第81話 同調圧力には勝てない

 いきなり契約魔法ですか。

 舞菜香さんは一緒でいいの?


「ああ、舞菜香さんも違う支部ですが、副支部長をしているんですよ」


 えー!夫婦揃ってサブマスなんだ?

 エリート夫婦だ…サブマスはエリート感が足りないけど。


 まぁ俺のステータスは、絶対に知られる訳にいかないから、契約魔法は絶対だね。


 サブマスと早良さんが例の端末を出して、それぞれに同じ契約内容が表示されているから、見てチェックとサインをするように俺とヒノリに渡している。


 どうやら爺ちゃん達は既にサイン済みで、後はヒノリと俺だけになってるようだ。


 昨日の契約内容とほぼ同じで、ヒノリの件が追加されている。


 お互いのステータスやスキルについて、必要な情報を提供するが過度に知ろうとしない等だ。


 と言うことは、ヒノリのステータスも教えて貰えるって事?

 なんで一緒にするんだ?


「八女家の方と紛らわしいので、今から朱鷺君と呼ばせてもらいますね?」


「え?あ、ハイ」


「朱鷺君の疑問は、何故ヒノリさんと一緒なのか、と言う事だと思います。」


 そうですね。

 相変わらず、聞いてない質問に答える神対応。


「簡単に言いますと、朱鷺君とヒノリさんは同じ立場にいると言う事です」


 なるほど?

 つまり、特例法に該当するって事だね。

 そんな立て続けの偶然があるのか。


「おわかり頂けましたか?」


「ハイ」


 後は俺達がパーティーを組むメンバーは、ギルドが許可した者になるって事と報酬の配当についてか…


 それは解るよ、スキルの事が知られないようにするため、俺もソロボッチを覚悟したさ。


 それでもいきなりヒノリとパーティーって横暴じゃないか?

 コミュ障の辛さを考えてくれよ。

 知らない人と長時間とか地獄だよ。


 あ、早良さんは何故か大丈夫だった。

 緊張を解す神対応だからかな。

 サブマスはツルピーだったから大丈夫だ。


 でも美少女と一緒とか無理だよ。

 チラチラ早良さんや父さん達を見るが、やめて慈愛の籠った目で見ないで。


 ヒノリが嫌がらないかな?


 …駄目だニコニコしてやがる。

 コミュ力お化けには、俺の気持ちは解らないんだ。


 この圧力に俺は勝てるのか?


 勝負しますか?とか出るなよ!

 負ける勝負はしないんだよ!


 よく見たらヒノリとのパーティーはヒノリのスキル検証が終わるか、俺の方の申し出があれば解消するって書いてある。


 なら少しだけ我慢して、面倒になれば断ればいいか。


 サインをして早良さんに端末を返すと、例の光が降り注ぐエフェクトが始まる。


 ヒノリが「わぁ~」って可愛く叫んでた。

 フッ、女子の可愛らしさの半分は計算だから、俺は騙されない。


 あの姉ですら同級生にモテてるくらい、猫を被れるのが女の恐ろしさなんだ。


「では、これで説明に入れますね」


 イケメンスマイルで説明してくれました。


 昨日の午後にステータス獲得をしたヒノリのスキルが、ギルドの情報に無かったスキルだった事。


 スキル名から特殊な効果が予想されるものだった事。


 そこで、俺のスキルの能力でヒノリのスキルの内容を確認するために、一緒にスキル検証をする方針になった事。


 立会人が追加で2人必要な事から、能力と立場的に最適な2人がギルドにやって来たから、依頼したらOKだったって事。


 父さんの勘てコレか…

 爺ちゃんは来なくてもって言ってたけど、結局同じ依頼が行くから手間が省けたねって感じの良いことなのかな。


「それでヒノリさんのスキルですが、"メタモルフォーゼ"と言います」


 それって変身しちゃうヤツ?


「ええ、想像するイメージで良いと思いますよ。それで、このイメージで出来る事って何だと思いますか?」


 狼男とかの獣人になったり、バンパイアが蝙蝠になるとか、なんなら生き物以外になるなんてのも言ってみる。


「そのメタモルフォーゼのイメージ通りなら、スキルを使用して変身をすると考えられます。しかし意識まで人間以外になるようでは困ります。そこで朱鷺君のスキルの出番です」


 ガチャミに危険かどうか確認したいんですね。


「わかりました」


「それから称号の事なのですが、ヒノリさんに称号は無かったのですが、彼女は称号らしきものがあると仰っています」


 ファッ!?

 それってまさか?


「その称号は文字ではないため、読めないそうです」

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