第18話 誰が元ヤンだ
私は記憶のある限りでは十二時間以上寝たことがない。
朝方まで起きていてそこから寝ても昼過ぎまで寝たこともない。
普段は十二時ぐらいに寝て朝六時ぐらいには目覚ましなしで目を覚ます。
今朝も六時前に目が覚めた。
ポイントがどれぐらい溜まっているか楽しみだったこともある。
早速ポイントを確認してみる。
おおっ、すごいぞ。ポイントが8000を超えている。
この瞬間も増え続けているのでガーゴイルが頑張っているらしい。
後でゆっくり使い道を考えよう。
夜に引き続き、周囲も特に騒いでいる様子はないが世の中はどうだろうか。
テレビをつけて朝の情報番組をあちこちの局で確認してみるが表立ってダンジョンのことを取り上げているものはなかった。
しかし、やはりというか一部のキャスターやコメンテーター、ゲストなどが急遽代役を立てられるなどしていていつも通りという訳にはいかないようだ。
予想した通り、何かが起こっているようだが、それがダンジョン化によるものとは気づいていないといったところだろう。
ステータスを確認してみると眷属の数が4増えていた。
一覧で見るとうちの101の住人、ババアの息子と思しき名前ともう一人男の名前がある。
どうやら他のダンジョンに捕まらずに無事に帰ってきていたようだ。
で、もう一人の伴梨香って誰?
うちは六部屋あって102は空いていたから樋渡さん、面近さん、尾茂さん、クリス、今101の
ババアの方も六部屋だが一部屋空き部屋で、ババア、バカ息子、ゴミ男は駒にしちゃったし、通り抜け男、覗き男でこちらも全員のはずだ。
誰かのペットの名前?そんな名前にしないか。
などと考えて郵便受けに新聞を取りに行くと102に泊めてあげた女性に挨拶された。
「おはようございます。昨晩はありがとうございました。」
「大丈夫でした?朝早いですけどあんまり寝られませんでしたか。」
「そんなことはないです。いつもこれぐらいには起きてるので。おかげさまでちゃんと休めました。」
「それならよかったです。簡単な朝食なら出せますけどお召し上がりになりますか。」
「ちょうどコンビニに買いに行こうとしてたところなんです。お言葉に甘えちゃっていいですか。」
「もちろんです。どうぞどうぞ。」
「改めまして、
なんと、眷属に増えてたのこの人だったんだ。
でも、なんで?
「ドタバタしててちゃんとご挨拶してませんでしたね。失礼しました。私は多田と申します。どうぞよろしく。」
私の部屋に上がってもらって、簡単に朝食を用意してる間にどうして彼女が眷属になったのか考えてみるがさっぱり分からない。
元々、彼女はあの獣人賃貸の住人のはずだ。
それが何で私の眷属になるんだ?
眷属になったのはおいといても、この状態で彼女が獣人賃貸に戻ったらどうなるんだろう。
獣人化しちゃうのかなあ。
「天の声」が答えてくれるかと思ったが反応がない。
「天の声」にも想定外の出来事なのだろうか。
「スープはお湯に混ぜるだけのものですがオニオンとコーンのどちらがいいですか?」
「それぐらい私やりますよ。多田さんはどっちですか。」
彼女はフットワークが軽くてあっという間に隣に来ると、手際よくスープカップに自分の分を開けてお湯を注いでいる。
「ありがとうございます。それじゃあオニオンでお願いします。」
「承知しました。ふふっ、こうして台所に並んで立ってると夫婦みたいですね。」
このお嬢さんはしれっととんでもないこと言うなあ。
「どう見ても親子にしか見えませんよ。実際、私にはあなたぐらいの娘がいますし。」
伴さんは25歳ぐらいだろうと当たりを付けて切り返す。
「本当ですか!?ということは…多田さん十代の時に?実は元ヤンですか?」
何でそういう発想になる。
確かに私は若い時から実年齢より10歳ぐらい若く見られがちだった。
30代半ばぐらいの時に客先に今回の案件のリーダーを務めると挨拶に行った時には、何でこんな若造が?大丈夫なのか、みたいな顔を思いっきりされたけどね。
その仕事はきちんとやり遂げてお客様に信頼してもらえた後で話を聞いたら、後で年齢を知って驚いたとは言っていた。
娘の授業参観とかの時も結構な好奇の目にさらされたのは困った。
「若いねー」だの「細くてシュッとしてるねー」だの娘のお友達にまで騒がれる始末だ。
確かに周りのお父さん達を見回すとちょっとくたびれるの早くないか、と思う人は結構いたけどね。
まあそんな話はどうでもいい。
伴さんに実年齢をちゃんと証明すると変なことを言われた。
「多田さん、いけるから大丈夫ですよ。」
「はい?」
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