第22話 遠い親戚のお寺へ 田舎の小娘編

当時、私は受験前の中学生でした


ウチのお父さんはリストラされてお酒飲んで、体を壊して入退中で

お母さんは昼間はスーパーのパート、夜もコンビニでパートをしていて朝方帰ってきます

家はかなりのド田舎にあるので、姉は市外の町の高校へ通っていて、学校の近くの学生寮みたいな所に住んでいました


ある熱帯夜の蒸し暑い夜に、網戸の外から

猫が鳴いてる気がして目が覚めました

猫を飼ってますが放し飼いでしたから、家に入れてと鳴いてるのかと


窓の方をぼんやりと眺めてたら体が動かない事に気付きました

ゾワゾワと嫌な予感がしました、金縛りになってしまったのです

瞬きしか出来なくて、そのままぼーっと窓を眺めてたら


ブー、ブー、ブー―…とスマホが鳴った


ゾクッ

眼の前のスマホ

明かるくデスプレイされた画面には非通知

心臓の音が跳ね上がりドクンドクンとうるさくなり、汗をジトッとかいてきた


金縛りで触れないのに勝手にスワイプされた


『ザー…ザー…サワサワサワサワ―…』


どこか外にいるような音が聞こえてきます、蝉の声とかカエルの声が聞こえる


ふいに網戸が気になり、スマホから視線を網戸にやる

私の部屋は一階で、窓から小さなウッドデッキ(縁側の事ですが何か?)に出れる用になっていた

網戸には申し訳程度のロックがかけてありました


そこに、ぼんやりと猫のようなシルエットが出てきて

その時は何となく、サスケ(※猫の事)が助けてくれる!とか考えていました


しかしおかしいのです。いつものうちの猫なら

開けてと言わんばかりに、にゃーと鳴いて網戸をガリガリするのです


しかし猫のシルエットはグニグニ、グネグネと大きくなり猫サイズから中型の柴犬くらいの大きさに

よくよく考えるとウチの猫は茶トラです

網戸の外のソレは黒っぽいグネグネするものです


その時、グネグネ動くモノが網戸にバンバンとはりつき


ギーッ…ギーッ…ギーギーー…


金縛りで動けなくて恐怖でしたが声にならない


すると隣の部屋からドンッ!

と壁ドンしたような音がした


ビックリして金縛りが溶けた

そして網戸の外にいたものも消えた

網戸は普段通り、元からあるウチの猫の引っ掻いたあとがあっただけ


隣の部屋を見に行くと

祖父母が生きていた頃にみんなで撮った旅行写真が壁から落ちていただけ。

ガラスでもないプラスチックの額だから割れてもないし、あのドンッて重みのある音の原因とは思えませんでしたが


「おばあちゃーん、おじいちゃん、ありがとう」

と写真を拝んでおきました


それから1、2日おきに同じことが起こるようになりました。

夜中に目が覚めて金縛り、黒いグネグネが網戸をギーギーする。

しっかりと窓を閉めて寝ても、夜中に目が覚めると網戸になってる事が続きました


夜が怖くなってなかなか寝付けなくなり寝不足が続きました

母からは夜ふかしするなと言われ

見たこともを説明するも、猫を見間違えたのだ、非通知着信なんて、何かのサイトをポチったのだろうと逆にと叱られました。


ですが、それも10日もたった頃には、なくなりました。

父が退院してきたのです

母がパートの日は、私は家で一人で寝てると言うのがストレスだったのかもしれません

それから、間もなく姉も夏休みで家に帰って来ました



退院後から父の様子が変なのです


いきなりウーウー唸り腕を伸ばした土下座みたいなポーズをとったり

話しかけてもボーッとしてて、鼻水が垂れていたり

何度もトイレに出入りしたりするのです

そしてお風呂に入らないので全身がとにかく臭いのです


そんな日が何日か続いていて、

ある日リビングで姉の笑い声が聞こえてきました


「早く来てー!ついにおトンがボケたわ!ヤバッ!」


ウチの家ではお父さんが飲んだくれなせいで、

ヒエラルキーが一番下でした。

実際穀潰しですし、姉はゴミを見るような目で凄くバカにしてました


私がお父さんを見てもいつも通りで「普通じゃない?」

と思っていたのですが


父「だから、喉渇いたから水持って来いって!!」


と怒鳴りました

テーブルには水の入ったコップがあります


姉「なぁ?やばくね?」


父は姉に言っても駄目だと思ったのか私に言いました

父「水!みーず!水!」


私は意味がわからなくて

水道水を入れ替えて父の前に置きました


父「空じゃないか!水!」


今度は大きめのグラスに嫌がらせの様になみなみ注ぎますが、コップを見てお父さんは


父「水!みーずみーずみーず!喉が渇いた!!

