魔法学園の勇者と剣姫が、平凡な剣士の俺を取り合っている件
路紬
第1話
「ねえ、アオイは私の仲間になってくれる?」
今から少し前のこと。
まだ僕と彼女が十歳という幼い頃だ。
燃えるような赤髪をポニーテールで結んだ僕の幼馴染は、目に涙を浮かべながらそう聞いてくる。
その問いに昔の僕はこう答えた。
「うん……! 必ず立派な剣士になって僕は君のところに行くよっ! 君が作る勇者パーティーに!」
「ありがと……アオイ。じゃあ待ってるね。アオイが世界一の大剣豪になって、私の勇者パーティーに入ってくることを」
僕と彼女はこの日約束を交わした。
【勇者】の
僕は田舎町で一人剣の稽古に励むこととなる。
いずれ勇者パーティーに名を連ねる世界一の大剣豪になるべく。
そして、その別れから六年後。
俺は王都にある【魔法学園】にて、彼女と再会を果たすのだ。
***
「……はあ。世界一の大剣豪になるって言って、現実はこれか」
俺は学園から支給された生徒手帳を見てため息をこぼす。
魔法学園。オウカ王国屈指の名門校であり、魔法や騎士になるための教育機関としては王国のトップに君臨している。
その門は狭く、受験倍率はとてつもない。
俺ことアオイは高等部からこの学園に入学してきた。独学で、厳しい試練を乗り越えてやっとのことで入学したこの学園。
情報が正しければこの学園には彼女が……。
「やっ! しばらく見ないうちに随分と逞しくなったねアオイっ!」
ポンと軽く肩を叩かれる。
振り向くとそこには燃えるような赤髪をポニーテールで結んだ美少女がいた。身長も百七十くらい、身体の凹凸がこれでもかと分かりやすい女子生徒だ。
「え、あ……も、もしかして……」
「ふふん。久しぶりの再会に開いた口が閉じないって様子だね。それとも私に見惚れちゃったかな?」
「あ、アカネなのか!? こんなに綺麗になってるなんて……! 見違えたじゃないか!」
村にいた時の面影はありつつも、立派な美少女に成長したアカネがそこにはいた。
「えへへへ……! そ、そうかな! そう言われるとすごく嬉しいよ! そういうアオイは昔とあんまり変わってなくて安心したな〜〜!」
「ま、まあそうか……。昔と変わってない……そう見られても仕方ないか」
「ん? どーしたの? そんな暗い表情をして。ははーん、もしかして久しぶりの再会に感動しちゃったとか?」
アカネは俺の顔を覗き込みながらニヤけ顔でそう口にする。
アカネに悪気があるわけじゃないだろう。しかし、アカネは大きく変わった。出会っていない六年間で。
「そんなことあるはずないだろう。思い上がるなっ!」
「む〜〜少し生意気になって! 私は勇者だぞ〜〜! もっと敬え!」
「うるさいっ! あ、顔をいじるな!」
アカネにデコピンをすると、アカネは頬を膨らませながらお返しと言わんばかりに俺の顔を腕で抱えて弄ってきた。
うぉ……何気におっぱいでかっ! すごく成長した……って何馬鹿なことを考えてるんだ俺はっ!
「やめろっ! 昔みたいに引っ付くなっ!」
「うひひひ〜〜。昔みたいに引っ付かれてドキドキしたとか? ね? もしかしてときめいちゃった?」
スキンシップが激しいところは昔から変わってない。アカネは意地悪く微笑む。
身長が伸びて顔や体つきも変わったというのに、こういったところは昔のままだ。
ほんの少しだけ安心感を覚えたが口にするのはやめておこう。うるさそうだし。
「調子に乗るな。そんなことあるはずないだろう。ん、ん! それよりも聞いたぞ。勇者パーティーの活躍」
「そうなんだよっ! ここに来てからすごーく頼りになる仲間も出来てさ! 課外活動の一環とはいえ、冒険者業してたらいつの間にかSランクになってたよっ!」
アカネは六年前、勇者という天職を発現させた。王都に行ったアカネが勇者として活躍し出したのは二年前。
【勇者】、【大魔導士】、【神獣使い】、この三人で作られた勇者パーティーは瞬く間にその知名度を広げていく。
その活躍は王都から遠く離れた俺達の故郷に轟くほどで、王国内に彼女のことを知らぬ人間はいないだろう。
俺とは全然違う。本当に遠い存在になったのだと実感する。
「ねぇ……約束覚えてる?」
アカネは微笑みとわずかな不安を表情に滲ませて俺へそう聞いてきた。
約束……それは六年前、アカネと別れる前に交わしたあの約束だろう。
「勇者パーティー……誘いにきたよっ! 世界一の……」
「あー!! こんなところほっつき歩いとったのかお主! 妾との約束ほっぽり出して何をやっとんのじゃ!!」
アカネの言葉を遮るように、中庭に大声が響き渡る。
聞き慣れた声に俺はギギギと首を動かして振り向く。
そこには誰もが目を惹くような特徴的な外見を持つ女子生徒がいた。
長く伸びた紫紺の髪、澄んだ青色の瞳、一部を除けば少女体型と呼ばれるくらい身長は低く、容姿は幼く見える。
しかし……とある三点の外見的特徴が、彼女を只者じゃないとアピールしている。
一つ目は鋭く尖った耳。
二つ目は額から生えた二本の角。それは魔物のような角であり、彼女が鬼種という特殊な種族に属していることがわかる。
三つ目は歩くたびに揺れるバカでかいおっぱい!! 以上!!!
「入学式終わったら妾のところに来る話じゃろ。……ん? 何故お主が勇者と一緒におるんじゃ……?」
「な……ななな、なんでクオン先輩とアオイが知り合いなの!?」
アカネは声を震わせながらそう聞いてくる。それもそのはず。なにせ彼女はこの魔法学園における最強の存在。
彼女の名前はクオン。この学園の生徒会長にして、鬼種の姫。そして、俺の剣の師匠だ。
「そうかそうか、そういうことか! 勇者よ、実は妾達、付き合っておるんじゃ」
クオンは何かを察したのか、アカネに見せつけるように俺の腕へと引っ付く。その表情は少しいやらしい。
アカネよりも大きい胸が、僕の腕に当たる。……ぐっ! 収まれ!! 収まるんだ! 我が本能!!
「は……はあああああああ!?!?!?」
アカネは目を丸くした後、驚きの声を上げる。
……あ、やばいとんでもない爆弾落としたこの人、いやこの鬼!
☆★☆★☆
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