第2話 ダンジョン法

 日本でも新しいシステムに伴いステータスの獲得やダンジョンの調査が行われようとしていた。


 しかし各地のダンジョンの把握からして難航を極めた。


 原子力発電所等の大きな施設後に現れたものは把握しやすかったが、山の中はもちろんのこと、街中でも普段は人の入らない場所や空き家などに現れたものはモンスターが溢れるまで気付かれない場合があった。


 溢れたモンスターはステータスを持たない人では歯が立たず、銃器類も何故か効果が低かった。


 しかしステータスを得た人なら、ただの蹴りや木の棒でもモンスターに有効で、スキルなら効果はとんでもないものであった。


 しかし獲得したスキルを使う犯罪者が出た事で、ステータスの獲得もダンジョン攻略も警察官や自衛官に限るべきだ等と国会でも紛糾し、法整備が行われるまでに勝手にダンジョンに入る人が後をたたなかった。


 勝手にダンジョンに入ったと言えども、死傷者が出ると国を批判する人が現れデモが起きる。


 私有地に出来たダンジョンを独占し金儲けをしようとする者まで現れ、挙げ句の果てにモンスターを溢れさせ死傷者が多数でた頃にようやくダンジョン法が可決された。


 そして公布されたのはダンジョンが現れてから実に7ヶ月が経ち、死者が2万人を越える頃だった。


 ダンジョン法により、ダンジョンの現れた場所の所有者は速やかに国に報告する義務があり、これに違反しモンスターが溢れた場合は損害賠償責任が発生する。


 また土地や建物を所有するものはダンジョンが現れていないか調査する義務も盛り込まれ、相続等で知らない内に所有者になってる人々が阿鼻叫喚となった。


 ダンジョンは全て国の所有とする事になり、それにともない周りに住む人は強制的に立ち退きさせられた。


 もちろんモンスターが溢れた場合の措置ではあるが、当事者にとってはとんでもない出来事である。


 しかし国にとってもモンスターが溢れた時の被害が既に起きているため、それを盾に全てを強行したのである。


 そして発見されたダンジョンは実に200ヵ所を越えるものであった。


 ステータス獲得者による犯罪は増える一方になり、ダンジョン外でのスキル使用禁止も叫ばれたが、パッシブスキルは禁止しようもなく、回復魔法などの有用なスキルまで使用出来なくなるのもあり、スキルによる攻撃や破壊行為の禁止と厳罰化に止まる事になった。


 後にスキルやドロップアイテムの研究が進み、封印や契約でスキル抑止が可能になるまで対処法がなかった。


 兎に角ダンジョンの発見と同時に、モンスターハザードと一般人の侵入を抑止するために周りにコンクリートの壁を建設する事が優先された。


 ランクの低いダンジョンは警察官や自衛官が次々と攻略し、コアを破壊して消滅させるも、しばらくすると新たなダンジョンが別の場所に発生する事も判明した。


 レベルアップした者で高ランクのダンジョンにも挑戦したが、ランクCでも死傷者が続出した上に、ランクB以上のダンジョンに入った者は誰一人戻らず、高ランクのダンジョンに入るレベルになるには相当の時間がかかる事が判明した。


 幸いな事と言えるのかどうか、高ランクダンジョンはモンスターが溢れるまでの期間も相応に長く、直ぐには溢れない事もわかり、無理せず低ランクダンジョンをクリアしながらレベルアップする方針となった。


 しかし、警察官達も通常業務に加えスキル犯罪者の対応などもあり、ダンジョン攻略に割ける人員にも限度があり、このままでは全てのダンジョン攻略は出来ないと、民間探索者を認める法律が出来たのは、ダンジョン法が施行されてから更に半年余り経ってからだった。

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