16 作戦会議(前編)

 どうやら私は丸2日眠っていたらしい。

 お茶を飲みながら、先生にリクサとナイトメアから襲撃しゅうげきを受けた時の事を話した。


 聖女の結界を破られた事。

 奴らは聖女様を狙っている事。

 国王陛下を操って世界を滅ぼそうと、している事。

 私も狙われている事。

 ナイトメアに瘴気を流されてダメージを受けた事。

 逆に私の生気でナイトメアがダメージを受けた事。


 神妙な顔をして悩んでいた先生だったが、それよりなにより気になってしまったらしい。


「所で、さっきからそこに居る妖精は何だ?」


 私の席の隣の椅子で眠っているモロを見ていた。

 疲れているのかすやすや寝ている。この姿の寝顔は可愛い。


「リクサに使役しえきされていたインキュバスです。私の夢に侵入してきたので、契約を外して捕まえました。」


 先生は、眉をピクリと動かした後、呆れたように言ってきた。


「また、さらっと物騒な事言うな・・・。そうか、そいつから情報を引き出そう。」


 確かに、夢の中でも色々喋っていたし。契約も切れたから、話してくれるだろう。

 私はモロの頭を優しくなでながら、彼にチャージした。人型に戻られてはたまらないので、少しだけ。


 モロがピクリと動き、瞼を開ける。目をぱちくりしながら周囲を見ていた。


「ここはどこだ?」

「私がお世話になっている家だよ。」


 先生は腕を組み、彼を睨みながら声をかけた。普段の先生より凄味が有り、緊張が走る。


「お前、契約から解放されたみたいだな?縛りも消えたから、色々話せるよな?」

 

 先生を見てモロは、息を吐き、真っ直ぐ先生を見つめて答えた。


「俺はモロだ。ああ構わない。」


 そして、詰問きつもんが始まる。


「使役されてから、王宮内に入ったか?」

「ああ、入った。俺は聖女の結界を透過できるから。城はリクサとナイトメアに憑かれた国王、あとは魔獣と瘴気で一杯だ。」


「奴らは何者だ?」

「リクサは実体のある人間だった。今は瘴気を使いすぎて魔獣に近い存在になっている。ナイトメアはそいつの使い魔だ。俺達と同じ夢に纏わる存在だ。」


「リクサは陛下にナイトメアを憑りつかせて何をするつもりだ?」

「王様を使って国を滅ぼさせるつもりだ。王に召喚魔法を使わせたらしい。ただ何を召喚したのかは分からん。」


「ちっ・・・お前とナイトメア以外に何か使役していたか?」

「いや、俺とナイトメア以外はいない。強いて言えば魔獣だけだ。」


「奴らはなぜあんなにも、魔獣や魔法を生み出せる?」

「リクサとナイトメアは瘴気の供給を受けている、だから魔獣も無尽蔵に生み出せる。だが供給量は一定のようだ。襲撃の前日から魔獣の生産を止めて力をストックしていた。マヤが聖女の夢に入ったのを確認してから、魔力を一気に放出して結界を壊した。マヤを見張って報告したのは俺だ。悪かった・・・すまない。」


 モロは私を見上げ謝罪した。使役されてたとはいえ思うところあったのだろう。私も魔獣を倒して浮かれていた。モロが見張り役だと気づけなかったのが悔しい。


「仕方ないよ。聖女様は無事だから許す。」


 今度は私が先生に今回の疑問を投げかける。


「先生、リクサに光の矢と槍が効かなかったのですが、効いても威力が落ちているんです。どうしてだと思いますか?」

「着弾するときに瘴気の盾を展開して相殺している可能性がある。瘴気の供給が無尽蔵ならできない話ではない。」


「ナイトメアに魔力を注がれたとき、酷くダメージを受けました・・・逆に私の生気を注いだら、ナイトメアは苦しみだして。これってどういう事ですか?」


「妖精の中には魔獣と同じく瘴気、死のエネルギーを用いて活動する種類が居る。サキュバスは生気、生のエネルギーを使って活動する。生と死で相反する力だからお互い毒になるんだ。」


 ナイトメアは生気を流し続ければ倒せるということか・・・。奴に生気を流している途中、王の精神から苦しくて抜け出していたので、王を助ける方法は見つかった。

 後はどうやって、瘴気と魔獣がうろつく城内に入り込むかだ・・・

 先生が、難しい顔をして言葉を絞り出す。


「もう一人協力者を仰ごう。」


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