2-30 カップル成立
あの騒ぎの後、学院は生徒と職員講師陣の安全確認で一日休校となった。
結論を言うと全員無事。
私はあの後、陛下と先生をそれぞれの体に戻して、普通に起きて出勤し学院の確認作業の手伝いに追われた。
先生も無事に目覚めたが非常に眠そうである。きっと陛下も同じだろう。3人とも夢の中での負傷だったので現実では怪我など何もない。
しいて言えば魔力が減っている為、寝不足の様な怠さが有る。
眠い……午後は生徒達の成績をまとめる作業の手伝いが有る。
休校だが学食だけは営業してくれた。午前中の確認が終りフラフラと学食に逃げてきた。そこにはチャトとルルもいて三人で昨日を振り返った。
「いや~貴重な体験しちゃったねぇ~。」
「ほんと、寿命が縮むかと思ったわよ。」
「マヤもお疲れ様だったね~。可哀そうにクマが……これあげるよ飲んで。」
そう言ってチャトはポーションをくれた。助かる……。私はお言葉に甘えてポーションをぐびぐびと飲む。
わちゃわちゃとしていた迷宮内の戦場で、彼女達には気づかれて居たようだ。黒い翼持ちは珍しい。ここに来てからはローブに隠れているから他の生徒は中々気付けないだろうが、彼女達の目は欺けなかった。
「謎は色々残るけど、よくやったわ。」
ルルもポーションをくれた。それもぐびぐびと頂く。その優しさで少し体が軽くなった。
「ごめんね、契約の関係で詳しく話せないんだ……話せるときが来たら。ちゃんと説明するね。でもまさかあんなことが出来るなんて思わなかった。このブローチすごいね。」
この可愛くて便利なブローチの作者、チャトはにっこりと笑って饒舌になる。
「でしょでしょ~?国内で魔力があれば通信できるようにしたんだよ~。あの空間でも使えるとは思わなかったけどね~。やっぱり宝石スライムの核は複雑な魔法式沢山書き込めるから便利だね。あら~!!お二人さん、僕が知らないアクセサリーが増えてますね~。」
私とルルさんはハッとする。目ざとい。チャトは最初の餌食を決める。
「ルル~!見せてよ~!!」
彼女胸元のネックレスをニヤリと見つめる。
「いや~綺麗だねこの石。あれ?この石と似た色の瞳最近見たな~あれ~?」
ネックレスの石は深い緑色ををしている。チャトは指先に魔法の光を灯しネックレスの石を照らすと、石の色が変わり赤紫へと変わった。
この石と同じ瞳は同期の彼しかいない。チャトは更に続ける。非常に楽しそうだ。
「このネックレス業物だね~。だれが作ったんだろう?あっ僕だ~。まぁ受け取ってつけているということは~?」
「―――!何?チャト!アンタが依頼受けて作ったの?―――ま、まぁ。最近彼の成長が目覚ましいから、付き合ってもいいかなって思って。でも私の方が魔法は強くなる予定だけどね!!」
おおおお!私とチャトは、ぱちぱちと拍手する。ルルアレックスおめでとう。末永くお幸せに。
「やったね~!!これでカップル成立80%だ。良かったね。幸せになるんだよ。さて次はマヤだ。どれどれ……。」
チャトさんは私の右手を取って指輪を観察する。手を上にあげたり角度を変えて入念に見る。その後思いもよらぬ反応を彼女は見せた。
「……わぁ。……これ教授が作った奴だ。あの教授、結婚前提の人しか依頼受けないし、近年はそもそも依頼受けないから……レアものだよ。」
チャトの眉間にしわがよる。首を傾げて悩んでいる。
「……でも何で魔除けの紋が入っているの?恋人向けにしては不思議……。」
「誰から貰ったのよ、その石の色……。」
求婚用のアクセサリーしか作らない人が魔除け?チャトもこの指輪の意味に悩んでいる様だ。
「おいマヤ。こんな所に居た。」
何でいつもこのタイミングなの?
昨日の事も思い出し、顔が赤くなるのを感じた。今日は朝から先生の顔を直視できないでいる。
チャトルルは指輪の石の色と先生の瞳の色を見比べて大きく納得する。
「「ああ……。」」
「おっと、もうそろそろお昼終休みが終わりだね。ルル行こうか~。マヤ、こればっかりは僕も分からないや~、ちゃんと聞くんだよ~。ごちそう様。お二人さん。」
「そうね。じゃあねマヤ。私達の事忘れたら嫌よ。」
ちょっと待って!私を置いて行かないで……裏切り者!!二人は風のように去って行った。
「チャトさん、ルルさんまたな。マヤどうしたんだ。顔赤いぞ?」
「だ、だって……指輪……。」
私はもごもごとして、両手で頬を覆う。
昨日と云い、この指輪と云い、そう考えてしまう。期待してしまう。
そんな私を見て、彼は私の隣に座り、目を見て静かに問いかけた。
「俺と一緒に居るの嫌か?」
「―――!……い、嫌じゃないです……。」
「なら良かった。採点と評価今日中に全部終わらせるぞ。明後日寮から出て行く。だから明日中に帰る準備しておいてくれ。」
そう言って、颯爽と学食を出て行ってしまった。……え?明後日引っ越すの?
こうして私の異世界学院生活は幕を閉じた。忙しくも楽しい学院生活が終った。
必死に仕事をこなし学院側に提出して、荷物をまとめた翌日には田舎町の魔法屋に戻るのであった。
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