なんで持ってこんの!!」

って叫んでテーブルをドンとたたいた


「は?!お茶がいいの?」


って言い返したけど、それも分かってないのか、ずっと怒っていました

だから無視して自分の部屋に戻ったけど、それから何時間も喚いてる声が聞こえてきました


流石にちょっとヤバいと思ったけど、私に出来ることはお母さんがパートから帰ってきたら知らせるくらいです


そして、部屋で横になってたらいつの間にか寝てたらしく、汗をかいて夕方頃にぼんやり目が冷めました

ハッ!っと目を開いたら、お父さんが立ったまま枕元からジーっと私を見下ろしてきた


瞬きもせずに見てきて凄く怖かったです


「キャー!?」って声が出ちゃったけど

お姉ちゃんは、でかけてるのかいなくて誰も出てこなかった


しかも、お父さんは私を見てるはずなのに

どこを見てるか分からない感じだった


それから更にお父さんの気味悪い行動は続きました

いきなり

「おーい!おい!ちょっと来てみろ!」


何事かと思ったら、缶ジュースの蓋があかないと喚いてたみたいでした

プルタブをプシュッとしてあげたけど別に特別かたくもありません


一口二口飲んだらプーッとその場に吐いた

父「ブッ、オエッ虫だ、虫、虫!オエッ、ゴホッゴホッ」


「ちょっと、お父さん?!何やってんの!?虫?はぁ?何が?」


お父さんは缶の飲み口を下にしてジャバジャバやって中身をこぼしだして、虫が、虫が、と騒ぐ。


私は唖然として見てたけど

床がベチャベチャになり、父がその上をバチャバチャと歩きまわりハッとなって

父から缶を取り上げるとテーブルに置いて

急いで雑巾を取ってきて拭きました


父「虫だ、ホラッ!虫が!虫だ!」


「はぁ?何が?もうあっち行ってよ!」


父にタオルを投げつけて風呂で足を洗うように言いました

父はまるで虫を避けるような仕草をしながらフラフラ歩いて行きました


お父さんはお風呂に入らないせいで臭いからもう近づきたくありません


そして、パートから帰ってきた母に今日あったことを説明しました

「お父さんヤバイよ、病院連れてった方がいいよ」


母「お酒飲んでたんじゃない?

