第14話 完全に外堀を埋められつつある太郎(笑)
そんな次の日の午後である。
「モーターショーの期間中はお店を休んでそっちに行くから」
「え?」
「なによ、ショーで使用する衣装は総て私の所で用意するんだから当然【HANAKO】や【WAKANA】の宣伝にもなるでしょ♪だったら顔を出すに決まってるじゃないの」
「まぁ〜確かに道理ですよね」
そう言いながら自作したパンフの見本を太郎にチェックしてもらう為、第二営業部へ現れた冴子。
実はそうなのである。
今回モーターショーの企画会議の際、いくつか追加事項と訂正事項が出ていた。
先ずは…
【メーカーサイドから】
・当初予定していた外部から(主にコンパニオンガールやキャンペーンガール等)の人員を、今回総て排除する。
・各メーカーは、社員及び準社員・期間従業員から有志を募り今回の展示会に《老若男女共にコスプレをして》参加してもらい、接客業務に当たってもらう。
・展示会は金・土・日の三日間開催される為、勿論参加者は全員出社扱い、休日は出勤扱いとする。
・キッズコーナーを設置し、各メーカーやサークル参加者が持ち回りで見守りを行う。
次に…
【コスプレイベント及び展示会イベントサイドから】
・衣装に関しては持参される者も、希望があれば総て
【WAKANA】及び【HANAKO】が窓口となって手配する。
・コスプレイヤーやその他のコスプレした社員との写真撮影に関しては撮影会の時間を細かく設定し、商談に繋がる事例以外、必ず個人対個人の撮影にならない様に心掛ける。
・痛車の展示に関しては当初一箇所に纏めて展示する予定だったのを中止し、各メーカー毎ブースを設けて展示する。
※これに関しては何故か各メーカーのメカニックマンが妙に積極的に賛同していたらしい(汗)
つまり満場一致でノリノリだと言う事だ。
以上、他にも細かな修正や追加はあったもののこんな感じで収まっていた。
何だか、コスプレの件も痛車の件も各メーカーはこぞって食いついた様である。
特にコスプレに関しては何だかんだ言って、密かにやって見たかった人達が多かったのだろう…
※まぁ〜年配の男性達やお偉方達は(笑)
「それよりもこれ、うちの展示会用のパンフの見本、多分大丈夫だと思うけど今日中にチェックして連絡して」
「解りました、お預かりします」
そう言って立ち上がった太郎は彼女から見本を受け取った。
その時である。
改めて何時になく神妙な面持ちの冴子が太郎に話掛けてきた。
「それと…九月に《WORLD・Fashion・Contest》があるんだけど、今回最終選考会が日本で開催される事になっててね…二次審査までは華恋や他の皆も通ってるから気合入っててさ」
「え、凄い!年に一回しかない世界的なコンテストの最終選考に残っているんですか?」
「あら、ちゃんと勉強しているみたいね♡そうよ、だから応援してあげて♪特にあの娘、絶対喜ぶから」
太郎のその反応に笑顔を向ける冴子。
以前冴子が《勉強なさい》とアドバイスしていたのを太郎がちゃんと守っているのが嬉しかったのかもしれない。
「勿論応援します♪」
「ありがとう♪それじゃ〜ね」
太郎のその返事を聞いた冴子は、上機嫌で彼に礼を言うと、他の第二営業部の面々にも軽く会釈して颯爽と帰って行ったのだった。
すると…
「課長〜冴子さん随分友好的になってきましたね♪」
唐突に諸星がそんな事を言ってきた。
「え、何が?」
「華恋さんとの事ですよ(笑)課長ってば本当にこの手の事になると鈍いですね〜」
そんな諸星の言葉の真意を解りかねている太郎に向かって、今度は東が笑いながら補足していた。
「ちょ、ちょっと待って!一体なんの事さ(汗)彼女まだ19にもなっていないだろ!それにどれだけ歳か離れてると思ってんだよ」
「あら〜なに気付かないフリしてるんですか?どう見ても華恋さん課長にLOVEじゃないですか♡」
「え?」
言われて初めて気付いた太郎は、全身真っ赤になって思いっきりその言葉を否定したが、それを今度は北都が非難気味に否定し返した。
「全く…本当にこんな枯れオジの何処が良かったんですかね〜」
「ちょっと鬼無里本部長まで〜」
するといつの間にこの話の輪に加わっていたのか?
不意に鬼無里が太郎の背後に忍び寄り、そんなトドメの言葉を彼に突き立てた(笑)
「まぁ〜とにかく多少の犯罪性は感じますが、第二営業部全員応援してますから♡」
剛の《犯罪性》というその言葉が妙に引っ掛かる太郎…
しかし、おそらく確実にここにいる皆の総意である。
「ちなみに私と社長も応援してますよ♪特に社長なんて夫人に新しい着物仕立ててあげると約束されているそうですし…余程貴方からの仲人依頼、楽しみに待っていらっしゃる様ですよ♡」
「は?」
おっと!
ここにはいないが、猫丸社長公認らしい…
しかも思った以上に社長の中では話が飛躍している様だ(汗)
それを聞いた途端滝の様な冷や汗を流す太郎…
そこへ…
「課長も嫌いじゃないんでしょ?だったら変な言い訳作らずにちゃんと華恋さんと向き合ってもいいんじゃないですか?」
最後に妻帯者である早田のその言葉が、太郎の胸にグサリと刺さった。
特に《変な言い訳》というワードは、太郎にとっては的を得た言葉なのだろう…
「あ、そうだ♪君から結婚祝いにもらって玄関に飾ってある《子宝祈願の打ち出の小槌》の置物さ、結構ご利益があったから今度は私が贈ってあげるね♡それじゃ〜♪」
…贈ったんだ…
打ち出の小槌の置物…
しかも子宝祈願…
ちょっぴり意地悪気味なそんな言葉を残し、満面の笑顔で部長室に戻る鬼無里…
所で彼…
第二営業部に何か用があったのではないだろうか?
「ほ、本部長〜〜(涙)」
そんなツッコミを入れる事すら忘れている太郎は、無駄と知りつつ涙ながらに助けを求めたが…
…やっぱり無駄だろう(笑)
だって確実に彼の背中が笑ってるから♪
…続く…
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