第62話 絶対と確実

 俺の隣に座ってグイグイ寄ってくる姉に、広めのソファーなんだから、そんなに近くに座らなくてもと思う。


 爺ちゃんは床の方が落ち着くからと、テーブルの端側で一人座布団に座ってる。


 母さんはキッチンで夕飯の準備中だから、向かい側の父さんの隣は一人分空いている。


「それじゃあ、始めるよ!今日のワールドアナウンスは皆知ってるよね?」


 やっぱりその件だよね~予感が当たったな。

 ワールドアナウンスだから、知らない訳がない。


 皆が同意するように頷く。


「だよね!私はダンジョン前にメンバーと集まってた時だったから、皆で追加項目や称号についてステータスを確認する事になったんだ!」


 そりゃ普通はそうなるか…

 でもメンバーに追加項目や称号が出てる人はいなかったらしい。


「ガッカリしてたら、ミーコが職業変更を見つけたのよ!さっき家の前でパパに会ったから聞いたんだけど、職業変更の事を知らないって言うから、皆にも早く教えなきゃと思ったのよ!」


 あぁ、父さんは朝から隣県のダンジョンに行ってたからね。

 夕飯に間に合うよう、攻略に集中してて調べなかったんだろ。


 我が家の家訓に"土日は皆で夕飯を食べる事"があるからね。

 家族とのコミュニケーションを大事にって、母さんが決めたんだよね。


 爺ちゃんは道場で稽古をつけてる時は、集中するために余計な事は許さないから、ステータスを確認してなかったんだろう。


「それで皆で職業変更してみようってなって、職業を見たら結構いっぱいあったんだけど、今の自分がやりたい職業にしたんだ!そしたら他のは選べなくなっちゃったけど、ダンジョンで試したら、スキルも出たし、威力が上がったから後悔はないよ!ギルドにも報告したから、ポイント貰えるかも!」


 あ~もう変更した後か。

 まぁ24時間経たないと変更出来ないから、すぐに変更を試したら選べなくなったって事だね。


「あ~姉ちゃんその事なんだけど、俺からの話を先に聞いてくれないかな?」


「何よ?まさか何か知ってるの?」


 俺が恐る恐る発言すると、不機嫌な顔で睨んでくる。

 お前なんかが私より知ってるとか、許さないって感じかよ。


 まぁ後から同じ内容でギルドに報告すると、ポイントが少なくなったり貰えなくなるからさ。


 誰かに聞いてから報告するようなズルが出来ちゃうからね。

 ちょっとでも早く、違う内容を含めて報告する方がポイントが高いよ。


「ギルドで偶々聞いたんだよ。ニュースでも言ってたけど、8時から記者会見があるよ。でも重要な内容があるから先に言っておくよ」


 と爺ちゃんへの言い訳と同じ事を言う。

 ギルド情報ならポイントは関係ないからか、安心したような姉に、チョロいなと思う。


 斯々然々と説明したよ。


「何よそれ?私達がギルドに報告した時は、そんな事は言ってなかったよ!明日になれば変更出来るの?でも、自我がなくなるのとかだったら、どうすんのよ!」


 たぶん姉ちゃんくらいのレベルなら、そんな職業ないと思うよ?


 それと情報は全ての支部に回ってないかもね。

 とは言えない。


 密やかにステータスを開けてガチャミの部屋を見てみると、背中を向けて足を抱えているガチャミ。


 オヤツ抜きに拗ねてるのだろうが、判りやすい拗ねかただな。


 二次元にする時に【話す】ってどんな感じか聞いたら、画面に念話で話すんだよ~って言ってたから、このまま話せる。


 念話で姉ちゃんの職業にヤバいのがあるか聞いたら、見てないから知らないよ~って。


「ちょっと朱鷺、聞いてるの!?」


 ヤバい、姉ちゃんが早口過ぎて聞いてなかった。


「ごめん、聞いてなかった」


 ここは素直に言う方が良いと経験でわかっている。


「もう!あんたは職業変更したの?って聞いたの!」


「一応してみたよ。まだ講習を受けてないから、また別の職業にするかもだけど」


「自我を失う職業じゃないって判るの?」


「俺みたいにレベルが低いと、そんな職業は出ないみたいだよ?でも、爺ちゃんと父さんはあるかもしれないよ?」


 ガチャミが職業を見ないと教えられないから困ったな。

 ガチャミの事は絶対に言えないし。


 しかも皆のを見せてもらうなら、俺のも見せなきゃダメな流れに確実になってしまう。


 それだけは避けなければならない!

 お笑い芸人と妖精だけは、絶対見せたくない!!


 確実に笑われる自信がある!

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