好きな幼馴染が女の子好きだと知った僕は...

みたくししょー

#01 バレた... 琴音side

私ーー北波きたなみ琴音ことねには、誰にも言えない秘密がある

家族にも、そして、幼馴染にも言ったことがない。

それは、女の子が好きだということ。


これを言えば、絶対に距離を取られるとわかっているから、絶対にバラすことはできない。


だから、私のこの欲望を少しでも抑えるために、2次元に走った。

2次元なら、いくらでも私の欲望を受け止めてくれる。

それに、家には、親にも内緒でこっそり買った百合の本がたくさんある。


だから、私はまだ大丈夫。



♢♢♢



「凛おはよ!」

「あ、琴音ちゃんおはよう!」


彼は、幼馴染の夢見ゆめみりん

お母さん同士が学生時代からの付き合いで幼馴染になった。


「もうすぐテストだねー、私大丈夫かな...」

「そうだねー、またどちらかの家で勉強する?」

「あ、それいいね!今日の放課後私の家でやろうよ!」

「うん!いいよ!」


凛はめちゃくちゃ頭が良くて、いつもテストの前になると、私か凛の家で凛に勉強を教えてもらっている。

私は頭いいのかって?

私は、平均くらいだよ。

でも、凛と同じ大学に行きたいから、頑張って勉強している。


そんな話をしながら、登校している。


とその時、私がちらちらと凛の顔を見つめているのに気づいたのか凛が


「...」

「どうかしたの?僕の顔に何かついてるの?」

「ううん、なんでもない。ただ今日も凛は可愛いなあって」

「なっ!またそれ?僕は可愛いよりかっこいいがいいんだけど...」


そう、凛は男子にしては小柄で華奢な体型をしている。

その上、顔は凛のお母さん譲りで結構可愛い。

まあ、本人はかっこいい方がいいみたいだけど。


「そのままでも全然いいのに...」

「僕が良くないの!」

「はいはい、そうだねー」


こんな感じでいつもの会話をしながら、凛の頭を撫でると


「えへへ」


こんなふうに、凛は嬉しそうに目を窄める。

もうこれはどこからどう見ても男の子に見えるわけがないのにね。


そんなこんな、学校に着いて、あまり気が進まないなか、授業を受けてお昼休憩になった。

私も凛もお弁当だから、凛の席に行って、一緒にお昼を食べた。


実は、運がいいのか、小学校から高2の今まで、違うクラスになったことがなく、ずっと同じクラスになっている。

すごい偶然だよね。


「ふぁぁぁ」

「琴音ちゃん眠そうだけど大丈夫?」

「...うん、ちょっと眠いけど、午後はなんとか耐え切るよ...」

「ちゃんと昨日寝たの?」

「勉強して本読んでたらちょっと遅くなったかも...」

「ちゃんと寝なきゃ体に悪いからちゃんと寝てね?」

「凛は私のお母さんか」

「お母さんじゃないよ!」


実際は、今日の予習をした後、百合の漫画を読んでたんだけど、流石にそこの部分は話せないからね。

しかも、お母さんみたいに私の心配をしてくれる凛に思わずツッコミを入れてしまった。


「ほら今日も放課後琴音ちゃんの家で勉強するんだから頑張ろうね!」

「うん...わかった...」



♢♢♢



放課後も、一緒に私の家に来た。

私とりんの家は歩いて5分もかからない程度しか離れていないから、直接来ても問題ない。


「お邪魔します〜」

「いらっしゃい。飲み物持って行くから先に部屋に上がっておいて」

「わかった」


何度来たか数えられないくらい、お互いの部屋に上がっているから場所もわかっている。

私の家に来る時は、私が飲み物を用意して、先に凛を部屋に入れる。

凛の家に行く時は配役がその逆になるだけ。


私は、台所に寄って冷蔵庫の中に入れておいたペットボトルのオレンジジュースを2本持って自分の部屋に向かった。


「お待たせー、ジュース持ってきたよー」

「あ、ありがとう...」

「...?」


さっきまでとは違って、凛がどこと無く挙動不審になっている。


「あ...あの、琴音ちゃんこれ...」

「...あ...あ、こ...これ、どこで」

「えっと、ちゃぶ台の上に...置いてあったよ?」

「うそ...あぁぁ」


凛から渡されたのは、昨日の夜読んでいた百合漫画だった。

なんで、片付けたはず...いや、朝寝坊して、遅刻しそうだったから片付け忘れたのか...


でも最悪。

一番バレたくない人にバレてしまった。

失望される。

敬遠される。


そう、負の感情が頭の中をぐるぐる回っていた。

気づいたら、凛から漫画を奪い取って、自分の胸に抱えたまま後ろを向いて蹲っていた。


「え...っと、琴音ちゃん?とりあえず片付けて勉強しよ?」


そうやって、優しい声で凛が話しかけてくれるけど、今は凛の顔を見るのが怖かった。


「ね...ねぇ...凛」

「どうしたの?」

「私って...変だよね...?」

「そんなことないよ!」

「でも私...」

「琴音ちゃんはただ可愛い女の子が好きなだけでしょ?」

「...うん」

「それを僕は...否定するつもりはないよ」

「凛...」


一瞬凛は悲しそうな顔をしたような気がしたが、凛に嫌われなかった、受け入れてもらえたという安心感から、私が気づくことはなかった。


「ほら、勉強しないとまた成績下がるから、今日の分の勉強やっちゃおう?ね?」

「...うん、ありがとう」


その後は何事もなかったように、凛は私に勉強を教えてくれた。



♢♢♢



「次はバレないようにしないと...」


凛や、凛の家族以外の学校の友達を家に招く予定はないからいいけど、親にはバレないようにちゃんと確認しなきゃ。

確認場所も再確認したし、もう1回気を引き締めた。


「でも、今日の凛なんか変だったなぁ...」


私に教えてくれているときもどことなく別のことを考えているような気がした。

でもそれは、私に対する拒絶感とかじゃなくてもっと別のことのような...


明日から凛の態度が変わるのではないかとか不安なことはあるけど、まさか、あんなことが起こるなんて今の私には、予想することすらできなかった。



ーーーーーーーーーー

あとがき


新作の短編作品になります!

10話完結の作品になるのでぜひお楽しみください!



お読みいただきありがとうございます!



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