第12話 神ってる

 早く見せろと言わないけれど、前に座るイケメンの圧が凄いんですが…


 ステータスは半透明とは言え裏から読める訳じゃなくて、正面からしか見えないスマホの覗き見防止機能のようになっている。


 報告は義務と言えども、他人のステータスを覗き見るのはマナー違反なので、俺が見せるのを待ってるんだろうな。


 はぁ…見せたくないけど、そう言う訳にいかないから覚悟を決めて、早良さんの方へステータスの端っこを指で滑らすように押す。


「ありがとございます。確認させて頂きます」


 クルンとひっくり返したステータスを、爽やか笑顔イケメンイケボで礼を言いながら見た早良さんの顔が強張る。


 やっぱそうなりますよね~。

 あははと乾いた声が漏れる。


 うん、めちゃくちゃ固まってガン見してます。


 その瞬間、ワールドアナウンスが流れた。


『新しいシステムが構築されました。これによりステータス画面に項目が追加されました。条件が満たされたため称号システムが追加されました。更なるダンジョンライフをお楽しみ下さい』


 頭の中に称号についての基本情報が入り込んで来る。


「うぐっ」


「くっ」


 通常はワールドアナウンスのみで終わるのだが、システムに関する情報だったためか"常識"として刷り込まれる違和感に呻く。


 流石は早良さん、くっとか呻き声もカッコいいんですね。

 クッコロ属性は女騎士だけにして下さい。


 たぶん時間にすれば1秒にも満たないけれど、頭の中にある違和感がもっと長く感じさせる。


「大丈夫ですか?」


 既にないはずの違和感を散らすように、俺が頭を振っていると、早良さんが聞いて来る。


「あ~変な感じです」


「ここ何年もシステムの更新がされるようなアナウンスはありませんでしたから、八女様には初めての感覚でしょうか」


 既に元通りに姿勢を正したイケメンスマイルで、兎に角ステータスの登録をしてしまいましょうと端末を向けて来る。


 ステータス登録しないと探索者登録も出来ないし、称号とかの事も考えがまとまらないから、落ち着く時間も欲しいしね。


 早良さんが素早い指使いで端末を操作する様子を眺めながら、称号について考える。


 1つ、世界に影響を与えた者に称号を与える。

 ※影響の大きさに関わらず、世界に影響を与えたと認められた者に与えられる。

 ※称号は特に効果があるものではない。


 これが新しい常識だ。

 称号の新規ユニークスキル獲得者って言うのが、世界に影響を与えたって事か?

 文字化けは何もわからないから、特に何かした記憶もないし。


 世界に影響を与えたってのは、ワールドアナウンスにあったステータスの項目が追加された事かな?

 新しい項目って俺のステータスにあるGPの事だろう。

 未だにGPが何かわからないけど…


 でもこの流れで言うと、新しいスキルに必要なのがGPって事にならないか?


 GP……Gから始まるポイントとすると…が…が…ガチャ…

 まさかガチャポイントとか?

 いやいや…まさか……あるかも。

 だってゴブリンポイントとかだと嫌過ぎる。


 ゴブが大量に涌いてくるのを想像してる間に、登録が完了したようで早良さんがこちらを向く。


「お待たせ致しました。ステータスの確認とスキル登録が出来ました。身体に影響しそうなスキルは該当しませんでしたので、別室に移動したいのですが体調は大丈夫でしょうか」


「はい、大丈夫です」


 とっくに汗もひいて、体調も問題なかったので立ち上がる。


 すっと無く畳んでおいたタオルを回収し、先ほどの部屋へと先導するイケメンはもはや神っている。


 イケメンに導かれし憐れな子羊フツメンをお救い下さい。


 この後に待ち受ける面倒から逃避してる場合じゃないと思いながらも、ふざけた思考が止まらない。


 あ~緊張すると出ちゃうこの悪癖は治らないなぁ。

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