第18話 再テスト1日目
それから、俺とヒメカはどれだけ勉強したのだろうか?
学校の行き帰りでは、ヒメカと問題を出し合い、授業が終われば、二人で一緒に図書館に行き、そこで太陽が見えなくなるまで勉強をした。
正直、前回以上に勉強をしてきた自負がある。
まあ、なんでこんなに頑張っているのかはよく分からなかった。
が、不思議と楽しかった。
そのおかげなのか、せいなのか分からないが、前回以上にあっという間に時間が過ぎ、テストの当日になった。
……ピンポーン……
前回と全く同じように朝7時にインターホンが鳴った。
俺はその音を聞いてから、玄関に向かい、足早にローファーを履いた。
その時、お母さんから声をかけられた。
「今日からテストなんでしょ。あんだけヒメカちゃんと頑張ってたんだから、大丈夫よ」
あれ、前回と違うような気がするな。
まあ、前回の出戻りから二週間近く経っているから、正確には覚えてないけど。
「ありがとう。じゃあ、行ってくる」
俺はそう答えて、玄関のドアを開けて、外に出た。
そこには、笑顔の幼馴染がいた。
俺はそのヒメカを見て、今回は大丈夫に違いないと思った。
☆☆☆
「いっぱい勉強したね。正直、受験の時以上にした気がするよ」
ヒメカが学校に向かってる途中でそう言った。
「確かに。でも、ちょっと、問題な先生もいるからこんくらいしないと」
「生物の田貫先生だっけ? 見た目は優しそうだけど、テストは厳しいんだよね?」
「そう。先輩がそう言ってたから、きっと間違いない」
今回は前回で学んだ生物の予習を重点的に勉強をしていたのだが、ヒメカには『俺は未来から来たから分かるんだ』と言えるわけもなく、先輩から聞いたということにしていた。
分かってる。
こんなコミュ障の俺に仲いい先輩なんかいるはずもないことは!
まあ、ヒメカがその事について、深く質問してこないから助かってるけど……。
「でも、生物もそうだけど、まず今日だね」
「ああ。けど、あんだけ頑張ったんだ。多分、大丈夫だ」
俺は願うようにヒメカにそう答えた。
なぜかって?
それは過去を変えた事で出題される問題が変わってしまい、回答が書けなくなってしまうのはまずいからだ……。
☆☆☆
朝のホームルームが終わり、急いでトイレに向かい、準備をしっかり整える。
これで俺側の問題はない。
席に座り、じっとチャイムが鳴るのを待つ。
……キーンコーンカーンコーン……
チャイムがなった。心臓が速くなる感覚があった。
なぜなら、ここで入ってくる先生が違っていたら、きっと問題も違っているからだ。
頼む。同じ先生が来てくれ!
そう願った瞬間引き戸、開く。
……ガラガラ………
あ……同じ先生だ!
これは来てる。来てるぞ!
俺はこの瞬間、勝利を確信した。
テストがまだ始まっていないのに、机の下で小さくガッツポーズをした。
そこからはいつものテスト通り、前から来たテスト用紙を一枚とり、後ろに回す。
「……じゃあ、全員に回ったな。では、テストを開始する。くれぐれもカンニングするなよー」
前回とほぼ同じ掛け声を先生が言い、テストがスタートした。
俺は勢いよく、テスト用紙を表にした。
あ……れ……。
問題が前回と少し違うな。
…………でも、全然、余裕だ。
もしかして、前回より簡単になってる?
いや、違う。
多分だけど、俺の学力が上がったからだな。
その証拠に前回以上に答えを書くスピードが速くなっている。
全部の回答を書き終えても、時間は全然余っていた。
まあ、俺だけ2週間×2だし、一回似たような問題を解いたから、当然と言えば、当然か。
その後の数学Ⅰもコミュニケーション英語も多少なりとも問題が変わっていたのにも関わらず、前回の1.5倍のスピードで回答を埋める事ができた。
数学Ⅰに関しては前回、鬼門の一つと思ってたし、実際にいくつか分からない問題があったが、今回は分からない問題はほぼなかった。
でも、この出戻り生活で油断大敵というのはしっかり学ばされていたから、ちゃんと余った時間は余裕の居眠りはせずに、終わりのチャイムがなるまで何度も見直しした。
だから、当然、赤点を取ってるはずもない……はず。
前回も少し問題が解けることに楽しさを感じていたが、今回はそんな比ではない。
楽しいを超えて、もはや、気持ちよさまで感じていた。
そして、それは俺だけではなかったようだ。
「まだ初日だけだけど、ハジメと勉強したおかげか、ほぼ全部の問題解けたよ」
帰り道、ヒメカは少し興奮気味でそう言った。
その気持ちはよくわかる。
でも、感謝するのはこっちだよな。
だって、今回、ヒメカに教えたことは前回、ヒメカに教えてもらったことが中心だから。
「ハジメ、何で笑ってるの?」
ヒメカがそう質問してきた。
やべ、そんなこと考えていたら、つい笑みが漏れてしまっていたようだ。
「いや、こちらこそだなと」
「え? 私、何もしてないけど」
ヒメカは不思議そうに俺の方を見ていた。
とりあえず、一日目は大丈夫そうだ!
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