2-24 聖女のお茶会
「マヤ! お久しぶり! もぅ! なかなか会いに来てくれないから忘れられたかと思っちゃうじゃない!?」
「ごめんね。こっち来てから慌ただしくて。」
「そう言えば、人間の姿では初めてね! 今日は楽しく夕飯でも食べましょう!」
王宮の一角に聖女が住まう塔がある。
輝くような白髪と慈愛に満ちた碧の目、透き通るような白い肌の彼女がこの塔の主であり聖女だ。
名前はリーリ。月の精のように儚く美しい女性だ。
彼女とは国王陛下救出作戦の時に仲良くなった。しかしその外見とは裏腹に、常人の倍以上の魔力を持ち合わせており、結界を張って居なかったら、そこらの魔道士が束になっても敵わないと陛下から聞いたのは秘密だ。
聖女の塔の応接室に通されそこで食事をすることに成った。
「マヤも学院に通っているんですって? 懐かしいわ~。」
「リーリも卒業生なの?」
「そうよ。二年前に卒業したのよ。そのあとはずっと王宮住まいだけどね。この時期だと、結星のプレゼントは……あら? 貰ったようね! 誰から貰ったの?」
彼女は私の右手を取り、指輪をじろじろと見る。人のコイバナほど楽しいものは無い。私もそうだもの。しかし、いざ自分の事となると、たじろいでしまう。
「そ、それは……秘密です。そうだ!この国で異性に指輪を贈る行為って何か意味が有るの?」
そう、これを聞きたかった。元居た世界では、好意を伝えたりプロポーズの時に送ったり……
「好意を伝える意味が多いわよ? あとは求婚とか。」
―――好意。求婚。先生の顔が頭を過ったので鼓動が早くなる。
水を飲み、一息つく。
「……そんな意味が……魔除けって言われて貰ったんだけど。」
「まぁ、魔除けといえば魔除けね。これを見たらお邪魔虫は来ないわ。……それ以外何も言われなかったの?」
「うん。」
「中々不器用な殿方ね。でも好意は有ると思うわ。それ以上は本人に聞かないとな~。そういえば……マヤの手って不思議ね? 魔力の密度が高いというか……力の通り方が違うのかしら?」
そう言って、また手を不思議そうに握るので有った。リーリのすべすべした手で触られるとなんか照れる。
楽しく談笑していた時だった。
窓から強い光が差し込んだ。私とリーリは窓から外を確認する。
「「何?」」
窓から光る物が見えた。
学院の方だ。二人で学院の方向を見ると学院を囲むように金色の光の壁がそびえたっていた。
屋根の上に居たモロが姿を現した。鋭い目つきで学院を睨む。
「よう、この感じ……妖精?」
「モロ? 悪いのだけど、偵察お願いできる? 結界には触れず見るだけでいいわ。」
「ああ、行ってくる。少し待っててくれ。」
モロは学院に向かて飛んで行った。10分後偵察を終えた彼が帰ってくる。
彼によれば金色の結界はやはり学院の敷地を囲っていて、結界内に人はいるが、皆一様に眠っているという事だ。そして普段いる筈の妖精がまったくおらずその代わりに強い妖精の気配が一つあると。
「学院の封印が解けたのかもしれない。封印の儀は明後日の予定だったけど……遅かった……。」
先々週、先生と潜入した地下迷宮の事だ。しかしあれは事件後結界を補強して儀式まで耐えられるようにしたって聞いたけど……
「リーリ、完全に地下迷宮の封印が解けるとどうなるの?」
「あの結界内に居る人の魂は迷宮に送り込まれて、迷宮の魔物に食べられてしまうわ……」
あの規模の学院だ、寮も有るしまだ居残っている人も多いはず。それに今日は結星の日で流星を見ていた者も多いだろう。
「リーリどうしよう中に先生や友達が……助けに行かないと……!」
「そうね……まず、国王陛下の元へ行きましょう。この件は彼なしでは治められない。」
私達は陛下の元へと急いで走った。
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