第30話 ダンジョンっぽくなってきた!?

今、20時半ぐらいだ。

スマホで得られる情報を整理するとこんな感じだ。


例の境界線以西で次々と「集合住宅」が消失しているらしい。

しかも、建物が消えた後には怪しい入り口が現れているんだとか。

消失していない「集合住宅」の大半では住人が敷地外に出られず、スケベ爺のところであったような事故も多発している。

そのせいで、警察や消防、救急に連絡が殺到しているが、署員なども人手が足りていないようで満足に対応できず、さらに混乱に拍車がかかっているみたいだ。


「大学は普段通りにしようとはしていましたけど、休講になってたのもそれなりにあったみたいです。私の受けてた講義も休講ではありませんでしたがオンラインでした。」


新型コロナウィルス感染症の蔓延後、一番割を食ったのは学生など子供たちだと思う。

学校生活を謳歌することもできず、修学旅行なども中止になったり、部活動なども大会などに参加できずに悔しい思いをし、我慢を強いられた子供たちがたくさんいたことだろう。

一方、普及の遅れていたオンライン授業の展開が進んだところもあり、特に大学などの高等教育機関では採用し、継続的に活用できるようにしているところもあるみたいだ。


他方、大人は我慢もせずに「夜の街」でクラスター感染をひろげただとか、感染を認識しているにも関わらず出歩いて他者を感染させたとかいろいろあったよね。

他県ナンバー狩りとかも騒ぎになってたね。

県内在住者なんだけど事情があって県外ナンバーを付けている人の車が被害を受けるなんて妙なことも起きてた。

事実を知りもしないで、思い込みだけで行動するってとても危ない人だよね。

しかも自分の正体を明かさずに貼り紙したり、車を傷つけたりするなんて、とてもまともな人のやることとは思えない。

こういう人は真っ先に扇動されちゃうんだろうね。

SNSとかでもフェイクニュースが多くなっているので気を付けてほしいものだ。

相変わらずコロナに関するものや、今年七月にあった元総理大臣に対する銃撃事件、今年二月に始まったロシアのウクライナ侵攻関連でも、多くのデマが拡散されているようだ。


ああ、話が随分と逸れてしまった。


「うちはまだ大丈夫だったんですね。」


「はい、今のところ何も変わった様子はなかったと思います。」


どういうことだろう。

ステータスでポイントの増加状況を確認してみるが、特に変わりなく増え続けているようだ。

ということは獣人賃貸、蜥蜴賃貸、猫獣賃貸は無くなっていないということでいいのだろうか。


「あ、でも昨日話してた取り壊しが進んでいないアパートは無くなっていましたね。」


「恵理ちゃん、あっちの方通ってきたんだ。」


「えぇ、大学の友人が建物から出られなくて、バイトの代打を頼まれちゃったんですけど、それがその辺のカフェだったんです。あっちの方、そんなに通るわけではないので確かではないですけど他にもいくつも建物が無くなっていたと思います。」


「ヤバいじゃないですか。そんなに建物が減ってるんですか。」


「多田くん、ワシのマンションは大丈夫なんだろうか!?」


「根拠はないですが、うちが大丈夫ならそちらも大丈夫かと。面近さん、謎の入り口っていうのはどんな感じだったんですか。」


「あんまりちゃんとは見ませんでしたが、全部が同じという感じではなかったと思います。地下に降りるような階段みたいのものや、ぼんやりとした入り口が見えるだけのようなものもありました。」


「多田さん、それってなんか本当にゲームとかのダンジョンの入り口っぽくないですか。」


「そうですね。私もそう思います。そうだとするとこれで終わりではないと考えた方がよさそうです。」


「どういうことですか。どんな続きがあるっていうんですか。私、怖いです。」


そう言って、私の腕にしがみついてくる面近さんに対抗して反対側の腕に伴さんがしがみつく。


「私のこと、また守ってくださいね。」


「あなた、それは風営法に違反するのじゃないのかしら。」


面近さんが目敏く伴さんの行為を指摘するが伴さんはどこ吹く風といった感じだ。

両腕に伝わるけしからん柔らかさは気になるが、今はそんなことより思ったことを口にする。


「時間をおいて状態が変わったということは、変化のための何かが必要だったか、何かの状況が変わる必要があった、もしくは時間そのものが必要だったと考えるのが妥当かと。ネットに上がっている画像を見ると陽が落ちて暗くなってからの映像の物しかないように見えます。ということは建物の消失が発生するのは日没以降で周囲が暗くなってからという条件が必要だったのかもしれません。昨晩の内には発生していなかったようなので、ダンジョン化以後半日以上という時間も必要だったのかもしれませんね。我々が暮らしている建物には今のところ影響がないので、ダンジョンマスターがいるところは対象外なのかもしれませんが次はどうでしょうね。」


決してのんびりしていたわけではないが、もっと検証を早く進めていればと思わなくもない。

そして、まだ確認できていないが獣人賃貸とかがどうなっているのかすごい気になる。

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