十五羽 すぽっ!っとスポット
「ふう、仕方あるまい。テリー、運んでくれ」
「お。ラッキー」
昼食ができたようなので、テリネヴにダイニングテーブルへの移動を
「かっ、カルナ……俺が……!」
「ちょっと! わたくしにも抱かせなさいよ!!」
「人間の母親って、こういう感じ?」
「さあな、知らん」
約二名を無視して、テリネヴに大人しく抱えられるカルナシオン。
『ほあー』
うさぎさんはまたも親近感を覚えた。
自身もあまり好きではない抱っこ。
爪を切られる時や、病院なんかに行くときによくされた行為。
やれやれ、とどこか仕方なく抱っこされる主の姿に、自分の姿を重ねたのだった。
「「あ」」
二人がテーブルまで来てみたはいいものの、やや椅子の高さが合わない。
渋々カルナシオンはテリネヴの膝の上に座る。
「これ僕も食事しながらできるじゃん。効率的だね」
「ハア、ハア……待て、テリー……」
「それはっ、ちょっと……、ずるいんじゃ、なくて……?」
勝手に息も絶え絶えになる約二名。
カルナシオンの普段とのギャップに
「はあ。アル──【お座り】」
「っ!?」
カルナシオンが言うと、首元を押さえながらも席へと着くアルクァイト。
その表情は言うまでもない。
「そっ、……その姿に言われるのも……、
「もーこの人ヤダー」
うへーとした表情のテリネヴに、ミララクラが問う。
「ちょっと!! わたくしの席はどこ!?」
「「「帰れ」」」
もう一度言うが、ミララクラは勝手に押し掛けてくる魔族である。
◆
「世話を掛けたな、テリー」
「全然いいよ、役得だったし。僕のやる気に繋がるから、今度からこうしようよ」
「ぐぎぎぎぎッ!」
「くくく。……にしても、少しだけ戻りましたかねぇ?」
アブソリュート・アンジェリカを何とか追い出して、食事を終えた一同。
カルナシオンの体を見ると、ほんの少しだけ背が伸びた様子。
「ふむ。面白い」
「いつでも言ってよ。僕なら大歓迎」
「ぐぎぎぎぎぎッ」
『ほあー』
うさぎさんは、主人の体がもうすぐ元に戻ると聞くと、何だか寂しく思った。
せっかく同じくらいの小さな存在になれたのに。
「? どうした、うさぎさ──」
すぽっ。
カルナシオンがうさぎさんを観察するために片膝を立て床に座っていると、うさぎさんはその鼻先を、立てていない方の足と床の間にすぽっと突っ込んだ。
「────」
「もしもーし? 生きてますかー?」
「これはこれは、予想外ですねぇ」
「ッッ」
鼻を押さえる約一名はともかく、他二名の下僕は心臓が止まっていそうなカルナシオンの前で手を振ったり、観察したりとその様子を面白そうに見守った。
『♪』
うさぎさんはちょっと喜んだ。
アルクァイトの足元も温かいが、主人の足元も温かいと知れたことを。
「──ハッ」
息の止まりかけたカルナシオンが意識を取り戻すと、その『頭隠して尻隠さず』なうさぎさんの姿を心のメモリーに刻んだのだった。
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