まだ隠してたのか買ってきたのか…ハァ」


姉「酔っぱらってたのか分からないけど、臭くて近寄れないから世話できない」


母「来週、休み貰ってくるわ」


母も渋々と言ったように話を終わらせました。


その夜、母がパートに出たあとで今までより酷い事がおこりました


夜、父が和室で静かにテレビ見ていたら

「ギャァァァ!腕がァァ!」


驚いて姉と見に行ってみると

父の腕は何もなってないのですが、痛い痛いと叫びます


部屋から動物園のような、ウサギ小屋のようなあの臭い匂いが漂ってきます

姉と顔をしかめて部屋から出ました。

氷のうや湿布薬を持ってきて部屋に置いて、私達は退散しました


しばらくして静かになったので、私達は放置して各自の部屋に戻りました。


寝苦しい夜中にまた目が冷めました

寝る前に確かに窓をしめて鍵をかけたはずなのに、網戸になっていて

ギーギーっと網戸をこする音がするのです


その日は曇っていました。

反射するだけの町の光がないので、ドのつく田舎の曇は本当に真っ暗なのです


そして、月明かりもない暗闇の網戸の外側に何かいるのです


それは「あ゙ぁ゙ー…ゔー…」と唸っていました


私はギョッとしました

それは小型犬の大きさではありませんでした


その時、雲がゴロゴロと稲光をして一瞬だけ姿が見えました

なんと窓の外にお父さんが白目で四つん這いになって、網戸を開けようとこすっていたのです

網戸のロックが外れないのかギーギーとこすり続けていました


声も出ないほど驚きました

微かに何か言ってると思って、よく聞いてみたら

「あ゙けろ…あ゙けろ…」と聞こえてきます


「キャー!!お姉ちゃーん!お姉ちゃん!うぇーんお父さんがァァ」


姉も部屋から飛び出してきてくれたのですが

父は突然「あ゙ぁ゙ーぁあ゙ぁ゙ー」と叫びながら

家の周りをグルグル走り出したのです


雲がゴロゴロと鳴り、父の異様な姿を照らし出します。

パジャマもはだけて裸足で走ってる父の顔は、涎を垂らし、目は白目でとても怖かった。


そして、ついに雨がザァーザァーと降り出しました

未だに家の周りをバシャバシャと走り回る音に

姉と2人で恐怖に震えていましたが、ドシャッと倒れた音がしました。


それからカッパを着て、家の周りを見に行くと

雨の中で倒れて動かない父を見つけました。

2人で引きずって家に入れて、

お母さんが帰って来るまで縛ってた方がいいのかな?って話してとりあえずタオルで拭いて、濡れた服を剥ぎ取ってパンツ1枚にして布団に転がしてタオルケットをかけました

夏で良かったです


お母さんが帰ってくるまで様子を見ようとリビングに2人で待つことにしました。

それから、雨が上がって明るくなり始めた朝方にお母さんが帰ってきて、夜中の恐怖を報告しました


すると、お母さんは病院じゃなくてお祓いをすると言うのです


母「職場に見えるって人がいて、家に何か憑いてるからお祓いしたほうがいいって言うの…。

最初は信じられなかったけど、おじいちゃんとおばあちゃんが死んでる事も言い当てられたし

娘のどっちかが次に憑かれるって言うのよ…何だか気持ち悪くて」



来週、おばあちゃんの遠い親戚のお寺でお祓いの予約をしたようです

その日までとりあえずお母さんは仕事を休んでくれました。


それから数日、毎晩同じことがおこり

母親は始めて目の当たりにして驚愕していました


父は昼間はボーッとしてるだけで特におかしなところはなく、受け答えも寝起き程度には返してくれます


予約の日になり、県外のお寺に向かいます

お母さんも私達も夜中ほとんど寝れてなくて疲れていて、お父さんが暴れたら嫌だなぁと思っていました


姉「こっちは夜中寝てないんだから大人しくしろよ!」

車の後部座席にお父さんと一緒に乗ったお姉ちゃんが嫌そうな顔で言った。


私は助手席に座れるから良かったと思ってしまった

意外にもお父さんは大人しくしていた。

車に乗ってる間も「あ゙ぁ゙ー」とたまに唸ってただけで暴れなかった


高速に乗って3時間くらい?

街中のお寺に車が入っていきました。


お寺のには緑がたくさんあり、砂利じゃないアスファルトの綺麗な駐車場に入りました


境内に入るとボケッとしてるだけで暴れなかった父が急にシャキッとしてきました


父「汚れてる!汚い!掃除しろ!」


姉「どこが?ゴミ1つ無い綺麗な駐車場じゃん?」


私も母も何のことからわかりませんが

父がしきりに掃除しろというのです


駐車場でもたついてると、おばあさんが出てきました

「予約の吉岡さんですね?

