転生ハイエルフの学園スローライフ ~超高濃度魔力で何でも楽々、今日も今日とて無能を頑張る~

かなきち

第0話 始まり始まり

「いくぞ、ぱんぴ~! ――《1000ぱんぴ~サウザンツ》!」


 魔法の発動、と同時。


 校庭に敷き詰められた土という土から、カボチャ頭のちっこい怪人が溢れかえる。

 その数、――1000!


 相対するのは、魔王ミノタウロス・グレート率いる、ミノタウロス軍団。

 その数、――300とちょっと。


 数の上では圧倒的有利。

 だが、質では比べようともない。圧倒的不利。


 事実、チビ怪人がスコップ片手に殺到しようと、ミノタウロスは歯牙にもかけない。


 戦斧をちょいと振るわれただけで、チビ怪人はあっさりと土塊に還る。


 チビ怪人にできたことといえば、スコップで一撃を入れられたか入れられないかくらい。


 ダメージ換算にすれは「1ダメージ」くらいだろうか。


 だが、それでいい。


 一人一撃。


 それが100人も集まれば立派な100ダメージだ。


 それを繰り返せばミノタウロスとて沈む。


 チビ怪人の人的被害を考慮しなければ、だが心配無用。


 チビ怪人の正体は、土の低級精霊だ。


 校庭に土がある限り、チビ怪人は無限に湧くし、無限に増える。


 一方のミノタウロス軍団は減る一方。


「――ぶふぉ!」


 おっとミノタウロス・グレートと目が合った。賢しい奴だ。


 ぼくが魔法の発生元であることに感づいたらしい。こちらに角を向けて向かってくる。


「くる、――です!」「ほわわわっ! ――くる、くるゾ!」


 雨合羽を着たチビ怪人と、綿飴みたいなツインテールのチビ怪人が身構える。

 雨合羽の方は、水の低級精霊で、綿飴の方は、火の低級精霊だ。


「春空、ご命令を」


 おまけにぼくの背後にはメイドさん。


 ……やれやれ。


 一週間前まで「無能オーク」なんて呼ばれて、学校階級の最底辺でぶひぶひやっていたぼくがハイエルフに転生して、まさか精霊とメイドさんを従えて魔王に挑むなんてね。


(どうしてこうなったのやら……)


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