九羽 おっとっと、ラブリーうたっち
『ごしゅじんとおそろいでし!』
「アルはいつも私の真似をするんだよな」
「……」
一号の作った夕食が並ぶダイニングテーブル。
ドワーフが作ったもので、招く者も大していないというのに広々とした大きさだ。
人間の基準でいえばコース料理のように豪華な食卓。
皆がそれぞれ椅子に腰かけ、うさぎさんは皆の足元をウロウロと。
リボンで長い金の髪を一つに結んだカルナシオン。
それを見て自分もいそいそと一つに結んだアルクァイト。
その光景を愉快そうに見るギルクライス。
異様な食卓である。
「しょ、食事の邪魔になるからだ」
「基本負け知らずだからか、強者へのリスペクトがハンパないんですよねぇ、竜って。変な種族ですねぇ」
「貴様らも似たようなものだろう」
「少なくともあたしはちがうねぇ。強いだけじゃダァーメ。面白いヤツにしか付きませんよ。……もっとも、弱いのはお話になりませんがねぇ」
腕で×のポーズをとりながら、ギルクライスは己の
『ほあー』
うさぎさんは素直に感心した。
魔族や竜という種族は、生きる上でそのような考えを持っているのかと。
自分はといえば、一にお食事、二に睡眠。
こだわりがあるとすれば、イチゴは好きだがヘタは食べないだとか、寝る時は体の一部を壁なんかにくっつけるだとか。
彼らは自分とはまるで違う生き物なのだと感じた。
「では、いただこう」
「ええ、どぉーぞお召し上がりください、主どの。あなたの下僕一号がせっせと作らせていただきましたとも!」
「恩着せがましいことを……カルナに家事をさせるなど、言語道断だ」
アルクァイトはカルナシオンのことになると、少々おかしくなる。
「ああ、ひどい! あたしはやってもらうことを当たり前に思うような……主どのをそんな子に育てた覚えはありませんけどねぇ!」
「育ててもらった覚えはないぞ」
「うさぎちゃん! どうぞあたしの力作ご覧になって、褒めてくださいよ!」
『?』
うさぎさんからはテーブルの上は見えない。
よっ、とうさぎさんが後ろ足でうたっちを試みるも、当たり前だが見えない。
なんとなく、ピスピスと動かす鼻からは香りが漂ってくるのであるが、それがどういったものかまでは分からなかった。
「うさぎさん、抱えてやろう──かッ!?」
『おっとっと、でし』
うさぎさんは尻もちをついた。
ほあーとした表情で首を左右に動かしたのち、重さに耐えきれなくなった後ろ足はぐらついたのだ。
むにっと。もりっとしたお尻周りの毛。
見た者の目を釘付けにしそうな小さいふわふわの尻尾。
その光景にカルナシオンの思考は
『ごしゅじーーーーん!?!?』
うさぎさんを抱えてテーブルの上を見せてやろうとしたものの、カルナシオンは行き場を失った両手と両ひざを床につけ項垂れた。
──理解、できない
その愛らしさは、一体どこからやってくるのか?
理解できない尊さに、下僕にも折られたことのない両膝はうさぎさんの前ではいとも
無敗のカルナシオン。
うさぎさん相手となると、全戦全敗なのである。
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