バイトテロ
山羊
プロローグ
「や、やめてよ」
狭い村社会に閉じ込められた店内に響く僕の声は、外の現実社会に届かない。
「いいからやれよ」
無機質なカメラのレンズを監視する。
ポケットサイズの現代の合法兵器…スマホ。
兵器を僕に向けて高笑いをする男。
「有名になりたいんだろ?俺がプロデュースしてやるからよ」
男の歪みきった顔とただ兵器として使われる無感情なスマホのレンズの光景を僕は忘れないだろう。
手に持った醤油差しを僕は口元に近づける。
男のニヤケ顔は更に増した。
「はい!ペーロペロ!ペーロペロ!」
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ
…
僕の中で何かが弾けたのかもしれない。
これで開放される。
そんな叶わぬ願望の末に。
僕は‥
「やめろよ!!」
僕にとっての神の声が聞こえた。
「ちっ!萎えた」
スマホを持つ男は舌打ちをしてスマホをポケットにしまった。
僕は、神を見た。
とても力強い眼差し。
神に救われた。
目から涙が止まらなかった。
「大丈夫か?」
神の差し伸べた手を僕は握った。
いつの間にか悪魔は消えていた。
ああ…これで僕に平穏な毎日が戻るのかな。
そう願っていた。
*
ああぁぁぁっ!!うぜえぇぇぇっ!
偽善振りかざしてんじゃねえぞ!!
ああ。うぜえ。
スマホを壊れそうなぐらいに強く握りしめ、悪魔は鬼形相をする。
つづく
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