第3話 コープ大家は斯くダンジョンになりにけり

なんだろう、この不思議な表示は。


多田信忠

位階:ダンジョンマスター

生命力:90

精神力:87

攻撃力:30

防御力:28

魔効力:54

抵抗力:25

機動力:20

スキル:射撃LV1

拠点数:1

眷属数:6

ポイント:10


本当にゲームやアニメに出てくるようなステータス画面が視界に表示された。

ポイントってのもあるけど1ポイント1円ででも使えるのだろうか。

そう言えば、最初に初期設定の変更はメニューからなんても言ってたな。


「メニュー。」


・設定変更

・拠点詳細

・眷属詳細

・ポイント交換


ほうほう。

取り敢えず、順番に見ていってみようか。


「設定変更。」


移動設定:自陣待機

行動設定:みんながんばれ


それぞれ別の選択肢があったが取り敢えずこのままにしておこう。

何のための設定かよく分からないし、大概こういう初期設定は一番無難な設定になっているはずだ。


「戻って、拠点詳細。」


拠点1

拠点名:コーポ大家

階層数:2

防衛設備:自動追尾監視(3)


まさか、この建物がダンジョンになったのか。

階層数が2って、確かに二階建て賃貸物件だけどそんな数え方するのか。

そんでもって、防衛設備の自動追尾監視ってそんなものあったっけ?

括弧内の3って個数でいいんだろうか。だとすると、もしかして防犯カメラのことか。

でも、うちの防犯カメラって人感センサーは付いているけど固定型で追尾なんてできないはずだけどな。

取り急ぎ、残りのメニューも確認してしまおう。


「戻って、眷属詳細。」


1:白面

2:紋吉もんきち

3:百海ももみ

4:樋渡ひと奈美なみ

5:尾茂おも令子れいこ

6:ミミ


眷属って一族郎党、仲間みたいなことだろうか。

なんで住人の名前まであるんだろう。しかも二人だけ。

建物がダンジョンだから住人も仲間ってことなのか。

ちなみに樋渡奈美さんは201号室の看護師さん、尾茂令子さんは203号室の芸人さんだ。

そして紋吉と百海は元々は私が飼っていたモモンガの番だが、今は尾茂さんの部屋で可愛がってもらっている。

何故かというとフクロウとモモンガだと、捕食の関係になりそうだったからだ。

ちなみに紋吉がオスで百海がメスだ。

ミミってなんだろう。

あー、202号室の面近おもちか恵理えりさんの飼っているウサギが確かそんな名前だったような。

うーん、だけど一階の住人と面近恵理さんが眷属に含まれないのは何故だろう。


眷属詳細ってぐらいだからもう一段階掘り下げられるんだろう。

試しに白面をドリルダウン表示させると私のステータスと同様のものが表示された。


白面

位階:眷属

生命力:50

精神力:67

攻撃力:18

防御力:12

魔効力:44

抵抗力:28

機動力:40

スキル:隠密LV1


機動力は飛べるだけあってか私の倍もあるよ。

実際にどれぐらいの能力がどう評価されて数値化されているのかはさっぱり分からない。

ここで一覧に戻ってみると変化があった。


1:白面

2:紋吉

3:百海

4:樋渡奈美

5:尾茂令子

6:ミミ

7:クリストファー・P・ベーコン


クリスは103号室の住人で高校で英語教師をしている英国人の父と日本人の母の間に生まれたハーフだ。

部屋の方を見てみるとさっきまで点いていなかった明かりが点いている。

これはアパートの中にいることで眷属として登録されるのだろうか。

住人じゃない人がアパート内に来たらどうなるんだろう。

と、思った矢先に更なる変化があった。


『侵入者を感知しました。迎撃を開始します。』


「はい?」


脳裏にステータス画面とは別に防犯カメラ改め自動追尾監視の映像が表示されたようだ。

そこにはチラシ配布の男が捉えられている。

「郵便物以外の無断投函お断り」と張り紙しているにもかかわらず、さらに見かける度に入れないでとお願いしているにもかかわらず、どうでもいいチラシを他人の私有地に堂々と入って郵便受けに入れていく迷惑な人種だ。

中には張り紙を見て回れ右する人もいるのに、図々しい奴に至っては依頼主にも文句言うから連絡先を教えろと言っても知らぬ存ぜぬと惚けるクソ野郎までいる。一度くたばってしまえ。


ところで、迎撃って言わなかった?

え、何しちゃうんだろう。

水でもぶっかけるつもりなのかな。


『トラップを設置、発動します。』


「はい?」


次の瞬間、チラシを投函しようと郵便受けに差し出された男の手が郵便受けに引き摺り込まれた。

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