第2話 庇って庇われて、悪役令嬢の大胸筋に心臓が破裂しそうになる!

しかし一歳年上とはいえ、兄ノザンに紹介など頼めるはず等無いのだ。

兄ノザンはリリーに首ったけ。

ローザンヌの事を敵視しているのは家族の食事の際でも明らかだった。

興味があったローザンヌが本来のライカの好みならば、何とかお近づきになりたいものだなと思っていると、16歳の編入試験でトップを飾り、一番頭のいい者達が集まるA組に入る事が出来た。

その際になんと――ローザンヌの弟である【ロディマス・フォルデア公爵令息】と同じクラスになる事が出来た。

私とロディマスは直ぐに意気投合し、男性の割に細マッチョなロディマスからは「君は女性の様に細いな」と言われて凹んだりもした。


そう、私は男性の割に身長が伸びず160cm。

女性とほぼ身長は変わらなかった。

その上筋トレしても筋肉が中々つかない体質の様で、兄からはよく「女々しい」とさえ言われていた。

顔だって16歳ならば男らしくなる筈なのに、モブであったライカの顔は知らないが、そこらの女子よりも可愛い顔をしていたのだ。



「ロディ……そんな事を言われると俺悲しいよ。一応俺も男なんだしさ……」

「ああ、ごめん……。でも何でそこまで筋肉が付かないんだろうね? 俺の教えている筋トレも試してるでしょ?」

「試してるよ。毎日頑張ってやってるし素振りだって毎日している。でも筋肉が付かないんだ……。ロディだって俺が筋トレしてる姿は見てるだろう?」

「まぁ、同じ部屋だしね」



そうなのである。

ロディと私は同じ部屋なのだ。

この学園では必ず二人一組で部屋が割り振られるのだが、クラス替え等ランクが上がったり下がったりすると部屋の割り振りが変わる。

つまり、同レベルの子と同じ同室になるのだ。



「うーん……何で筋肉が付かないんだろう。食事だって気を付けて食べてるけど、ライカって他の男子に比べて食が細い訳でもないよね?」

「少し細いくらいだけど、しっかり食べてるよ」

「一度お姉様に相談したほうがいいのかなぁ……」



その言葉に顔を上げると、ロディはクスリと笑い「君は顔に出やすいなぁ」と笑った。



「この学校でお姉様を慕っている男性は、おそらく君くらいだよ」

「慕っているだなんて……憧れてるだけだよ」

「でも、君の兄は俺の姉を悪女と呼ぶ不敬罪で罪でもかぶせてやりたい程の馬鹿だけどね」

「そこは申し訳ない……うちの愚兄が……」

「週に一度は家に帰ってるんでしょ? お兄さんから何か言われない?」

「家族全員兄には呆れてるよ……知ってるだろ? うちの評判」

「悪役令嬢を必ず娶るフランドルフ家」

「そう」

「なら、俺の姉を娶らない?」

「まずはお知り合いになりたいよ……」



一歳差では中々クラスが違うし会う事も少ない。

見かけては頬を染めるくらいしか今の私には出来ないのだ。



「目下の悩みは」

「ノザンだよねぇ……」

「クソ兄貴、滅べばいい」

「あはははは!!」



今日も激しくローザンヌに文句を言っていたと噂で聞いている。

その弟である私と仲良く等、してはくれないだろう。

おのれ愚兄め……リリーに振られて地獄に落ちろ!!

そんな事を思いつつ、学生生活を送っていたある日の事だった――。

その日はたまたま三年のクラスの近くを通る機会があったのだが……。



「ローザンヌ!! またしてもリリーを泣かせたな!! 君は一体何が楽しくてリリーをイジメるんだ!!」

「一体何のことだ! 私はリリー嬢とは今日は顔もあわせていないが! まずクラスが違うからな!! どこでどう会ってイジメると言うのだ! 出来ればわかりやすく教えて欲しい!!」

「声がデケェ!! この筋肉ダルマ女!!」



そうローザンヌに罵声を浴びせた兄にツカツカと駆け寄り、持っていた辞書で兄の顔面を殴った。

それは正に本能だった。



「一人の女性に対して何です見っとも無い!! 兄上、俺は貴方に失望しました!! 家族の気持ちが良く分かる!!」

「ラ……ライカ……貴様ぁ!!!」



そう叫んで殴りかかってきた図体はデカい、ノザンクソ兄貴。

私は身体を縮めて振りかかる痛みに耐えようとしたその時――男性のような腕にグイッと抱かれ、ふにっとした柔らかい弾力に目を見開き、バシン!! と言う音とともに顔を上げると――。



「ローザンヌ!! 弟を放せ!!」

「断る!! 私を守ろうとした気概のある良き男ではないか!! 君、怪我はないか!?」

「は……はぃ……」



気が付けば憧れであるローザンヌの腕の中に居て、柔らかいふにっとした感触は大胸筋……じゃなくておっぱいの筈で、心臓がどきどきして顔が真っ赤になった。

その上、片腕で愚兄の腕を掴んでいる。ツヨイ!!!



「君とは話にならん! 私は彼を送って行こう。そもそも不敬を働いたのはそっちであろう、ノザン・フランドルフ!!」

「くっ!」

「君のとても愛らしい弟に免じて今回は許してやろう。だが次はないぞ」



そう言ってお姫様抱っこされるとそのまま歩き出すローザンヌ様……素敵すぎる。

私はこの時代に来て二回目の恋を同じ人にしたのであった――。



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