-悪役転生-もしもヴィランとバレてしまったら死刑確定のため、正体を隠して学園に入学

宮川祭

第1話 ヴィランに転生

 女神から【チート】や【ユニークスキル】をもらって異世界転生をする。というのが流行っているようだ。


 女神によって転生され森で目覚めた主人公は、急に悲鳴が聞こえるとなぜか助けに向かう。そこで女の子【ヒロイン】が魔物の一撃で死にそうなところを片手で受け止めて主人公がその魔物を倒して助ける。という展開。しかし俺の場合、女神というのは現れなかったようだ。なぜならば、俺の目の前にいるのは悪魔神あくましんだからだ。


 悪魔神が言うには、俺は前世で酷いことをしたという理由で女神コースではなく悪魔神コースになってしまったという。悪魔神コースになったという俺の罪を聞いてみたところ漆黒の影のような悪魔神は答える。



「電柱に自分が食べたガムをつける罪」


「飲み終わったペットボトルを茂みの中に捨てて隠す罪」


「小学生か!」


 思わず突っ込みを入れたくなるほど小学生がやりそうな罪だけど、実際、三十歳を過ぎて二つの罪をやっていないのかと言われると首を横に振るしかないのだけれど。その結果として悪魔神に、俺の前世の身体を人質に取られているため、今俺は、魂。どういうことかというと人魂の状態となっているということだ。


「前世の身体を返してほしければ~そうだな?チャンスをやろう。悪魔神の契約を交わそうではないか。お前を悪役転生ヴィランてんせいさせてやる。追加として学園内で,もしも隠蔽した正体が悪役だと他の誰かにわかってしまった場合、即刻死刑確定。」



「嘘だろ。なあ?嘘だと言ってくれ」


 ♢ ♢ ♢ 


 高山悠人は亡くなった。その理由は、ブラック企業で働いて疲れていたので、明かりもつけずに部屋に向かった。暗くて何も見えなかった俺は、置いてあったタンスの角に足をぶつけたことで、倒れこんだその結果、キッチンの壁に衝突し、棚の上にあった圧力鍋が運悪く頭に落下して亡くなった。ということを悪魔神は言っていた。


 結果的に転生した俺は、悪魔神の契約により偽装の貴族として登録されている。名前も出身地もすべてが嘘。ステータスも悪魔的にぶっ壊れている。


 まさにチートだ。


 悪魔神の高度な隠蔽能力により学生証のステータスはこの国では平均以下となっているようだ。悪役ヴィランになった俺には悪魔神と交わした「学園を支配する」という契約上、女神の邪魔をしなければならないことになってしまった。この場合「学園を救う。」というのが目的の女神の考え方がどうして気に入らないらしい悪魔神様は、激おこのようだ。


 激おこの悪魔神は、俺の魂をこの世界にボーリング玉のように投げる。

 ふと目を覚まし転生した俺は、貴族「嘘」として、馬車に乗っていた。馬車も本物ではない。これは幻影による魔法の一つ。これはから学園に向かうようだ。最初から女神の邪魔をしたいのか森へのテレポートは省いてくれたようだ。



 俺は、街の建物や歩いている人びとを馬車の中から覗く。この世界は、俺のやっていたゲームの世界に似ているように感じる。「学園ファンタジズム」というアクション恋愛RPGゲームだ。悪の手先から学園を救うという貴族の物語。そのゲーム開始時に隠しコマンド「ABB右左」と入力すると、偽貴族の主人公「アズマ・ザクロズ」のシークレットルートが解放されたはずだ。窓から見える俺の顔は、「アズマ・ザクロズ」本人のようだ。もしも本人であるのならば、声優の声で話せるはず。つまり、イケボだ。試しに誰もいないので、発声練習してみることにした。


「あいうえお」


 ショックなことに前世の俺の声だった。声だけ暗いやつと判断されるのは、腹立つことだ。ブラック企業で働いていたときも声低くて、何度も怒鳴られた。「うん?もう一回いい」と何回、言わされただろう。その結果として、暗い男認定されたのを思い出してしまった。


 俺の前世の肉体によりも若さというエネルギーが満ち溢れているようだ。窓に映る俺は一七歳くらいの高校生くらいだろうか?さすがゲームのキャラクター、顔立ちが整っている。キリっとした眉、目、黒髪、薄い唇。全てが悪魔に改造されたように美しく見えた。


 馬車に揺られること、三十分くらいしたあとに馬車は止まった。馬車の扉が自動的に開く。降りろということか。空気を察した俺は、馬車を降りる。馬車はどこかに帰っていくのを見送る。俺は振り返ると制服を纏った女子たちに囲まれているのだった。

 いつのまに。


 押し寄せるマスコミのように俺に質問攻めをしてくる女子の集団。

「ねえ、有名貴族なのでしょ?どこの、どこの」


「はは、有名かどうか?わからないな、ごめんね」


「あ、あの一目ぼれしてしまいました。お付き合いしたいです」


「いや、本当にごめん、今知り合ったばかりだから」


「学生証、みせて、みせて」


「あっ、私もみたい」


「それくらいならば」


 学生証を見せた途端に、女子たちの反応はとても悪かった。


 ぺっと俺に唾を吐いた。

 えっ?


「行こう」

「あーあ」

 と、愚痴をこぼしながら去っていく女子たち。モテキ到来をしたかと思っていたが、嵐のように激しく、そして一瞬でモテキの終わりを迎えたのだ。


 一人となった俺は考えた。

 これは、特殊ルートの開放か?

 俺の知っているゲームでのルートではない。

 女の子の集団に囲まれたあと、学生証を見せるまではいい。その後のことだ。

 本来ならば、女子のお神輿で学園の中に入っていくはずなのに、なぜにぼっちとなってしまったのか。


 ♢ ♢ ♢


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