Road to Hana(6)---雨の朝食---


 朝起きてテラスに出る、目の前には芝生、その先の海が見える。

 夜は、コテージの明かり以外は何もない真っ暗な世界だが、夜が明けると再び世界に明るさが見えてくる。

 夜は暗いもの、朝は明るいものという、凄く当たり前のことをずいぶん前から忘れていたんだということを思い出した。


 散歩をかねて朝食を採るためにメイン棟に入りダイニングに行く。

 スタッフに席に案内してもらい、席について、メニューをざっと見て、ベーコンエッグとサラダ、フレッシュジュースのセットにコーヒーを頼む。

 スタッフは、微笑みながら、オーダーをメモして下がっていった。


 このレストランはメイン棟の海側の一番前に位置しており、海側はスライド式のドアを開けるとオープンな空間が広がり、半島から海を見渡すことができる。

 特に、朝は雨が降らない限りオープンになっていて、風が室内を横切っていく

今日も扉は開いていて海が見えている。


 ぼーっと海を眺めていると、朝食が運ばれてきた。

 ベーコンエッグは、カリカリに焼いたベーコンにサニーサイドアップの卵が2つのっかっていた。

 朝食を食べながら、ふと外を見ると、半島の先の小島の向こうに雨が降っているのが見えた。

 はっきりと雨が降っている向こう側と雨が降っていないこちら側がはっきりと分かれている。

 そんな雨が降っていた。


 しばらく雨を眺めていると、その雨はこちらに向かっているように見えた。

 小島を抜けて、半島に雨が差し掛かってきた。結構なスコールのような雨だった。

雨のカーテンは、海とレストランの間にあるコテージも飲み込んでしまった。

 徐々に雨のカーテンが迫ってくると、雨の匂いもしてきた。

 雨のカーテンがレストランに覆いかぶさってきた。


 レストランのスタッフが慌ててスライドドアを閉めている。

 ドアは閉められたが、雨の匂いと雨音は、レストランの中を満たしている。

都会では、雨は嫌なものだ、傘がない時に降られると辟易する。

 でも、ここでは雨を嫌いにはならない。

 雨も、ここで流れている時間の一つだと受け入れることができる自分がある。


 朝食を食べ終わり、二杯目のコーヒーを飲み終わる頃、雨が止んだ。

 レストランを後にコテージへ雨に濡れた道を戻ることにした。


(続く)

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