第2話
「来るかね。」
落ち着いた様子でハチ公を囲むベンチに座っている。
「上の予想通りなら。」
スマホに向かってそう答えた。
ハチ公の周囲数十メートルは白い囲いで覆われている。
「お上は人間より虚民を選んだ訳ね。」
「対処するのはオレらなんすけどね。」
不満げにハチ公の周りをウロウロしている。
「ま、体張るのが仕事だからね。」
「おはよう」
白い物体が囲いをすり抜けて現れた。
「始めるか。」
軽快な足取りで三人に向かってくる。
「イヌ?」
驚いた。
「封印担当だよ。」
当然のように言った。
「でも、いいのか?お前、てか、二人は知ってたんすか?」
イヌを見て、他の二人を見た。モフモフしている。
「生きるためだよ。実際、人間側にいる奴は大勢いる。温室育ちには分からないだろうが。」
「本任務の護衛対象だ。不満か?」
自分の頭を拳で小突きながらうめいた。
「オレ、バカなんで、分かんないっす」
「不思議っつーか、理解出来ねーっつうか」
「オレたち、これから虚民を殺すんすよね」
「うん。」
退屈そうにあくびをする。
「虚民を守るために?」
「ワン。」
「平気なのかよ、同族が目の前で殺されるんだぞ。それに」
その目は恐怖をたたえていた。
「オレたち、いらねーじゃん...」
「お前さぁ」
ベンチから立つと、両肩を掴んでベンチに座らせた。自身はその場でしゃがみ
「バカはお前だけじゃないさ。それにな」
子供をあやすように言った。
「バカは考え事なんてしないの。しちゃあいけないの。仕事をこなせ。」
感心するように頷くと、イヌはハチ公に対峙した。
「時間だよ。ハチ公から目を離さないで。」
三人はハチ公を囲んだ。
数秒の沈黙。
イヌの方を見ようとするが、目が動かない。三人は全神経を集中してハチ公を鑑賞させられているようだ。鼻の高さや耳の形、ありとあらゆる造形が頭に刻み込まれていく。
突然、消失マジックのようにハチ公が消えた。
「はい、終わり。」
イヌは後ろ足で耳を掻いている。
「へー、これが封印かぁ。あっという間だったな。どんなカラクリだ?」
イヌの表情が変わった。その便器の底を見るような目に、三人は寒気をおぼえた。
「君たちが知る必要はないよ。しかし、本当に何も」
「跳べ!」
叫びながら一人を両手で突き飛ばした。反作用を利用してもう一人に体当たりをした。直後、ジェット機のような高音が耳をつんざく。三人は立ち上がると、先ほどまでいた場所を見た。
「ありがとう」
「お前に命救われるれるとはな...助かったぜ」
そこには、粘土に型を押し当てたような円形の穴が開いていた。そのまま立っていれば脳天を貫かれていただろう。そうだ、イヌは、イヌは?
「おいおい...」
「...」
「オレたち、どうすればいいんすか」
赤く、広がっていく。白い毛並みが、後頭部を中心に赤く染まっていく。イヌは墓石のように無表情で、動かない。
「撤退。」
三人は感じていた。
「したいっすけどね。」
真上から何か来る。
「残るは三人と一匹。少し休む。」
「これほどとは、テング殿。お疲れさまでした。」
「後は任せろ!」
・・・
第2話あとがき
・・・
最後までお読みいただきありがとうございました。評価いただいた方もありがとうございました。励みになります。
さて前回に続き登場人物に次回予告をしてもらいます。はい、どうぞ。
「...どうぞって、え?だって、え?なあ。」「そうっすよ。今後の展開まだ決まってないんじゃ、予告のしようがないっす。登場人物に対する作者ハラスメントもいい加減にしてほしいっす。」「なぁ。俺らに名前くれよ!今回はさすがに違和感あったぞ。」「同意っす!なんすかあの”一人は”とか”三人は”って!誰が誰だか分からないっすよ!」「...」「お前もなんか言えよ!」「そうっすよ!無口なキャラでも喋らないと傷跡残せないっすよ!」「...」
はい。ありがとうございました。次回もお楽しみに!
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