第10話






風切りの音と、その流れ。

その中に聞こえる

音の方向に

視線を向けた。





引きずる音と共に

なにか

小さな影が近づいて来ていた。




ぽつり。

  ぽつり、

  ぽつ。

  ぽ、つ、り。




20センチか30センチか。


もっと小さいかも知れない、


大きいのかも知れない。






心臓の鼓動が跳ね上がる。

息の仕方も忘れそう。





幾つかの影が

次々と現れ。




列になり。

群れになる。



こちらに

近づいて来る。




背中の体温は

確実に下がっていた。

土の湿気ばかりではないだろう。







強い風に

流れる雲、

霧。


風の音とは別に

聞こえる

『引きるような音』




近づくに連れ

影たちが

なにか身にまとっているのが

見て取れた。


植物で荒く編んだ袋を

思い出す。




うがごとく。

舞うが如く。

近づく影たち。




引きる・・・まとう布のようなものが


足元の土に擦れ。


草を揺らし。






・・・ああ、そうだ。


真っ白になった頭の中で、

気が付いた。


雲が流れる強風の中。

影たちの布は

流されていなかった。




雲の流れの合間を縫い


風の狭間を分けながら


こちらに来る。



















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