第16話 獣人の住人

エントランスまで踏み込むと中で蠢いていた怪物が私に向かって襲ってくる。

見た目は獣人って感じだろうか。

配信の映像で見たケルベロスのようにあからさまにサイズは大きくなっていなくて、普通だと肌の見えているところが獣のようになっているだけで元から着用していた衣服はほぼそのままなので時期遅れのハロウィンのコスプレのように見えなくもない。

その出来栄えはハリウッドの特撮も驚愕のレベルではあるけどね。

近年だとCG合成の方が多いのかな。

服装から判断すると元は男性が二人、女性が一人だったみたいだ。

そこまでを一瞬で理解すると怪物に向かって指鉄砲を立て続けに放つ。

ババアに使った時もそうだったが、特に狙いをつけなくても、というか照準器なんかないので大体当たれと思ったところに当たるのが今回のことでよく分かった。


指鉄砲から放たれたものが意図した通りに三体の獣人の眉間に穴を開けると間を置かず「天の声」が聞こえる。


『敵性勢力の眷属を撃破したのでポイントを獲得しました。』


その場に倒れ伏した獣人をしばらく見ていると一分と経たずに消失してしまった。

やっぱりリスポーンする場所は自分の部屋なんだろうか。

一階の様子を確認したところ、管理人の待機用の部屋と共用設備があるだけで、この階に住人用の部屋は存在しないようだ。

さて、どうしようか。

とりあえず階段で二階に上がってみることにした。

階段から二階の共用部に注意深く出てみると、さっきと同じ感じの獣人が一体いた。

折角の出会いを大事にして、この獣人にも私のポイントになってもらおう。

今は一体しかいないので指鉄砲を獣人に向けて何回かスキルを発動させると発動させた分の穴が体に開く。

途中で穴が大きくなったので恐らく射撃のレベルが上がったのだろう。

獣人は反撃しようと近づこうとしていたが、最初に足先を損壊させたので私に近づくことは容易ではなく、いいように的にされてやがて倒れて動かなくなる。


『敵性勢力の眷属を撃破したのでポイントを獲得しました。』


一階の時と同様に一分も経たないうちに倒れている獣人の姿が消失する。

周りを見回すとこの階には四部屋あるようで一つの扉が何故かドアストッパーが利いて開きっ放しになっていた。

大きな荷物でも運び入れていたのだろうか。

扉から部屋の中の様子を伺ってみると、獣人が今まさにリスポーンしようとしているところだった。

しかし、さっきの獣人とは異なり何も着衣はなかった。

代償を必要としないリスポーンでは無駄な物は再現されない、とかかもしれない。

獣人が完全にリスポーンを終えて、私を認識すると当然の如く襲い掛かってくる。

私は別に呆然と見ていたわけではないので、向かってくる獣人を先程と同じように出来るだけ即死させないように指鉄砲で的確に攻撃を加える。

四肢に何箇所も穴を開けられ苦悶しながらも私への闘志を失くさなかった獣人だが、これまでと同じようにやがて動かなくなった。


『敵性勢力の眷属を撃破したのでポイントを獲得しました。』


これ、固定砲台みたいなの設置しておいたら無限にポイントを獲得できないだろうか。

巡回用のゴーレム、定点監視用のガーゴイルみたいな言い方してなかったっけ。

動けない分、強力な攻撃できるとか?


『ガーゴイルは強力な熱光線を放つことが可能です。ただし設置後自力で移動することは不可能で、攻撃可能範囲は左右15度、上下30度に限られます。』


ふーん。

部屋の外に出てきたら狙い撃ち出来る位置、最初に階段から出てきた辺りにガーゴイルを設置するといいかもしれない。

一番近い部屋だと距離が近すぎるし破壊されるかもしれないけど、他の部屋からも湧くようにできたら二倍三倍稼げるし超お得だよね。

ということで、再びリスポーンを終えた獣人に向けて今度は動けない程度に攻撃して一旦この部屋を出る。

階段の出口から遠い別の部屋の扉に手をかけてみるとその瞬間に鍵が開いた感覚があった。

敵を迎撃するために敢えて迎え入れようというダンジョンの意志でも働いているのだろうか。

もしそうならこちらにとっても都合のいいことだ。

ありがたく利用させてもらうとしよう。

扉のすぐ向こうに獣人がいることも想定して薄く扉を開けてみるが、幸い直ぐ近くにはいなかった。

中を覗き込むと部屋の明かりは普通に点いていて、奥の方に一体の女性服を纏った獣人がうろついていた。

それだけ確認するとそっと扉を閉めて、もう一つの部屋も同じように確認してみたらこちらにも一体の男性服の獣人がいた。

ちょっと失敗したかもしれない。

侵入者の気配に敏感に反応して襲ってくるかと思ったが、どうやら今のところは視界に収めて認識しないと襲ってこないようだ。

これだと部屋の外に出てくるまで時間がかかってしまうだろう。

欲を出さずに最初の部屋の入り口にガーゴイルを設置しておけばリスポーンの度に撃破できたかもしれないが、今は他の二部屋の鍵を開けてしまったので、いずれ部屋の外に出て来て攻撃できない後ろから破壊されてしまう可能性が高まってしまった。

今開けなくても、いずれダンジョンが対策してきたかもしれないけどね。

まあ、やってしまったものは仕方ないか。

取り敢えず、ガーゴイルの性能を知るためにもその力を見せてもらうとしようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る