第3話 愛しい悪役令嬢に服を!! 結婚して!!

「すまんな、君は私の為に兄をしかりつけてくれたのに。家族仲が悪くならないと良いが」

「いえ、元々兄とは仲がいい訳では無くて」

「そうなのか?」



そう言って「彼の体調が悪そうだから保健室に連れて行く! クラスの担任とこの子の担任に伝えてくれ!」とローザンヌが言うと、ローザンヌのクラスメイトと、俺がお姫様抱っこされているのを見て笑いをこらえていたロディに「分かりましたお姉様」と言われ、私は保健室のベッドまでローザンヌにお姫様抱っこされたまま連れて行かされ、ベッドに横たわらせられた。

そして、憧れの彼女と会話が出来ている訳だけど――。



「俺、この見た目ですから兄には女々しいと何時も言われていて。貴女の弟のロディから筋トレとか食事療法とか色々試して頑張ってるんですが身長も伸びず筋肉もつかず……」

「ふむ、アレが通用しない等ありえないのだがな。君、悪いが服を脱いでくれないか?」

「へ?」

「いや、全裸になれとは言っていない。上半身だけでいい」

「いえいえいえ!! 何を言ってるんですか!! 嫁入り前の女性に肌を見せるなど言語道断ですよ!?」

「私は気にしない!!」

「俺が気にします!! 公爵令嬢である貴方に上半身なんて見せて、ウッカリ誰かに見られでもしたらどう責任を取れと言うんです!! 結婚したい!!」

「急にプロポーズか!! 君は見た目に寄らず豪胆な所があるな! 気に入った!! 君が私で良いというのなら嫁に行こう!! 嫁ぎ先がないと嘆いていた両親もこれで安心だ!! これで互いの悩みは解決したな!! 服を脱げ!」

「だ、駄目ですぅぅぅ!!」

「では私が脱がそう」

「きゃああああ!!!」

「こら、女の子みたいな悲鳴を上げるな!」



こうして上の服をひん剥かれ、ローザンヌはしげしげと私の身体を見ては眉を寄せている。

ツウ……ッと身体を触られてゾクリとしたが、何て女性でありながら男性のような指の太さ!!

そして荒々しい、手入れしてないのか!?



「此処まで筋肉が無い男性の身体は初めて見るな」

「ううう……情けないですよね? 皆からも女みたいだと馬鹿にされて情けないやら不甲斐ないやら……」

「いや、これはこれで私とは違い中々そそられる。私の腹を見てみろ」

「へ?」



そう言うとローザンヌは上の服をザッと上げ、鍛え抜かれた腹筋を見せた。

凄い……シックスパックとか言う筋肉ですか!?



「凄い……カッコイイ……素敵……」

「ふむ、君はこの腹を見て気持ち悪い等言わないのだな?」

「言いませんよ。こんな立派なシックスパック……凄く魅力的です」

「君に言われると誇らしくなる。やはり私たちは相性がいいようだ」

「そ、そうでしょうか」

「しかし、私はそんなに悪役令嬢だろうか? 確かにリリー嬢には悪役だのなんだのと言われるが、彼女はヒール役がいないと輝けないのか?」

「それ、俺も思います。生理的に受け付けないというか……一人の男性に絞れない女性はやはり将来に不安があります。俺はローザンヌ様のような方の方が断然好みです。悪役でなくとも貴女に惹かれます」



そう真っ直ぐ伝えると頬を染め、「何ともこそばゆいな」と口にした後、私に向き合ってくれたローザンヌ。

しかし――。



「こう言っては何だが、実は私は転生者なんだ」

「へ?」

「本来の中身は男だ。突発的で驚くだろうが」

「いえ、実は私も転生者です。中身女性です」

「なんと……」

「しかもこの世界、小説の【リリーは何があっても諦めない!】の舞台ですよね」

「そうそう! 君も知っていたか! 俺は妹から借りて読んでいたんだが中々に悪役令嬢が痛快でな!」

「私もです!! 中々に無い悪役令嬢ですよね!!」

「すまん、思わず俺等と……」

「お互い素のままでいられると言う意味でも、私とローザンヌ様は相性が良かったんですね」

「しかも両方性別が逆と言うのもな……。俺は筋トレが前世でも好きで良くしていたら、家族からは泣かれるし大変だったがやめるに止めれなくてな……お陰でこの様な様だ」

「いえ、それはそれでアリだと。入学式に初恋をしました。私の初恋はローザンヌ様なんです。しかも二回貴女に恋してます」

「熱烈だな……実に嬉しい限りだが。是非両親に手紙を送って婚約してもいいだろうか?」

「あの……末永くよろしくお願い致します……」

「うむ、実に愛らしい……男と言えど、その可愛さは胸に来るな」



そう言って頬を撫でられ顔を赤くしていると、コンコンとノックする音が聞こえロディが入ってきた。

そしてローザンヌにひん剥かれた俺の状態に色々察した様で「お姉様……」と口にすると大きな溜息を吐いた。



「幾ら興味があると言っても、幼気で初心な少年の服をひん剥きます?」

「すまんな! だが今日手紙を出して婚約させて貰う算段をつけるつもりだ。名前をそう言えば知らなったな。少年、名は何と言う」

「あ、はい。ライカ・フランドルフです」

「ああ、悪役令嬢を必ず娶るというあの家か。ならば私は丁度いい訳だな! それとは別に君は俺に興味津々のようだが!」

「お姉様? 俺などと使わないで下さい。小さい頃から注意されているでしょう?」

「むう、しかしロディ。ライカが一人称が『私』だったらどう見える?」

「愛らしいかと」

「適材適所と言う奴だ」

「あーいえばこーいう。ライカもお姉様が婚約者で本当にいいの? ノザンと対立しない?」

「対立しても元々仲は悪いし、うちの両親も婚約は喜んで受け入れてくれると思う。ましてや伯爵家だよ? 公爵家からの婚約を破棄するなんて絶対しないよ。その前に一度家に帰ってこいとは言われるだろうけど」



その時はありのまま、全てに惚れたと伝えよう。

愚兄等しったことか!!

滅べ愚兄!!



「まぁ、お姉様が服を脱がして襲ったと言う既成事実もある訳で」

「むう!? 襲ってはいないし既成事実も作っていないが!?」

「でもこれは完全にアウトでしょう。襲われたと言ってもライカなら通りますよ?」

「むう」

「あの、流石に襲われたとは言えないよ。ローザンヌ様に傷がついてしまう。俺はそんな真似させられない」

「ライカ……君は優しいな」

「ローザンヌ様……」

「はいはい、早く服を着ちゃって。もう次の授業も始まっちゃうし」

「む、では帰るとするか。後日改めて挨拶に伺おう」

「はい、末長くよろしくお願いします」



こうして私は初恋の君で中身は男性見た目は女性に生まれてきたローザンヌと、言葉だけではあるが婚約する事が決まったのだった――。




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