第22話 ダンジョンから駒
改めて獣人賃貸に来た。
そこで気付いたがこの時間になっても管理人が来ていないみたいだ。
ふと掲示板を見ると、管理人の出勤予定表が貼られていて今の時間には来ているはずのようだ。
どうやらここの管理人は来られない状況にあるらしい。
まあいい、それならそれでいろいろと検証させてもらおう。
先ずは異次元収納の容量確認からだ。
失礼してゴミ集積所にあった蛇口を捻らせてもらう。
出てきた水を収納すると量もきっちりと判る。
思った通りだ。
このまま水を収納し続ければ限界がどれぐらいか分かるかもしれない。
しばらく水を出しっ放しにして収納してみる。
全開にしても一分で50リットルぐらいしか出ないようでなかなか水の量が増えない。
十分ほど続けてみたが、一向に上限が見えてくる感じはない。
当り前だな。500リットルぐらいじゃ0.5立方メートルにしかならない。
うん、時間がかかりすぎるので、容量はどこかで川か海に行くなりして確認することにしよう。
ここから一番近くの川は目黒川だが、大した流量じゃないので干上がらしてしまって問題になるかもしれない。
とすると海まで出るしかないが、天王洲辺りならそんなに遠くないし別にいいか。
さて、次は階段で三階に上がった。
二階に初めて出た時のように様子を伺ってみるが、共用部には何もいなかった。
ならばと、伴さんの上の部屋にあたる301号室の扉に手をかけるとこれまで通りに鍵が開いた感覚が伝わってくる。
用心深く扉を開けると部屋の中でぼーっと佇んでいる獣人がいるのが見えた。
即死させないように、だけど自分の安全性を確保するために先ずは脚の先を潰す感じで射撃を発動させる。
狙い通り移動するための脚を奪われた獣人はその場に倒れ込んでしまうが、私に向かって這い寄ろうとしてくる。
なので更に這い寄るための腕も潰す。
身を捩ることしかできなくなった獣人に対してそれでも用心深く近寄る。
体の一部に触れて異次元収納へ収納を試みるが、やはりというか生きているものは収納できなかった。
そこで脳天を撃ち抜いて止めを刺す。
動きを止めた時から続けて収納を試みたところ、最初はできなかったのだがどこかのタイミングで収納することができた。
生物的な完全な死を確認できたところで無生物とみなされて収納できるようになるのかもしれない。
その後、しばらく様子を伺っていたがこの部屋に獣人がリスポーンしてくることはなかった。
二階は相変わらずリスポーンし続けているようなので、私が死体を確保したことでこの部屋の獣人はリスポーンできなくなったのかもしれない。
そういうことならと、三階の他の部屋からも同様にして獣人の死体を確保させてもらった。
ついでに部屋にあった薬缶でお湯を沸かしてその薬缶を収納して確かめたところ、いつまで経っても薬缶のお湯が冷めることはなかったので異次元収納の中では時間経過しないみたいだ。
容量についても三階の全部の備え付けの家具を一旦収納させてもらったが、まだまだ収納できそうだった。
感覚的には100立方メートルぐらいは余裕で入りそうなことを確認できたので、家具は元通りに返しておいた。
こんな状況になったからといって火事場泥棒みたいなことをするつもりなどない。
出し方は何回かやっているうちに思い通りにできるようになったのでいい練習になった。
さて、それでは一度戻るとしよう。
自分の部屋に戻ると異次元収納から獣人の死体をひとつ取り出してみる。
出した途端に獣人の死体は消えてしまった。
『敵性勢力眷属の素体を獲得しました。』
期待していた結果が得られて大満足だ。
残りの死体も同様に取り出して駒になってもらう。
チラシ男とゴミ男の駒はゴーレムとガーゴイルでそれぞれ使ってしまったからね。
4つも駒を確保できたのでとりあえず1つは更なるポイント稼ぎに使うことにした。
ということで、もう一度獣人賃貸に向かうと四階にガーゴイルを設置して無限ループを完成させることに成功した。
五階、六階をどうするかは少し様子を見ようと思う。
さて、樋渡さんと伴さんはどうなってるかな。
「あ、多田さん。検証はどうでした。」
「いい結果が得られて良かったです。こちらは何か進展ありましたか。」
「それが、発動できたのかできてないのかよく分からないんですよね。私の方は、またレベルが上がりました。」
「治癒のレベルが上がったのは大きいですね。でも、なんで?」
「私、仕事柄なのかあちこちぶつけて痣とか傷だらけだったんです。でも、奈美さんに綺麗に治してもらったんです。ほらほら、見てください。」
そう言って、向こうの部屋から持ってきたゆったりした部屋着に着替えていた伴さんは腕や脚を捲りあげて肌を見せてくる。
最初はどうだったか知らないが、確かに傷一つないきれいなお肌になっている。
感心していると更に上半身に着ていたものの裾を両手を交差させて持って捲り上げようとするので樋渡さんに止められていた。
「なんで止めるんですか。全部見てもらおうと思ったのに。」
「恵理ちゃんのいない所でそういうことするなら、私も完全に敵になるわよ。」
「わかりましたよ。」
勝手に見せといて警察とかに無理矢理見られましたーとか通報するのだけはお願いだからやめてくださいね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます