第23話:大丈夫、みんな無事だよ。

ベリアルは宙に浮いたものの、出る場所がなくてやむなく倉庫の屋根を

ぶち破って外に舞い上がった。

屋根の上を旋回するとベリアルは此先家の方向に向かって飛んだ。


未知太郎はハッチを開けて外を見た・・・それに吊られてシャーベットも

顔をのぞかせた。

戦い終わって陽はとっぷりと暮れて空に満面の星が輝いていた。


「わ〜すげ〜・・・シャーベット・・・めっちゃ星がキレいだよ」


さすがにハッチから三人が顔を出すゆとりはなかったからジェラートは

ベリアルのコックピット内に座ったまま上の二人を見ていた。


「飛行機でもないし、なんだろ?この感じ・・・」

「このスピード感はジェットコースターみたいかな・・・町の明かりが

こんなに近くに見えるよ・・・」


未知太郎はコックピットから顔を出したままそう言った。


誰でもだろうが思考戦車に乗れる人なんてごく一部の人たちだけで、

ある意味二人には貴重な体験だったかもしれない。


爽やかな夜風を受けて重い思考戦車は三人を乗せて夜の闇に消えていった。


家で未知太郎の無事を待っていたお父さんは、外で異様な物音を聞いて、

驚いてなにごとかと家から飛び出してきた。


「何事・・・また誰かが攻めて来たのか?」


すると見たこともないようなクモみたいな機械が家の前に止まっていた。

此先家の庭に降り立ったベリアルのハッチを開けて未知太郎が手を振りながら

出てきた。


「お父さん・・・ただいま」


「未知太郎か・・・無事だったか?」


すると次々とベリアルのコクピットからシャーベットとジェラートが出てきた。


「シャーベットも無事だったか?」


ふたりを見てお父さんは安堵した。


「はい、みんな無事だよ・・・もう大丈夫」

「ミッチーを助けて帰ってきました〜」


「ふたりを誘拐した男にはお灸を据えておいたから」

「今度また、やったら組織ごと消すぞって言ったら、もう二度とやらないって

逃げて行ったよ・・・弱っちいの」


シャーベットはそう言った。


「そうなんだ?・・・よかった・・・ほんとにふたりとも無事でよかった」


「お父さん・・・私が来てからみんなにご迷惑ばかりかけてごめんなさい」


「なに言ってるの・・・そんなこと気にしなくていいから」

「それより、シャーベットの後ろ・・・誰かひとり増えてない?」


そう言ってお父さんはジェラートを指差した。


「彼とは向こうで出会ったの・・・」

「紹介するね・・・私の弟のジェラートだよ、お父さん」


「弟だって?」


「ジェラートです、よろしく」


「あ、そうなの?・・・シャーベットに弟さんが出来たのか、驚いた」

「なるほどシャーベットも美人だけどジェラートさんも超イケメンさん

じゃないか」


「そう言うことなのでお父さん・・・またひとり居候が増えるんだけど・・・」


そう言って未知太郎はシャーベットをフォローした。


「気にしなくていいよ、家族が増えていいじゃないか、これから四人で

仲良くやって行けばいいさ」


とぅ〜び〜こんて乳。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る