第32話 地下へ…
地面にあった階段を降りると、そこにはなんとも言えない空間があった。
明かりがあるわけではないが、ぼんやりとは見えている。
ただし、反対側の端の方までは見通せてはない。
見えている壁の位置から推測すると空間の大きさとしてはちょうどこの建物の敷地ぐらいなのだろうか。
しかし、降りてきた階段の高さと天井の高さが合っていない。
明らかに天井の高さが階段の高さを超えている。
ということは、この謎空間は入ってきた敷地の実際の地下空間ではないのかもしれない。
実際にこんな感じで柱も何もない空間を掘ってしまったら、あっという間に天井が崩落しそうではある。
もう少し周囲を観察したかったのだが、注意力を別の方へ向ける必要に迫られた。
暗くて見通せなかった方から何かが跳びかかってきたのだ。
当然、怪物がいることは想定済みなので、慌てず騒がず落ち着いて射撃スキルで迎撃しようとするが、思ったより的が小さい。
しかも一体だけではなくて複数いるようだ。
これは急須がバンジージャンプするかもしれない。
いや、他愛のないことを思いつくぐらいだから実際のところは然程焦ってもいないのだろう。
壁の方に下がりつつ、最初に襲い掛かってきた怪物に向けて射撃スキルの出力を抑えずにぶっ放す。
射撃スキルはここと思ったところにほぼ当たってくれるので、それを幸いにと撃ちまくる。
怪物よ、相手が悪かったな。射撃スキルは心で撃つもんなんだぜ。
思わず、左腕に銃をつけていた海賊の真似をしてしまった。
五体の怪物をあっという間に撃退すると一旦襲い掛かってくるものはなくなったようだ。
死体を放っておくとリスポーンしてしまう可能性が高いので、異次元収納へと収納を試みる。
二体はタイミングを逃してしまい消えてしまったが、三体は無事に確保することができた。
収納するときに確認できたが、見た目から猫が怪物化したようだった。
それでも体高は50cmぐらいあって、ちょっとした中型犬以上だ。
浮浪者だけでなく猫も棲みついていたのだろうか。
それとも…、またここで思考が中断される。
リスポーンした怪物が再戦を挑んできたのだ。
だがしかし、最早こいつらは私の敵ではない。
あっという間に二体の怪物を戦闘不能にさせると確実に異次元収納送りにする。
これで何もいなくなったかを確認するために、昼間に色々買い漁った中から懐中電灯を取り出して周りを照らし出す。
四方の壁までの距離から、やはりこの空間の大きさはほぼ上にあった建物の敷地と同じぐらいのようだ。
そして、この空間の隅にさらに下へと降りる階段があった。
うーん、ゲームとかだと先に進むにしたがって敵が強くなるのはお約束だよね。
いくら私のスキルが強力だとは言え、この先でも通用するかというとそんな保証もない。
相手も似たような能力を持っていたら、こんな動きの鈍いオッサンなんかはあっという間に血祭りに上げられるのが関の山だ。
でも、この時点で回れ右しても得られた情報に大したものはない。
こんなことなら白面ぐらい連れてくればよかったと今更ながらに後悔した。
覚悟を決めて、階段を降りる。
階段を降りていくと、上の空間と同じぐらいだろう空間の真ん中あたりに獣人が一人いるのが判った。
これが棲みついていた浮浪者のなれの果てだろうか、などと考えた矢先にあちらもこちらに気付いたようで向かってくる。
今更、たった一人の獣人を恐れることなどない。
近接戦闘しかできない者は敵ではないのだよ。
ということで、攻撃する機会も与えずに瞬殺し、収納してしまうと「天の声」が響く。
『敵陣を制圧したのでポイントを獲得しました。』
「はい?」
どういうことだろう。
半永久的にリスポーンを繰り返すダンジョンは制圧不可能という話ではなかったのだろうか。
『現時点でダンジョン内の全ての眷属を排除したため、制圧完了と看做されました。』
ほう。そういうことですか。
あの時とは異なり今は異次元収納を取得しているので、眷属を全て死体にして回収してしまえば制圧することができるってことでいいのかな。
でもなぁ、こんな奇妙な空間を制圧したところで何かの役に立つのだろうか。
『異次元収納の容量は全ての拠点の容積の合計値となります。』
あらま、そんな設定があったんだ。
ふーん、これで容量を確認するために海に行く必要はなくなったわけだ。
とりあえずタワマンとか制圧したらとんでもない容量になりそうってことは判った。
だけど、そういうことはできるだけ早く教えて欲しいものだ。
と思ったら「天の声」が響く。
早く教えろ、という思いに応えたつもりなのだろうか。
『追加されたダンジョンのダンジョンマスターに就任しました。設定を変更する場合はメニューから実施してください。』
あらら、そんな面倒事も押し付けられるんだ。
しかし、この後確認してみてよかったと思い知ることになる。
何故なら防衛設定っていうのがあり、それが「広域連携」になっていたのだから。
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