いやー、それはないんじゃないかな? 多分。
「あのー、それよりもエーネシウさんの実力が確認できなかったんですけど……」
あっ、そうだった。
「じゃあ別の魔物を探しましょうか」
「そうですね」
「うう、ポップシープちゃん……」
射別の魔物と戦う為に移動するも、エーネシウさんはポップシープに未練があるのか、しきりに後ろを振り返る。
「うーん、あの様子じゃポップシープと戦わせるのは止めた方が良いかな?」
「ですね」
となると他に居るのは……
「ギュイィィ!」
「あっ、居た」
次に現れたのはリトルゴブリンだ。
これなら人型だし、エーネシウさんも……
「なんですのあの愛らしい生き物は!?」
はい、これも駄目でした」
「キュイ!」
そしてクンタマに瞬殺されるリトルゴブリン。
「あぁぁぁぁっ!!」
うん、このフロアは駄目だね。下に行こう。
◆
「あれなら大丈夫でしょ」
二層に降りて来た私達は、漸く見つけた魔物を指差してエーネシウに尋ねる。
ちなみに遭遇したのは植物の魔物ライフリーフだ。
「ええ、お任せください! あの程度の魔物一撃で屠って差し上げますわ!」
リトルゴブリンを目の前で失ったエーネシウさんはやる気満々の様子で杖を構える。
「お受けなさい! 『火弾』!」
杖の先から発射された火弾はライフリーフに命中すると弾けて全身に燃え広がる。
そしてあっという間に消し炭にしてしまった。
「ほーっほっほっほっ、これがわたくしの実力ですわ!」
うん、流石にライフリーフなら一撃だね。
ふふん、と自慢げなエーネシウさんは戻ってくると、何故か私の前に立つ。
「えっと、お疲れ様です」
「……まあいいですわ」
何が?
「…………」
そんな中、何故かアートさんがポカーンとした顔でエーネシウさんを見つめていた。
「どうしたんですかアートさん?」
「い、今、魔法を……」
うん、魔法を使ったよね。正しくはスキルだけど。
「魔法を呪文を唱えずに使ったぁぁぁぁぁ!?」
心底驚いた顔で叫ぶアートさん。
「それがどうかしましたの?」
「どうかしたかって、呪文ですよ呪文! 魔法を使うなら呪文は必須じゃないですか!?」
「呪……文?」
あ、そっか。こっちの世界じゃ魔法は呪文を唱えて使うものだもんね。そりゃスキルで発動させたら驚くか。
私もすっかりスキルの便利さに呪文を唱える機会が減ってたもんなぁ。
そこでふと私は気付く。
「やっべ、アートさんの前でスキル使うとこ見せちゃった」
よりにもよってこの世界の人間の前で異世界の力であるスキルが見られちゃったのはマズくね? どうやって使うんだって大騒ぎになっちゃうよ!
フレイさんの時に使ったヤツは剣技の一種と言えばごまかしが効いただろうけど、魔法系のスキルは流石にごまかしが効かない。
「どどどどうやって呪文を唱えずに魔法を使ったんですか!? もしかしてそう言う未知の技術ですか!? それともマジックアイテムですか!?」
「何ってスキルに決まっているじゃありませんの。寧ろ呪文とは何ですの?」
「スキル!? 何ですかそれ、聞いた事もないですよ!? もしかして上位ランカーが秘匿しているレア情報ですか!?
」
危惧した通り、アートさんはスキルについてマシンガンのような勢いで質問を始める。
「スキルはスキルですわ。取得の方法は平民の子供でも知っているでしょう?」
「知りませんよ!?」
その後もアートさんはスキルの詳細な取得方法を尋ねる。
んー、まぁ良いか。
アートさんは仲間になったわけだし、隠していたとしてもそのうち彼女の目の前でスキルを使わざるを得ない事態は発生しただろう。
だったらあらかじめスキルについて明かしておいて、他の人には内緒にしておいてねって言い含めておけばいいよね。
「あっ、彼女の友達の精霊にも黙って貰うように言っておいた方が良いか。この世界の人間がどれくらい精霊と交流できるか分かんないし」
一部の人間だけの才能ならまだしも、不特定多数が精霊と交流できるとなるとそこからバレちゃう危険があるもんね。
うん、後で言い含めておこう。
だがその時の私は気づいていなかった。彼女が話しかけていた精霊が、世界中の画面の前に居る人間だったという事に……
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