探偵社と大晦日

梛狐

探偵社と大晦日

降誕祭は終わり、街中は年末に向けて大忙しだ。

此処、探偵社も年末に向けて皆頑張っている。

「敦、其の資料を此方に運んでくれ」 

「はーい!分かりました!」

僕、中島敦は国木田さんに言われた大量の資料を運んだ。

今は皆で大掃除をしている。

「敦、ありがとう。自分の作業に戻ってくれて大丈夫だ」

「分かりました、また何かあれば呼んでください」

そう言って、僕は自分の作業である窓拭きに戻った。

一緒に作業している谷崎さんが声を掛けてくれた。

「本当に今年も大変だったよね。結構一杯まで依頼があったし」

「そうですよね……」

「そういえば、太宰さんは何処に?」

「あっ……太宰さんなら……」

そう言いかけると突然国木田さんが少し怒ったように言った。

「あの野郎……こんな忙しい時に何処へ行った?」

「それなら『直ぐに戻ってくるよ』と言って、何処かへ出掛けましたよ」

「一体何処へ……」

「ただいま」

太宰さんが帰ってきた。

「太宰さん、お帰りなさい。一体何処へ行かれていたのですか?」

僕は不思議に思い、太宰さんに聞いた。

すると太宰さんはなんか嬉しそうに答えた。

「一寸ね……大切な友達の処へ今年最後の挨拶に行ってたんだよ、あとは少し寄る処があったんだけどね」

「まぁ良い……其れより、この資料を手伝ってくれ」

「分かったよ、国木田君。却説、私も頑張りますか」

そして、太宰さんにも手伝ってもらえたお蔭もあり大掃除が進んだ。


大掃除が終わり、一段落がついた。

すると朝から出かけていた社長が戻ってきて皆に言った。

「皆お疲れ様。私も一緒にできたら良かったが予定があって出ていた。すまなかった……。お詫びに皆で和菓子を食べてくれ」

何処かで買ってきてくれたお饅頭を頂き、皆口々に社長にお礼を言った。

「大掃除お疲れ様。今年も皆お世話になった、ありがとう。また探偵社員としての業務も頑張ってくれてありがとう。本当にお疲れ様。来年も大変な年になるかもしれないが、皆の力を貸してほしい。よろしくお願いします」

社長はそう言うと深々と頭を下げた。

国木田さんが慌てて言った。

「社長、顔を上げてください。それは私達社員もです。お互い様です。勿論今年もこれからも頑張っていきます。私達の方こそ、よろしくお願いします」

そして皆で笑いあった。

突然太宰さんが言った。

「出しそびれるのは厭なので、最後の仕上げとして……はい!」

そう言って、太宰さんが飾ったのは『葉牡丹の寄せ植え』だ。

紅白になっていて素敵な寄せ植えになっている。

国木田さんが太宰さんに言った。

「貴様、これを買いに行ってたのか?」

「そうだよ、折角の年末を皆で迎えられたんだ。『祝福』しようじゃないか」

「まぁ……確かにそうだな」

「そうか……太宰ありがとうな」

社長も皆も嬉しそうだ。

勿論僕もだ。

今年も無事迎えられて良かった。

また来年も皆と一緒に無事に迎えられたらと思っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

探偵社と大晦日 梛狐 @nkao5121

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