あらぁこれは…詳しいお話は中で聞きますからこちらへどうぞ」


父「汚い!こんな所は嫌だ!掃除しろ!」


父が何を言おうとも、お婆さんは慣れてるように

「はいはい、わかりました」と言って父だけ別の場所に連れて行かれました。


私達は応接間に通されて

お寺なのにと言うと失礼になるかもしれませんが、紅茶とフィナンシェが出てきました

ゆっくり紅茶を飲むなんて久しぶりでした


母「ウゥゥ…」


ホッとしたのか、母が泣き出してしまいました

お姉ちゃんと2人で今まであったことをお婆さんに話したのしたのですが


お婆さんが私を見て

「網戸を開けてたら危なかったわね…」と言ったので驚きました。


お母さんとお姉ちゃんには、初日に気のせいだと言われて以来言ってなかった、いえ

言えなかった網戸を開けようとする黒い影の事や電話がかかってきたことも言い当てられました。


私も何だかホッとしたのか

母にもどうにも出来ない事をどうにかしてくれると思って涙が出てきました


お婆さん「怖かったでしょ…お嬢さんのお祖父さんとお祖母さんが網戸を開けないように押えていたのよ」


祖父母の写真が落ちていた事を思い出して、また涙が止まりませんでした


そしてしばらくお婆さんと話してると

法衣を着た住職のお爺さんが来て

「山の寺はどうなってる?」と聞かれました


どういう事かと私もお姉ちゃんもわかりませんでしたが

どうも、曽祖父母のその親の代でお寺を廃寺にしてしまってるようでした。


こちらのお寺とは宗派?が違うようで、大昔にこちらから嫁いだか

こちらに嫁いだかした方がいたようです


その親戚付き合いも年賀状だけの付き合いでしたが、祖母の代で終わっていたようです


母が昔見た年賀状を探し出してこちらに連絡したようでした


母は嫁いだ時にその山奥の寺のことを何となく聞いたことがあるようでした。

曽祖父母の親の代まで山の中のお寺や付近に人が住んでいたようです。


私達は福井の恐竜の化石が有名な所に住んでいますが、ご先祖様?は

昔はもっと山の中にいたようです

過疎化が進んで、二束三文で山ごと売って寺を捨てて町に降りてきて今の家を建てたみたいです

その町もだいぶ過疎化が進んでいますが


こちらの住職の霊視?見立てでは

なんと先祖代々の墓が、まさかの置きっぱなしだったようです


その話を聞いたお姉ちゃんが叫びました

「おじいちゃんおばあちゃん!死ぬ前に言ってくれよぉ!ってか自分らの代で何とかしといてよぉ!」


お婆さんがお姉ちゃんを落ち着かせて

「全く関係ないとは言えないけど、知った所でお嬢さん達には山の中のお墓なんてどうにも出来ないのにね」と慰めてくれました


が、しかし、その後に続く言葉に私は動揺を隠せませんでした


「もう悪いものになりかけていたのね、一番若い娘の所に来てどうするつもりだったのかしら?

まぁ何にせよ連れて行かれる前で良かったわ」


私が狙われていたようです

ガタガタ震えてお母さんにしがみついてしまいました


その後、親戚のよしみと言うか

寺が廃寺になったのにほったらかしなど、住職の沽券?矜持?に関わるのか

料金などは取らずにお祓いしてくれると言う話になりました

一晩このお寺にお世話になります


大きなお寺の社務所兼住居に案内されて

和室の1つでお母さんとお姉ちゃんと3人で寝ることになりました

お父さんは一晩かけてお祓いの続きをすると言っていました

説明が専門的で難しくて…お教を上げて離れてもらうらしいです

その後私たちにつかないようにしてくれるようでした


夕食を家の人達と一緒に取りました。

こちらの家族は祖父母、両親、

そして寺の跡取りの孫のお兄さんがとっても格好よくて、いつも荒っぽい話し方のお姉ちゃんが照れて女の子になっていました


その夜に変な夢を見ました

放置された寺とお墓がゆっくり朽ちていく…そんな夢でした


お寺の境内にお墓があったのですが

人の住まない家は荒れるといいますが壁は崩れて屋根も半分落ちていました

お供え物の缶ジュースが腐って虫が湧いたり

墓石は割れて苔や草がからみつき、寂しい場所でした

お寺が結界?のようになっていて出られないのです

悲しみ恨みが溜まって淀んでいきます


私は息苦しくなって目が覚めました


トイレに行くとリビングが明るく、こちらのお兄さんがいました。

夕食のときに、こんばんわしか話して下さらなかったのですが


お兄さん「寝れないの?」


おっと、話しかけて下さいました。

そして夜中ですがクッキーの缶をだして下さいました。


お兄さん「喉が乾くだろ?」


そうなのです、今年の夏は喉が乾きます

缶のオレンジジュースをだして下さいました…

普通のオレンジジュースでしたがすごく美味しかったのを覚えてます

飲んだら寝るように言われてお兄さんは部屋に帰っていきました

もうすぐ19歳とか聞いています

お姉ちゃんの2つ上です


翌朝、目が覚めたときに久しぶりにとてもスッキリしていました

お寺のリラックス効果でしょうか


母「やっぱりエアコンあると寝やすいわ…」

姉「扇風機地獄はやっぱ死ぬって!うちも新しいの買ってよ!」


朝食前にお寺のお勤めに呼ばれましたが、お兄さんはいらっしゃいませんでした

昨日のお礼を言おうと思ったのですが残念です


そして一晩でずいぶんと憔悴した父が来て

「すまなかった…」と泣いていました


一晩かけてお教を上げてくださったのです

昨晩も寝るときまでお教が聞こえてきたのは覚えてますが、夜中起きた時はもう聞こえてませんでした

父に何があったのかわかりませんが

意識がしっかりしている父を見て母は泣いていました


そして朝食後、住職のお爺さんが色々と話してくださって

福井の廃寺でご先祖様の供養をしてくださる事になりました。


お婆さんとおばさんが見送って下さったのですが、お兄さんには最後まで会えませんでした。

お姉ちゃんも残念がっていました


住職のお爺さんとその息子(40代くらい?)が車に乗って福井までついてきて

私とお姉ちゃんは家にお留守番して、両親と山に入っていきました


昼過ぎに山に入って行って夕方頃に帰ってきました

何をどうしたのかは説明されましたがよくわかりませんでしたが、住職のお爺さんがご先祖様を供養してくださったようです



後でお母さんに聞いた話ですが

半壊したお寺の敷地内にあったお墓のほとんどが石が割れていたり、雑草ぼうぼうで

お供え物の残骸がボロボロになっていたり

ワンカップみたいな瓶の中に水がたまり緑色になって虫が湧いていたようです


夢に見たお墓の様子に似ていて背筋が寒くなりました


戦時中の疎開先の1つのお寺だだたようです。

街から流れてきた人間がそのお寺まで来たらしいです。

元々閉鎖的な村の人間は畑をたくさん持っていたのに、都会から来た人間に施しをせず

金品と物々交換で野菜を売っていたようでした

涸れ井戸があったことから、川の生水を沢山飲めないので喉が乾いていたのだろうと話していました。


それからお父さんは少し入院しましたが

新しい仕事が見つかってお母さんが深夜のパートから開放されました


お母さんのほうが限界が近かったようでした


お寺で、住職のお爺さんがお教のあとで、説教をしたらしいです。

お教は30分程度でしたが、その後の説教が3時間も続いたようでした

お父さんはたっぷり絞られて反省し、近い将来一家離散することになると脅してくださったようでした。

一家離散すると最初に道連れにされるのは父で、次は若い私とお姉ちゃんだったようです

母は嫁に来た立場です

実家のご縁が強いので、よほどじゃないと連れて行かれることはないとのことでした。

お母さんの方のご先祖様がしっかりしていて、嫁いでも守ってもらってるようでした。


私とお姉ちゃんはお父さんの方の縁が強いのだとか…ちょっとショックです

でも、だからお母さんが最後まで気づかなかったのですね



あれから半年

私は無事に高校受験に受かり、お姉ちゃんとは別の高校へ進学しました

お父さんが働いてくれるので私も格安ですが、街の学生寮に入れました


お姉ちゃんはお兄さんに一目惚れしていて、来年の大学受験にお兄さんのお寺の近くの大学へ行くと勉強とアルバイトを頑張っています


あんなイケメンのお兄さんと田舎のヤンキーの姉が釣り合うと思いませんが、表向き応援しています


今回の事で年賀状の付き合いをまた始めたようです

春休みに一度、お姉ちゃんとお寺に遊びに行ったのですが、お兄さんは京都のお寺に修業中で会えませんでした

気合い入れて化粧して、お洒落な服を着ていったお姉ちゃんはすごく殘念がっていました

それからお姉ちゃんの志望大学を見学して帰ってきました

都会の人はお洒落でみんな可愛くて羨ましいです




以下ナオ視点―…


祖母「吉岡さんの所のお嬢さん達がゴールデンウイークにこっちに泊まりたいのですって…

遠いとは言え親戚だけど、こうしょっちゅう来られてもねぇ

あの子たちナオが目当てよきっと、マイちゃんに悪いわ」


母「あぁ、福井の吉岡さん…

早朝に寺の掃除をさせたら来なくなるかしら?」


カズキ「え?どちらさんです?

女子高生が泊まりに来るんですか?へぇー」


祖母「…カズキくんがいるから断ったわよ?

部屋はまだあるけど、若い男女が同じ屋根の下に泊まるのもねぇ?」


カズキ「あ、ハイっす」


ナオ「は?吉岡?誰だっけ?」


母「ほら、夏休みに来た福井の一家よ」


祖母「廃寺のアレよ、痺れを切らしてたじゃない?」


ナオ「あぁ、廃寺の末裔を取り殺しにかかってた怨念のアレなあの田舎娘か」


カズキ「あっ、その顔でなんかどんな感じの子かわかった…素朴な感じのコ?

ナオ辛口やな、マイちゃんを基準にしすぎちゃう?」


母「田舎のヤンキーみたいな長女と小麦色の妹さんだったわよね」


カズキ「なんかわかったッス」


祖母「ほら、翌朝マイちゃんが来たから綺麗サッパリいなくなったじゃない?

お祖父ちゃんが責任感じて福井まで行ったのに、本当にいなくなってたって」


ナオ「元々最後っ屁みたいなもんだったし、子孫に祟るなんて消滅しても文句言えないよ

一晩中俺の部屋の窓をコツコツ叩いて、いい加減うるさかったしな

さっさと成仏させなかった祖父さんが悪い」


カズキ「ヒデェ」


あの時はまだマイと付き合う前で、バイトが休みなら朝から海に行こうって誘ったんだ

ちょうど休みだったから、マイが朝早く来て

守護霊アレがゴミ掃除した

近場の海に行って、ついでに海岸のゴミ掃除もしたんだっけか

俺は浮き輪に乗って、押して泳ぐ水着のマイを眺めてた(※パーカー着てた)

今年の夏は可愛い水着を買ってやろう、一緒に買いに行かないとな…ムフフ

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